中国の巨大壁面塗装市場に立ち向かう 安全性・作業効率・コスト削減を実現する壁面加工ロボット

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中国の年間新築面積は世界全体の半分を占めており、2018年から2030年にかけて、中国の都市部の年間平均新築住宅需要は10億8000万~13億4000万平方メートルに上る。2020年、中国の家庭における住宅改修関連支出の総額は2兆5000億元(約39兆4000億円)を超えると見込まれているが、このうち壁面加工が約5%~8%を占めており、1250億~2000億元(約1兆9700億~3兆1500億円)規模の巨大な市場となっている。なお、これには工業、商業、物流業の工場建設における壁面加工は含まれていない。

先進国に目を向けると、壁面加工市場では従来通り人手による作業が大部分を占めている。しかしこうした作業は、効率低下・労働力不足・高コストのジレンマに直面しているだけでなく、危険な環境で作業する作業員にも潜在的な危険が存在している。たとえばイギリスでは壁面塗装の市場規模は年間40億ポンド(約5540億円)を上回っているが、その労働効率は1970年と比べ向上するどころか、かえって0.5%低下している。世界市場では人間の作業に取って代わることのできる実用的で信頼性が高い全自動壁面加工製品への切実なニーズが生じているのだ。

現在、世界の建設ロボットは基本的に研究開発・立ち上げ段階にあり、大規模な商品化には至っておらず、ましてや壁面加工用ロボットは非常に珍しい。しかし、建設分野の人件費は絶えず上昇し、安全性や粉塵公害などの問題は差し迫った危険性として常に建設企業の頭を悩ませており、建設市場ではインテリジェントな建設や機械化に対する需要が日に日に高まっている。市場では、標準化・高精度化され、建設現場の過酷な環境に適応できるインテリジェントな建設ロボットを切実に必要としている。

2019年に設立された「深圳大方智能科技(Shenzhen Dafang Intelligent Technology)」(以下「大方智能」)が先頃発売したインテリジェント壁面加工ロボット「DF061」は、モバイルネットワークをベースとした建設協力モデルであり、0~9mの壁面加工作業の80%〜95%の機械化が可能だ。

大方智能のハードウェアは過去半年の更新を経て大きな進歩を遂げた。半年前、マシンの使用部品は全てスチールとアルミニウムで、1台の重量は360kgだったが、現在は部品の25%にチタン合金とカーボンファイバーが使用され、重量も180kgと「スリム化」に成功した。このロボットには「5Gインターネット+ AIoM(AI on Module)ロボット」技術が搭載され、ロボットハードウェア機器にはクラウドソフトウェアサービスを搭載しており、ユーザーがモバイルアプリからパラメータ入力、プロジェクト管理、プロセスモニタリングなどの統合制御を行えるようになっている。

この製品は、操作モジュールと速度制御を調整するためのレーザーセンサーコントローラ12個を含む29個のセンサーを介して機械認識機能を構築し、10個の光電センサーコントローラによりロボットの操作プロセスにおける動作の精度を確保している。また4個の圧力センサーコントローラーが自由な直立伸縮を、2個の視覚フィードバックコントローラーが塗料の合理的で適度な使用を、さらに1個のジャイロバランスセンサーがロボットの歩行の安定性を保証している。同時に、ロボットは25個のモーターで構成される多次元モーションシステムも備え、6個のサーボモーターにより0.1mmの運動精度を実現し、6個のステッパーモーターと減速機で構成される4次元ロボットアームが可動範囲270度という建設要件を満たし、8個のバランスモーターは建設高度が3メートルを超える場合のバランスとサポートを確保している。

実際の作業現場では地面に多くの物が積まれており、一般的に現場では事前に障害物を取り除く。施工ルートに何かが積まれているのを発見した場合、DF061はリアルタイムでアラームを鳴らし、オペレーターにそれらを移動させるよう通知する。現時点では、DF061を施工に使用する前に、測量士が施工現場を撮影して製図し、ソフトで施工現場のCAD図を作成する。もし排水管、煙検知器、配電盤、ドア・窓など回避すべきものがあれば、自動的に識別後、施工シミュレーション動画を作成してオペレータに伝え施工ルートのチェックを行う。DF061には3D画像ナビゲーションが搭載されており、住宅のCAD画像をもとに独自特許の壁面加工アルゴリズムにより施工ルートが生成された後、DF061がクラウドからダウンロードして実行することで自律的なナビゲーションが実現される。実行プロセスでは、レーザーセンサーとマイクロ波センサーによるリアルタイム調整にもとづく障害物回避が行われ、今後はSLAM(自己位置推定および環境地図作成)パノラマ施工ナビゲーションが徐々に実現されていくだろう。

インテリジェント壁面加工ロボット「DF061」の画像

大方智能のインテリジェントロボットによる作業は、従来の人手による作業に比べ大幅なコスト削減を実現した。たとえば深圳での壁面加工の場合、塗装工の日頭は400~500元(約6300~7900円)前後で、約5000平方メートルの壁面の塗装を行うには10人の塗装工が15日間かけて作業を行う必要があった(3メートル以上の壁面を加工する際に必要となる足場の設置や材料ロスなどのコストは含まず)。だが国際的な雑誌の掲載論文によると、壁面加工ロボットを使用した場合、施工効率は少なくとも60%向上し、マテリアルロスをある程度削減できるという。

DF061による直近半年の施工実例データを見ると、同様の施工効果を得る場合、壁面加工にロボットを使用すると全体の効率は人が行う場合に比べて3~4倍向上し、人件費は50%~70%、資材コストは15%軽減している。DF061を使用して5000平方メートルの壁面の研磨と塗装を行う場合、1台で2日間作業を行えば完了し、施工の効率と安全性を向上させることができた。

大方智能のコア研究開発チームによる研究開発の焦点は1.0から3.0への改善とアップグレードを経てきた。1.0時代はチーム内のハードウェア設計の技術人材と東莞地区の製造業をめぐる優位性を頼りとしてロボットの性能マッチングと基本的な組立を実現し、2.0時代には市場において適切で成熟したサプライヤーとマッチングすることにより、サプライチェーンにおけるハードウェアの最適化構成を完成させた。現在は創業者およびコア研究開発チームによる製品のブラッシュアップが継続的に行われ、ソフトウェアシステムのアルゴリズム最適化については実際の運用の中で検証とデバッグが行われている。

実用と普及について、大方智能は以下のように述べている。インテリジェント壁面加工ロボットDF061は、「深圳会展中心(Shenzhen Convention & Exhibition Center)」の地下駐車場での研磨・塗装を始めとする珠江デルタ地域の数多くの施工現場で実際に使用されている。加えて空港の格納庫や酒の醸造所などからも注文意向を受けており、将来的には6メートル以上の工場内外壁の施工市場に焦点を当てていく。市場の住宅用室内吹付塗装のニーズに対応して、3~4メートルの壁面を加工するためのインテリジェントロボット「DF041」の開発も進める。今後も珠江デルタ地域を中心とするパートナーにサービスを提供し、上海周辺の長江デルタのパートナーを増やし、北京を中心とする京津冀(北京、天津、河北省)のパートナーを対象に、測量製図技術者や機械オペレーターの研修を行う。現在、DF061は作業プロセスにおいて研究開発スタッフが現地サポートを行い、施工における問題を即時発見してアルゴリズムのデバッグおよび最適化を行っており、ロボットは日々改善されている。提携顧客との検証では、ソフトウェアシステムのアルゴリズム最適化とモデルデバッグにより、吹きつけの不均一、地面の凸凹による動きのずれ、ノズルおよびリフティングロッドの遅延の問題などが解消された。

創業者の鄧煜氏は、ソフト/ハードウェア開発の経験が豊富で、マーケティング手法に精通した連続起業家だ。計画されているビジネスモデルでは、地域の代理店を募集し、機器のリースやプロジェクトの請負およびレベニューシェアにより収益性の成長を図っていく。また中国の製造業の優位性を活かし、今後3~5年の間に多機能・多用途の新型ロボットを発表し、建築物改修における作業を人からロボットへシフトさせていくという。

建築物改修の分野では、壁面加工が最も大きな割合を占める作業である。中国では年間約100億平方メートルが施工待ちであるほか、完成しすでに使用されている建築物でも内外壁面の塗り替えが必要となっており、中国全土で毎年、5000万人以上に上る建築業界の労働力のうち、かなりの部分が壁面加工の作業に従事している。現在、建築物の壁面加工分野に切り込んでいるロボット企業には、「博智林機器人(Bright Dreams Robotics)」やシンガポールの「Transforma Robotics」などがあるが、製品の大規模な普及には至っていない。また、中国国内の大手不動産デベロッパーの中には、自社のニーズに基づき壁面吹付塗装ロボットの開発に巨額の資金を投じている企業もあるが、試作品は自社物件の作業環境および作業要件にしか対応していないため、製品として市場化することはできていない。

建設現場は制御不能な要素が溢れており、粉塵の多さや湿度の高さといった複雑で過酷な環境を特徴としている。将来的には、インテリジェント建設ロボットによりこれらの困難の解決が期待されているものの、建設業界における大規模な応用までにはまだ長い道のりがある。市場の強いアップグレードニーズと人工知能やクラウドコンピューティング・ビッグデータといった業界の技術的ブレイクスルーを前に自走式ロボット製品の技術は絶えず更新され、建設業界におけるデジタル化とインテリジェント化のレベルアップにとっての良い契機となるだろう。

(翻訳:浅田雅美)

 

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