中国で急拡大のインターネット病院、自ら学習する「AI医師」も誕生

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医療AIシステムの研究開発を手がける「左手医生(Zuoshouyisheng)」がシリーズBで1億元(約17億円)を調達した。「啓明創投(Qiming Venture Partners)」が出資を主導し、「海爾資本(Haier Capital)」なども参加した。

オンライン診療を提供する「インターネット病院」が中国でこの2年の間に急速に成長している。2018年末には100軒ほどだったが、2021年6月には1600軒以上に増加した。新型コロナウイルスの蔓延以降、中国政府の後押しによりスマート医療やインターネット病院は急速に普及しており、それを支えるAIは価値を高めている。

左手医生開発の「AI医師」がチャットで患者に問診する様子

左手医生のコア製品はAI医師プラットフォームだ。ディープラーニング、ビッグデータ処理、自然言語処理、対話理解など最新のAI技術と医学を組み合わせて「主体的医療AI」を構築し、良質な医療リソースの提供を拡大させている。

左手医生はSaaS(サービス・アズ・ア・ソフトウェア)方式で顧客へサービスを提供しており、顧客企業の数は500社を超える。サービスの具体例は以下だ。

■ 大手医療機関との連携
医療機関によるオンライン診療サービスの構築と運営サポートを展開。政府の後押しを受け、スマートホスピタルやインターネット病院は需要が急増している。特に予約や問診などの機能は必須だ。

■ 大手製薬会社との連携
製薬会社による患者への長期フォローと管理業務をサポート。リアルタイムなフィードバックデータと医学的サポートを提供し、それらを製品ネットワークと合わせて医薬品の販路拡大を行う。

■ 大手IT企業との連携
オンライン診療サービスを展開し、患者のオンライン問診のコンバージョン率と利用率、さらにユーザー体験を向上させ、増収につなげるサポートをしている。良質な医療資源は限られる現状だが、優秀な医師の力をAIで「増強」する必要がある。

■ 保険会社、ヘルスケア会社、ドラッグストアチェーンとの連携
保険契約者、スタッフ、会員などにサービスを提供。長期にわたる健康管理や慢性疾患管理を行い、ユーザーの福利体系の構築をサポートしている。

同社のAI医師プラットフォームは35の診療科、6000種類以上の疾患をカバー。医師の臨床現場をアシストするロボット「診室聴譯機器人」やオンライン診察、スマート医薬品管理、AIインターネット病院などさまざまなソリューションがオンライン診療の現場に投入されている。

中でも、アシストロボットは診察室が騒がしくても医師と患者の会話のみを抽出し、医学用語を識別する機能により双方の会話を理解し、正確な電子カルテを生成する。診療補助の際は、データが分散した状態で機械学習を進める「連合学習方法」を通じてデータの安全性を確保しつつ、ロボットが医師の診療経験を自ら学習できるようになっている。

左手医生の「診室聴譯機器人」

基盤技術の面では、左手医生はAIを「受動的」から「主体的」に変えた。主体的AIなら膨大な訓練データの意味付けをする必要がなくなり、実際の医師と患者のコミュニケーション内容からのデジタル化、構造化が可能となる。これにより、AIの効率的な学習が実現した。

現在、同社が手がける分野は技術的なハードルが高いために中国国内にライバル製品は少ない。チャットボットの観点からは米「Babylon Health」や独「Ada Health」などをベンチマークとしている。違いは、海外製品はナレッジグラフと消費者向け(2C)をメインにしたサービスを展開しているが、左手医生は消費者、法人双方に向けたサービスを実現できたところだ。

(翻訳・Qiunai)

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