微弱光環境でも高速運動撮影可能。中国新興、AI用いたフルカラーの暗視カメラを開発

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AIを使った最新の暗視撮影技術を開発する「深知未来(DEEPTHINK.AI)」が、シリーズAで数千万元(数億円)を調達した。出資を主導したのは「達晨創投(FORTUNE CAPITAL)」で、調達した資金は主に市場開拓や新製品の開発に充てられる。

深知未来は2017年に設立され、コンピュータービジョン、深層畳み込みニューラルネットワーク、自動機械学習、ニューラルアーキテクチャー検索などの技術をベースに、光線が微弱な環境や複雑な環境向け、高速運動撮影向けにAIを用いたISP(画像信号処理)モジュールを開発。原状に極力近い画像を高品質かつフルカラーで再現する。同社の製品はドローンや自動運転、セキュリティ、炭坑のスマート化などに活用されている。

微弱光環境下での画像生成を例に取ると、夜間は昼間に比べ最低輝度が0.001ルクスにまで下がる。昼間の屋外が10万ルクスとすると8ケタも下がるのだ。夜間に取得できる視覚情報は極めて少なく、画像撮影はかなり難しくなる。しかし、深知未来の共同創業者でCEOの張斉寧氏によると、AIを用いる方法ならば、現在の暗視技術でも唯一フルカラーを実現できる。リアルタイムでフルカラーの画像を生成でき、高解像度、強光に耐性がある、低コストで済むなどの特徴を備える。

肉眼が捉えられる可視光線の波長域は380nm~790nmで、スペクトル(波長成分)全体の10億分の1しかない。これまでの暗視技術は肉眼では捉えられない赤外線を用いて画像を生成するものだが、AIは可視光線を直接インプットすることで色彩を再現する。

深知未来の製品は主に2種類。一つは産業用ドローンなどに搭載される暗視カメラの内部装置、もう一つはポータブルカメラ、雲台つきバレット型暗視カメラ、一眼/二眼レンズのドーム型暗視カメラなどの完成品だ。

技術面でみると、深知未来の強みはISPのアーキテクチャを刷新した点だ。ISPは画像処理アルゴリズムの集合体として、RAWデータ(生データ)の検知から画像データへの変換までを担っており、データの補正やノイズ処理などを行う。これまでのISPは直列化機構で処理されており、大きな誤差が生じやすい。最初のモデリング段階が十分に正確でなければ、後のプロセスで誤差はどんどん大きくなり、画像は劣化してしまう。

深知未来のAI ISP技術はニューロモルフィック(ヒトの脳を模した)処理で画像生成するアプローチで、ISPのアルゴリズム構造を再構成する。深層畳み込みニューラルネットワークをベースに、1億以上のパラメーターを含むモデルを構築して堅牢性や適応力を高め、複雑な光線やジッター(画像の乱れ)、フレームレート(コマ数)などの課題を解決する。

業界を取り巻く状況としては、中国ではハイクビジョン(海康威視)やダーファ・テクノロジー(大華技術)、海外ではソニーや米オムニビジョン・テクノロジーズなどが暗視カメラ分野で長期にわたり技術を積み上げてきている。中でもソニー製CMOSイメージセンサーは、2021年第1四半期の販売数が3億5000万個を超え、市場シェアは24.7%を占める。

暗視技術は幅広く導入されており、夜間の住宅街や油田、海上石油プラットフォーム、港湾、トンネル、水利施設、鉄道など企業向けだけでも14のシナリオに大別される。これまで大部分がサーモグラフィを採用してきた分野であり、深知未来がAI ISP技術に置換していくには大きなチャンスだ。

張CEOによると、2022年に大規模展開を予定しているのはセキュリティ業界だ。将来的には車載機器や医療、コンシューマー製品などへの応用も想定している。政府系シンクタンク前瞻産業研究院(Qianzhan Industry Research Institute)のデータによると、2025年までに中国の車載カメラ市場は230億元(約4100億円)規模を超えるとみられている。中国内外で自動運転の実用化が進めば、市場が1000億元(約1兆8000億円)台に乗ることも期待される。

深知未来の創業メンバーはIT大手のテンセントやバイドゥ(百度)、通信機器大手のシャオミ(Xiaomi)やファーウェイ、民生用ドローン大手のDJIなどから集まったアルゴリズムの専門家やプロダクト専門家。張斉寧CEOは武漢大学でコンピューターサイエンス学科を卒業し、ファーウェイやテンセントで技術や製品のエキスパートとして活躍した。張CEOと同じく共同創業者でCTOの郭奇鋒氏は、テンセントやバイドゥで検索システムのアーキテクトとしてキャリアを積んできた。
(翻訳・愛玉)

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