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米ショートセラーのマディ・ウォーターズ・リサーチは16日、70ページ以上にわたる英語の報告書を発表し、不動産仲介プラットフォームを運営する中国企業「貝殻找房(KE Holdings)」に粉飾決算の疑いがあると指摘した。
報告書は、貝殻找房が組織ぐるみで不正行為を行い、新築住宅の総取引額(GTV)を約126%水増ししたとしている。また、貝殻找房が投資家に報告した同社の取引件数、店舗数、代理店数と、マディ・ウォーターズが過去数カ月間にわたって同社のプラットフォームで調べた取引データとの間には大きなギャップがあると指摘した。
貝殻找房はこれらをただちに否定し、明けて17日付で公式声明を発表。マディ・ウォーターズの指摘内容を「事実誤認である」とし、「中国の住宅取引業界に関する基本的知識が欠けている」と反論した。
マディ・ウォーターズは上場企業のスキャンダルで株価が下落することを狙って空売りを仕掛けていたのかもしれないが、報告書の発表同日、貝殻找房の株価の終値は1.98%の下落にとどまり、18.31ドル(約2080円)で引けた。
なぜなら、マディ・ウォーターズの調査内容の一部には疑問点も存在するからだ。これについて36Krはマディ・ウォーターズ創業者のカーソン・ブロック氏に取材を試みたが、17日時点で返答はなかった。
マクロ系ヘッジファンドの投資ディレクターを務める袁玉瑋氏は、マディ・ウォーターズによるファンダメンタル(企業の財務状況に関する基礎情報)分析は信頼しづらいと指摘する。分析の正当性よりもインターネットでの拡散力に頼ることでボラティリティ(株価の変動性)を高め、市場を操作している疑いが強いと述べた。同氏自身も貝殻找房の株式を空売りしているが、これは最近の不動産業界全体の状態をみての判断であり、マディ・ウォーターズが指摘する内容とは無関係だとした。
最大の敵はウォール街の空売り投資家にあらず
客観的に見れば、マディ・ウォーターズから仕掛けられた大規模な空売りは、現在の貝殻找房にとって最大の敵ではない。今年に入り同社の株価は下落を続けており、その主因となっているのが以下の三つだ。
一つ目は、中国で教育業界やインターネット業界に対する規制が強まったことを受け、業績先行きへの不安から中国概念株(国内に主な収入源があり、海外で上場している中国企業が発行する株式)に売りが集中していることだ。
二つ目は米国の株式市場のムードが変わり、グロース株(成長株)からバリュー株(割安株)へ関心が移っていることだ。昨年、投資家に驚異的なリターンをもたらした新興EVメーカー「蔚来汽車(NIO)」やWeb会議サービス「Zoom」、写真共有サービスPinterestなどスター級のグロース株は、今年に入りいずれも大幅に下げている。
不動産仲介業界も同様だ。米不動産仲介「Redfin」は昨年、株価を200%以上上げたが今年は40%以上下げた。米不動産データベース「Zillow」も昨年は180%上げ、今年は50%以上下げている。貝殻找房は昨年8月に上場してから同年末にかけて70%以上上げたが、今年に入り70%以上下げた。昨年11月中旬に79.4ドル(約9026円)のピークに達してからは下落の一途をたどっている。
三つ目は、中国の不動産市場が流動性引き締めにより冷え込んだことだ。貝殻找房の業績も直接的な影響を被っている。2021年第3四半期の決算報告によると、同社の手数料収入は前年同期の79億元(約1400億円)から32.91%減少して53億元(約950億円)に落ち込んだ。同社はその理由を竣工済み住宅のGTVが下がったためとしている。2021年第3四半期、オフライン経由の竣工済み住宅のGTVは1853億元(約3兆3000億円)で、前年同期から1004億元(約1兆8000億円)減った。
自社の経営状態もプレッシャーだが、貝殻找房は多くのライバルとも対峙している。中国の大手インターネット企業のアリババ、バイトダンス(字節跳動)、京東集団(JD.com)はいずれも独自のオンライン不動産取引プラットフォームを持ち、新築・中古住宅の仲介市場に参入している。いっぽうの貝殻找房は徐々に事業規模を縮小しており、北京・上海・深圳など多くの都市で閉店や人員削減を進めている。
マディ・ウォーターズの今回の報告書に対し、市場では同社が期待するほどの反響は得られなかった。これは調査内容や裏取りの一部に疑問点が存在するからだ。貝殻找房は報告書に関する最初の見解として、内容が根拠に乏しく、多くの事実誤認やエビデンスのない記述、誤解を招く憶測や解釈があったとしている。さらに、マディ・ウォーターズが中国の住宅取引市場に対する基本的な理解を欠いているとした。
市場調査機関Sandalwoodのリサーチャーによると、マディ・ウォーターズが貝殻找房の新築住宅のGTVを126%の水増しと評価したのは、彼らが情報収集に用いたAPI(Application Programming Interface)が適切でなかった可能性が濃厚だとした。同じく中古住宅のGTVを33%の水増しと評価したのも、取引記録が公開されている都市のデータのみを集計し、これをもとに他の都市の取引件数を推計したため、誤った数字になった可能性があるという。
マディ・ウォーターズは以前にも中国のコーヒーチェーン「luckin coffee(瑞幸咖啡)」の粉飾決算を明らかにして空売りに成功した。しかし、luckin coffeeや貝殻找房と同じく海外で上場する中国の学習塾大手「新東方教育(New Oriental Education )」や、スポーツ用品メーカー「安踏体育(ANTA Sports Products)」の空売りには失敗している。
(翻訳・愛玉)
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