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資金を調達する方法は様々あるが、動画配信サイト「愛奇芸(iQIYI)」は株式市場と借入に頼っている。2018年初めにIPOで資金を調達したが、さらに転換社債を3回発行して7億5000万ドル(約830億円)を調達すると発表した。四半期の売上高に近い金額だ。
これは、親会社である「百度(バイドゥ)」への依存を軽減するためだ。第3四半期の財務報告によれば、買入債務が約104億元(約1674億円)、売上債権は約31億6000万元(約508億円)となっている。同社の広告収入を過去平均の24億元(約386億円)と見積もり、売上債権と転換社債の合計(編注:約1338億円)に加えれば(編注:約1724億円)、買入債務をいくらか上回る計算ではある。
とはいえ、動画配信は高コストであり、市場を独占もしていない愛奇芸がこのような資金繰りでやっていけるのだろうか。
1. 愛奇芸の新規会員数は伸び悩み
動画配信業界では、コンテンツのコストが高騰。中国の三大動画配信サイト「優酷(Youku)」、「騰訊視頻(Tencent Video)」、愛奇芸が、優良コンテンツの著作権を奪い合う消耗戦を繰り広げている。スタートダッシュで後れを取った愛奇芸は、挽回すべく巨額を投入してコンテンツの充実を図っているが、狙い通りには新規会員獲得が伸びず、支出だけが膨らんでいる状況だ。
2. 映画配信事業は資金力勝負
愛奇芸が投入できる資金は多くない。現在のペースだと、3月の上場で調達した22億5000万ドル(約2490億円)も来年にはなくなるだろう。他方、損失は膨らむばかりだ。資金を借り入れて急場をしのぐことはできても、「Netflix」のように社債発行のループから抜け出せなくなる恐れがある。
そこで愛奇芸は収益率を上げるために、ゲームや短編動画などコンテンツの幅を拡げて、より多くのユーザーを取り込もうとしている。しかし、そのためのコストが生じる。同社は7月にゲーム「花千骨」のデベロッパー「天象互娯(Skymoons)」を20億元(約320億円)で買収したが、すぐに売り上げが増えなければ負担がさらに増すだけである。
競合相手との戦いも激しさを増している。各社のオリジナルドラマが混戦状態にあるなか、親会社の巨大な資金力をバックに持つテンセント系の騰訊視頻とアリババ系の優酷に対して、愛奇芸が社債発行に頼って戦いを続けるのは難しい。
オリジナルドラマが好調な騰訊視頻は、第3四半期の会員数を愛奇芸の8070万を上回る8200万とした。優酷は巨額を投じて手にしたワールドカップの放映で多くの新規ユーザーと広告主を獲得。第3四半期に月間アクティブユーザー数を一気に伸ばした。
3. 愛奇芸は間に合うか
苦境にある愛奇芸だが、限られた資金で活路を模索中。ECサイトの「京東(JD.COM)」やスポーツメディア「新英体育(Super Sports Media)」など外部との提携を積極的に進めている。低コストでコンテンツを獲得してユーザーを増やしているのだ。また、低コストでヒットしたドラマ「延禧攻略(Story of Yanxi Palace)」により広告収入が急増、同社初の試みである縦動画のドラマ「生活対我下手了」も高い評価を得た。
愛奇芸のこの戦略は功を奏し、夏休みシーズンには優酷と騰訊視頻に競り勝った。「延禧攻略」の再生回数は最高記録を更新し、グーグルのテレビ番組検索ランキングで年間トップとなった。また作品数やレビューサイトでの評価、トピックスなどのランキングでは愛奇芸が抜きん出ている。
優酷、騰訊視頻との三つ巴の戦いの行方は、「ネット界のディズニー」を目指す愛奇芸がいつビジネスモデルを確立して収益を上げるかにかかっている。愛奇芸が負のループから抜け出し、優酷と騰訊視頻の猛追に持ちこたえられるかが、同社の運命を決める。
(翻訳・畠中裕子)
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