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中国の人工知能(AI)技術を手掛けるユニコーン企業「第四範式(4Paradigm)」が、シリーズDで7億ドル(約730億円)を調達した。リード・インベスターは「博裕資本(Boyu Capital)」、「プリマベーラ・キャピタル(春華資本)」、「厚朴投資(HOPU Investments)」だ。ほかには、政府系ファンドの「国家製造業転型基金」、「国家開発投資集団」、「中国国新控股」や、中国建設銀行傘下の「中国建投(China Jianyin Investment)」、「中信建投(China Securities)」、「海通証券(Haitong Securities)」、セコイア・キャピタル・チャイナ、「中信産業基金(CITIC Private Equity Funds)」、ゴールドマン・サックスなどが出資した。
7億ドル(約730億円)は、2020年以降AI分野での資金調達として最高額。調達した資金はAIサービスのエコシステムの構築、AI人材の育成などに充てられる。
AIを導入しやすくした第四範式
第四範式の創業者戴文淵氏の前職はバイドゥ(百度)のマーケティングシステム開発者だ。彼の在職期間中に、バイドゥはAIで広告ルールを改善し、検索広告の収益を2013年までの4年間で8倍も増やした。戴氏はその過程でAIの力を実感し、AIを広告以外にも広めようと2014年に第四範式を起業した。
バイドゥがAIを導入するために立ち上げたチームは200〜300人ものエンジニアを抱えており、これだけのコストを負担できる企業はほとんどない。そのため、戴氏はAIによって実現したい技術をパッケージ化して顧客に提供することを思いついた。
その考え方のもとで開発されたのが、2017年に発表された「先知3.0」だ。このパッケージにはデータ収集、アルゴリズム、解決策の提案の3種類のAIが入っている。とある銀行がカードの不正利用対策にこのAIを導入したところ、従来の7倍以上の正確性で不正利用を発見することができた。その後同銀行のほかの業務にもAIが導入され、業務のスマート化が一気に進んだ。この成功例により、第四範式は複数の銀行顧客を獲得し、国有銀行傘下のファンドからの資金調達を行った。同社は中国のスタートアップのなかで、唯一中国の大手5行のすべてから資金調達を行うことに成功している。
そうした経歴から、金融は第四範式が最も重要視する分野となっており、当該分野の売上高は全体の5割弱を占めている。このほか、ニューリテールと製造業の顧客も増えている。
Windowsのように使いやすいAIを
第四範式は2020年8月20日に、これまでで最大規模の製品アップデートを行い、新しい製品を複数発表した。なかでも注目されているのが、企業向けAIの「Sage AIOS」である。第四範式はこの商品を「AI時代のWindows」と位置づけており、Windowsのようにデスクトップから必要なAI機能を起動できるようにした。
Sage AIOSがWindowsのタスクマネージャー機能と同様の機能を導入したことも重要だ。「HyperScheduler」と呼ばれるこの機能は、AIを動かす際のリソースのスケジューリングという難題を解決するためのものだ。これまではAIがどれだけの計算力を使っているのかを確認することが難しく、計算力の無駄が生じたり過負荷状態になることがあった。HyperSchedulerを使えば、AIにかかるリソースのスケジューリングを自動で行うことができる。
Sage AIOSを代表とする新製品群は、小売、外食のような通常業務が煩雑な企業に特に人気だ。たとえば、「百勝中国(Yum China)」は中国でケンタッキーフライドチキン、ピザ・ハットなど複数のフランチャイズを手掛ける大手外食チェーンだが、傘下ブランドが多い分、それぞれのデータルールや基盤システムが異なり、AIの導入が困難を極めた。そこで、第四範式の使いやすいAIを導入し、予想以上の効果を得られたという。
現在、第四範式は金融業を中心に、小売、エネルギー、メディア、物流、農業、ハイテクなどの顧客も順調に増やしている。(翻訳・小六)
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