エレベーターの保守管理にIoTを活用した「新再霊科技」、サービス開始半年で1万台に導入

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エレベーターの保守管理にIoTを活用した「新再霊科技」、サービス開始半年で1万台に導入

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IoT技術を活用したエレベーターの保守管理サービスはさほど目新しいものではないが、2014年にエレベーター業界に参入した中国企業「新再霊科技(Xin Zailing Technology)」が躍進している。同社はIoTを利用したエレベーターの安全管理システム「雲梯(Yunti)」をローンチしてわずか半年で、すでに1万台以上のエレベーターに導入されている。

新再霊科技CEOの胡灝氏は、これまでに100社の競合企業を調査・分析。多くの企業が抱える「3つの誤解」を導き出した。

1)エレベーターだけを管理すればよいという誤解
エレベーターは人が使うものであり、設置環境もその運行状況に大きく影響する。これらは有用なデータ取得源だ。しかし、多くの企業はエレベーターそのものの管理に集中している。

2)サービスの対象はメーカーや保守会社だという誤解
エレベーターの保守管理システムは、エレベーター製造元や保守管理会社などのために存在しているのではない。運行管理の責任を負う物件管理会社やエレベーターの利用者に安全と快適さを提供するのが本来の目的だ。

3)IoTは単純なネットワーク化だという誤解
通信ネットワークを通じてエレベーターの運行データを随時システムに通知するだけでは問題は解決しない。エレベーターにおけるIoTとは、「AIとビッグデータをかけ合わせたシステム」だと胡CEOは考える。つまり、データの取得に終始するのではなく、データの処理と分析を行って初めて価値を持つということだ。

新再霊科技の製品アーキテクチャ

では、新再霊科技はどのようにしてこれらの誤解をクリアしたのか?

エレベーター内のセンサーやカメラから物理的データや画像データを取得して解析し、事故時の救援措置や早期警報システム、利用管理、保守管理などに活用するのだが、同社では以下のように行っている。

1)データ取得
3種類のデータを取得している。運行速度やドアの開閉、振動の有無など、エレベーターの動作に関するデータと、利用者の行動など使用状況に関するデータ、天候や交通状況など周辺環境に関するデータだ。

2)データ処理
データの吸収、クレンジング、蓄積、検索、モデリングを含んだ処理をしている。ドアの状態や積載量、運行状態などについて、ニューラルネットワークを通じて総合的に解析し、閉じ込め事故などを正確に検出するシステムを構築する。

3)データの応用
危険を事前に排除する早期警報システムなどにも応用している。リアルタイムで異常を検知し、自動制御を行い、早期に警報を作動することで、事故の際の救援作業を迅速化。非常用ボタンの鳴動を待たず、自動的に救援措置が作動するシステムを構築する。そのために、不具合の原因が故障によるものなのか、あるいは利用者の不適切な行動(喫煙、ドアをふさぐなど)によるものかなどを識別し、物件管理者と共有する。

実際のシステム画像より

新再霊科技は1億3000万元(約21億円)を投じて、2015年から3年かけて安全管理システムを開発、製品化した。2018年4月に「雲梯」をローンチ。するとわずか半年の内に、同社の本拠地である杭州市内の620カ所の集合住宅で採用された。1万台以上のエレベーターに搭載された計算になる。今後は北京、上海、広州、深圳、武漢、南京など十数都市へサービスエリアを拡大し、2019年内に15万台への導入を目指す。

資金調達の状況については、2015年9月にシリーズAで5000万元、2017年3月にシリーズBで8000万元、2018年7月にシリーズCで3000万ドルを調達した。2019年6月までにシリーズDで5億元の調達を目指している。

従業員は現在約500名。創業者でCEOの胡灝氏は、10年以上の外資系企業勤務を経て連続起業家へ転身した人物だ。もともと一般的な通信企業だった新再霊科技を、IoTに特化した企業に生まれ変わらせた立役者でもある。その他、主要メンバーには、システム設計、画像処理など各分野のエキスパートが揃っている。
(翻訳・愛玉)

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