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10月30日、中国発のコスメブランド「完美日記(PERFECT DIARY)」を運営する「逸仙電商(YATSEN)」が米国証券取引委員会(SEC)に目論見書を提出し、米国上場に向けた手続きを開始した。引受証券会社はゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、「中金公司(CICC)」。
主力ブランドである完美日記のブレイクに支えられて、逸仙電商の業績は急速な伸びを見せている。目論見書によると、2019年のGMV(流通取引総額)が前年比363.7%増の35億元(約550億円)に達したほか、今年第1~3四半期の売上高は38億元(約600億円)で、前年同期比70%増加した。
2019年の純収入は30億3100万元(約480億円)で、前年比377%の大幅な増加となった。今年第1~3四半期の純収入は、前年同期比73%増の32億7200万元(約510億円)だった。大幅な増収に加え、化粧品ビジネスは粗利率が高く、2018年から今に至るまで逸仙電商の粗利率は63%台をキープしている。また目論見書では「高瓴創投(GL Ventures)」が5ラウンドにわたって完美日記に出資し、筆頭株主となっていることが示されている。
各ブランドの急成長期はいつまでも続くわけではない。逸仙電商は好業績をキープするためオフライン販路の拡大や大量出店を進めながらも、完美日記に続く次なるブランドの育成を思案している。2020年初めにはマルチブランド戦略を始動させ、コスメブランド「小奥汀(Little Ondine)」の買収や、新たなスキンケアブランド「完子心選(ABBY’S CHOICE)」の立ち上げを行った。
現在、逸仙電商の三大ブランドは依然として急成長期にあり、この勢いを維持するためには赤字もいとわないという姿勢が色濃く表れるようになっている。
逸仙電商の2019年の調整後純利益(非GAAPベース)は1億5000万元(約23億5000万円)だった。ところがコロナショックに加え、新ブランドのプロモーション強化、製品開発や大規模出店のに巨額を投じたため、2020年第1~3四半期には調整後の純損失が5億元(約78億円)にまで膨らんだ。
マーケティングおよびコマーシャル費用が純収入に占める割合を見てみると、2019年には前年の48.7%から41.3%へと減少していたのが、2020年第3四半期までには再び増加傾向となり、62.2%に達している。
ブランド育成は長期戦の構えが必要だ。しかも逸仙電商は依然として組織を強化拡大している段階にあるため、投資額は今後もしばらくは増加傾向をたどると予想される。現在も自社ブランド育成と買収によりマルチブランド戦略を推し進めているところで、10月30日には欧州の有名デルモコスメティック企業「ピエール ファーブル」から高級コスメブランド「Galénic」の株式を買い取ることで同意している。
積極的にブランド買収を進めていることから分かるとおり、逸仙電商は完美日記が作り上げてきた「国産プチプラコスメ」というイメージの払拭を試みており、ミドル・ハイエンドクラスの消費者に訴えるようブランドのプレミア感を増し加えようとしている。この戦略が果たして効果的かどうか、しばらく経過を見守る必要があるだろう。
ブランドチームが拡大を続け、市場競争も激しさを増す中、効果的にコストを抑えることが避けられない問題となっている。上場目前の逸仙電商は市場や投資家にどんな答えを提出するのだろうか。
(翻訳・畠中裕子)
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