デジタル染色で変わる中国のアパレル、小ロット生産可能でコストにも強み

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アパレル業界におけるサプライチェーンのデジタル化を手がける「優布(YOUBU)」が、エンジェルラウンドで1000万元(約1億8000万円)規模の資金調達を行った。出資を主導したのは紅点中国(Redpoint China Ventures)。調達した資金はITシステムの開発、サプライチェーンの拡張、デジタルクラフトセンターの建設に充てられる。

アパレル業界のサプライチェーンは従来、紡績・織布、染色、縫製、販売と主に4段階に分けられる。優布はそのうち染色段階を切り口に事業を展開する。分散型クラウドを用いたスマート工場を通じ、デジタル染色技術で生機(きばた。加工前の布)を染める。

デジタル染色では、まず生地の図案をデジタルデータに転換してコンピューターに入力し、四色分解プリントシステムで編集処理を施す。その後、ピエゾ(圧電)式インクジェットヘッドをコンピューターで制御しながら専用インクを生地に直接塗布するため、製版(プリント型を作成する)の必要がなく、転写工程の80%でプリント型洗浄水が不要になる。

従来の染色法とは異なり、デジタル染色は無制限に新商品を生産でき、フレキシブル(多品種・小ロット)生産が可能で、コスト面でも強みがある。優布は「これまでの染色方法では納期や製版などに制約があり、大量かつ長期的に生産する注文にしか対応できず、最近高まっている『小ロット・短納期』の需要には応えられなかった。デジタル染色は完璧にこれらの問題を解決できる」と説明する。

デジタル染色で制作された製品

中国印染行業協会(CDPA)のデータによると、中国のデジタル染色市場は今後3年は年平均48%のペースで成長し、2025年には1200億元(約2兆1500億円)規模に達すると予想されている。プリント生地全体に占めるデジタル染色の割合は2011年の0.9%から2020年の12%にまで拡大しており、今後も大幅に伸びると考えられる。

従来の染色方法は環境を汚染し、エネルギーを消費し、在庫負担も大きく、追加注文への対応が遅いなどの欠点があったが、デジタル染色はこれを刷新できる。特にコロナ禍による越境EC業界の盛り上がり、中国政府によるエネルギー消費の削減政策「双控(ダブルコントロール)」の推進により、染色業界が「より経済的でより環境にやさしく、より高効率」に変化することが必須となった。優布設立のきっかけもここにある。

優布によると、「越境ECの増加にもデジタル染色を用いれば高頻度に新商品をリリースでき、短納期で生産できるため在庫も減らせる」というが、一方で「二つの欠点もある。一つはサプライチェーンの川下企業はデジタル開発力が弱いこと、もう一つは染色工場が納品の確実性を保証できないことだ」という。優布が考案したソリューションでは、川上でデジタルクラフトセンターを設立して図案のデザインや開発を行い、川下のクラウド工場に引き継いで納期内に生産・納品を終えられる。デジタルクラフトセンターが担うのは、顧客のアイディアをもとに素材を収集し、オリジナルの図案を完成させることだ。

同社はオリジナル図案や既存のパターンを再構成した図案を1日100パターン作成でき、2つの直営工場を含む15のクラウド工場で生産を行い、月90万メートルの生地を生産できる。

公表されたデータによると、越境EC業界ではデジタル染色の受注比率が50%に達しており、格安ファッション通販「SHEIN」は昨年、6000万メートルのデジタル染色生地を使用した。優布の顧客も同業界に集中しており、優布は新興ファストファッションブランド「Cider」の主要サプライヤーとなっている。2022年までには5つの開発センター、100以上のクラウド工場と連携し、1日500万メートル生産を目標とする。クラウド工場の3分の1を同社直営にする予定だという。
(翻訳・愛玉)

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