アント・グループ独自開発、分散型データベース「OceanBase」がバージョンアップ

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アリババ系フィンテック企業「アント・グループ(螞蟻集団)」が独自開発する分散型データベースの新バージョン(OceanBase3.0)が6月1日のイベントで発表された。同イベントでは技術・ビジネス・エコシステムという3つの観点からOceanBaseの将来的な成長戦略が初めて明らかにされた。

同イベントでOceanBaseの楊冰CEOは、OceanBaseはオープンソースという路線を堅持すると話した。7月からは新しい価格体系を実行し、パブリッククラウドバージョンではストレージとコンピューティングを分離したより手頃な価格のバージョンをリリースするという。

データベース、オペレーションシステム、ミドルウェアはソフトウエアの三大要件とされる。企業のITシステムにとっても不可欠なものであり、インターネット利用や企業の情報管理システムにおいてデータの保存や管理の中核となるプラットフォームでもある。

イベント後のインタビューで楊CEOは、現在企業向けサービス市場はクラウドネイティブがトレンドとなっていると話した。SaaSなど上層のアプリケーションの種類が豊富になるにつれ、その基盤となる開発エコシステムが重要となり、より統一された基準で上層のエコシステムを支えることが必要だという。

中国移動(チャイナモバイル)傘下の「山東移動」はOceanBaseを初めて利用した通信事業者だ。利用の検討からサービス開始までわずか2カ月だったという。山東移動の情報技術部副総経理を務める李世衝氏は、国産化という大きな流れのなかでデータベースの選択にも悩まされたと話す。多くの類似製品を検討した結果、OceanBaseは基本的な性能、拡張性がより優れていると判断。技術のマッチングもスムーズであると話した。

通信事業はデータベースアプリケーションが全体的に複雑で、スムーズなマッチングが難しいという。その点においてOceanBaseは通信事業者のニーズに応えることが可能だ。今後は「福建移動」や「浙江移動」などを含む通信事業者と最適な提携関係を継続すると楊CEOは話した。

今回リリースしたOceanBase3.0バージョンは、事務処理とデータ分析という2種類の高い性能を備えている。今回のアップグレードでHTAP(ハイブリッドトランザクション/分析処理)対応可能な企業レベルの分散型データベースとなった。従来と比較し、事務処理能力は50%向上、データ分析能力は10倍向上したという。

米調査会社「ガートナー(Gartner)」はHTAPが今後データベースで重要なトレンドになり、統合されたデータプラットフォームがデジタル化を加速すると見ている。各分野で深化するデジタル化のプロセスの中で、コアシステムの分散型改良は非常に重要な意味を持つ。過去1年間のケースを見ても、自主開発した分散型技術が成熟するにつれ、OceanBaseの信頼性、拡張性における強みがより明らかになってきている。

市場で見られるオープンソースのデータベースと比べた場合、OceanBaseは設計時から分散型を念頭に置いており、設計理念には大きな差がある。そのほか、分散型の実用化ではOceanBaseはアリババのモバイル決済サービス「アリペイ(支付宝)」など大規模な金融アプリに利用されており、これは業界でも参考とされるべきだろう。

OceanBaseはアリペイのほか、年間最大のオンライン通販セールイベント「ダブルイレブン(双11)」などアリババの超大型事業で利用されてきたが、2017年からは南京銀行など他企業にも業務の提供を始めた。

「オープンソースというかたちをとることで我々の失敗や優れた理念をシェアし、他社の参考となればよいと考えている」と楊CEOは明かす。「規模と技術の強みがある今、我々は低価格と導入のしやすさにより、顧客がコアシステムを分散型に改良することをサポートする。コアシステムの改良で企業はシステム全体を完全に自主管理できるだけでなく、最終的には取引ごとのコスト低減という目的を実現できる」

OceanBaseは現在、中国工商銀行(ICBC)、山東移動、福建移動、 中国石油化工(シノペック)、生命保険大手「人保健康(PICC)」、「浙商証券(Zheshang Securities)」、天津銀行(Bank of Tianjin)など多くの企業で利用されている。

(翻訳・山口幸子)

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