TikTok本国版、ECプラットフォーム「抖音電商」を開設 自社倉庫網の敷設も

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短編動画アプリTikTokの中国本国版「抖音(Douyin)」は、傘下に抱えるEC事業「抖音電商(Douyin Dianshang)」において国内各地に物流倉庫の敷設を進めていることがわかった。広東省、雲南省、浙江省、河南省などに品質管理と物流機能を一体化させた運営センターを設け、ジュエリー、アルコール、健康関連など品質鑑定が必要な商品カテゴリーに関して発送業務を一括する。さらに越境EC専用として、主に東南アジアや英国からの商品を集中的に保管する倉庫も設けているという。

抖音のEC事業に詳しい人物によると、抖音が独自の倉庫で集中管理を必要とする商品は服飾品、食品などを含む20カテゴリー以上に及んでいる。抖音では物流倉庫以外にサプライチェーンの急構築も進めているようだ。

サプライチェーンを統括する部署は杭州市にあり、商品部門の責任者は劉向亜氏。EC世界大手のアマゾンで10年近いキャリアを積み、国際物流(輸入)、在庫管理などを担当した人物だ。エンジニアリング部門ではアリババ傘下の物流企業「菜鳥網絡(Cainiao Network)」出身の人物で、アルゴリズム技術部門の責任者は現在募集中だという。

基幹倉庫はECプラットフォームの物流プロセスの核心をなす部分であり、一般的には省都などの一級都市に置かれる。主な役割は管轄エリアのすべての貨物を倉庫に集め、商品カテゴリーに応じて仕分け、発送を行うことだ。

抖音のEC事業は倉庫の敷設をはじめたばかりで、すべてが順調に進んでいるというわけではない。

貴金属を取り扱うある出店業者によると、受注した商品は広東省にある抖音の倉庫へ送り、鑑定を受けた後、抖音が顧客へ発送をする段取りとなっており、従来通りに宅配業者を使う場合より納品が3〜4日遅れるという。

国内EC大手の京東(JD.com)やアリババが傘下に抱える物流会社とは異なり、抖音は独自の物流システムを持っているわけではない。抖音の倉庫を利用した経験のある出店業者からは、「非合理的」との声が飛ぶ。わざわざ遠隔地の倉庫へ商品を発送し、鑑定を受けるプロセスには相応の費用が発生し、これらはすべて出店業者側で負担する。出荷が数日遅れればキャンセルが発生することもあり、キャンセルになれば商品は再び遠隔地の倉庫から返送されてくることになるという。

服飾関連の出店業者によると、抖音のライブコマースを利用した場合の月間販売数は、アリババ系のECプラットフォーム「天猫(Tmall)」に出品した場合と比べて桁が一つ少ない。また、同じくアリババ系のライブコマースプラットフォーム「タオバオライブ(淘宝直播)」で販売した場合と比べ、ライブ1回あたりの販売数は半分ほどに留まる。抖音のライブコマースで売れているのは、トップクラスの人気ライバーを起用した商品がほとんどだという。

しかし、京東もアリババも、自社で物流を構築しはじめた当時は倉庫が足りず、運送量が少なすぎるなどの問題から出店業者の利用に漕ぎ着けるのに苦労している。しかし、京東の創業者リチャード・リウ(劉強東) 氏は自社で物流システムを抱える必要性について、ユーザーエクスペリエンスを考慮するだけでなく、物流事業そのものが商機であると述べていた。

ユーザーエクスペリエンスを向上させるだけの目的なら、まだ設立初期段階にある抖音は自社倉庫を持つ必要はない。しかし、現在のEC業界は配送体制の優劣を争ってこれまでにないほど激しく火花を散らしているのもまた事実だ。抖音がEC事業を立ち上げた当時、中国のEC業界にはすでに20年の歴史があり、配送スピードもユーザーエクスペリエンスを左右する重要な要素となっていた。

京東は2007年に自社で物流体制の構築を開始し、2012年に正式に物流企業として登記させた。大規模かつ自動化されたスマート物流センターを設け、現在ではフルフィルメント(受注から配送完了まで)すべてを手がけるようになっている。

アリババは2013年に「三通一達」と呼ばれた複数の主要物流会社と手を組み、傘下に菜鳥網絡を設立させた。北京市、天津市、広州市、武漢市など10数都市に倉庫を設け、現在までに物流事業に1000億元(約1兆6700億円)以上を投資している。

新興ECの「拼多多(Pinduoduo)」はインドネシアの宅配最大手「J&T Express(極兔快逓)」と提携することで、アリババ系物流会社の縛りから開放され、意のままに物流業務を運営できるようになった。

抖音のECプラットフォームは安定して一定規模の取引額を維持し、便利で成熟した物流やサービス体制という前提があって初めて出店業者を惹きつけられるだろうが、完全に自律できるECプラットフォームを確立するにはまだ時間がかかるだろう。
(翻訳・愛玉)

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