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ここ数年の人工知能(AI)技術の急速な発展とともに、情報セキュリティに対するニーズが高まっている。中国シンクタンク「新思界産業研究センター」は、次世代の生体認証技術とされる「指静脈認証技術」は幅広い利用者層と活用場面が期待できる上、安全性・正確性・利便性に優れていると報告している。
「微盾科技(WEDONETECH)」は2013年、市場のニーズに着目して静脈認証技術の研究を開始。光学技術とアルゴリズムの研究を徹底することで静脈認証技術に汎用性を持たせることに成功した。マーケティングディレクターの謝林君氏によると、同社は手の指だけでなく手のひらの静脈認証にも力を入れており、主に公共の場での本人確認やスマート決済への活用を進めているという。
静脈認証技術の優位性を生かすために
静脈認証技術とは、光学技術を利用して静脈のパターンを撮影し、専用のアルゴリズムで固有値を求め、事前に登録した静脈のパターンと照合することで個人を識別する技術だ。静脈認証には、指紋や顔による認証よりも優れた点がいくつかある。
まず、静脈認証は正常な血流がなければ識別ができないため、偽造するのが難しい。
また、静脈は皮膚の下にあるため、その特徴が漏洩したり盗まれたりするリスクが小さい。指紋や顔、虹彩などによる認証のように、外的条件に左右されることも少ない。例えば指紋認証では、怪我や乾燥のほか指紋が浅い場合などで識別が困難になる。
さらに、静脈認証は顔認証と違い、利用者の主体性が尊重されるという特徴がある。利用者自身が自発的に手を伸ばす必要がある静脈認証は、利用者の意思が尊重され、プライバシーも保護されるため、公共の場での身分証明に適している。現在は玄関用スマートキーや金庫、医薬品保管庫などに利用されているが、今後は地下鉄の利用や金融機関での決済などにも広く活用される見通しだ。
しかし、中国ではこれまで静脈認証が広く普及してこなかった。謝氏はその理由を三つ挙げた。一つ目は、従来の製品では満足のいく使用感が得られなかったこと。二つ目は、指の静脈を撮影する必要があるためにモジュールが大きくなってしまうこと。三つ目は、その他の認証技術よりも費用が高額になることだという。
微盾科技は、上記の課題の解決に向けてユーザーの使用感をテストするシステムを構築した。指の傷や濡れだけでなく異物の衝突も想定し、全ての利用者層と活用場面に対応できるよう努め、静脈認証の利便性を向上させた。
また、設計の最適化も図り、モジュールの大きさを圧縮した。スマートキーに用いられる一体型モジュールは、最も薄い部分が厚さ16ミリとなっている。
価格面については、産業チェーンの最適化が功を奏し、ここ数年で徐々にコストが下がっている。微盾科技もアルゴリズムの最適化でコスト削減を図っている。謝氏は「一定の販売量を達成すればそれまでのコストをカバーできる。ニーズが増えればコストは大幅に低減する」と述べている。
微盾科技の強み
謝氏は、微盾科技のコアコンピタンスを四つ挙げた。
一つ目は、アルゴリズムと基盤技術の互換性の高さ。同社は引き続き研究・開発分野へのリソース投入を進めており、特別な利用者層や場面を対象としたテストを増やし、対応するソリューションを充実させている。
二つ目は、光学調整など技術面を含む使用感テストシステムの完備。
三つ目は、保有する特許の多さ。同社は静脈認証に関連する特許90件以上を保有している。この中には特許協力条約(PCT)に基づく国際特許のほか、発明特許や実用新案が含まれる。
四つ目は、広い分野にわたるパートナーシップ。提携先には家電大手の「格力電器(GREE)」、AI企業の「佳都科技(PCITECH)」、IT大手の「中国電科(CETC)」などが名を連ねる。また、スマートホームやスマート決済、軌道交通、社会保険、セキュリティーなどのほか、司法や軍事関連など多くの分野に技術を提供している。
微盾科技の静脈認証技術は、個人向けと法人向けに大別できる。謝氏はそれぞれの特徴について、玄関用スマートキーなど個人向けに活用する場合は使用感を重視し、金融や軍事関係を中心とする法人向けに活用する場合は安全性を重視していると説明した。
同社の技術は、利用者の限られる大学キャンパスやフィットネスクラブなどでも活用されているほか、一部公共交通機関の改札機に利用され始めている。
(翻訳・田村広子)
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