スペースX目指す中国新興企業、液体燃料ロケットの回収・再利用技術に挑む

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ロケット開発スタートアップの「江蘇深藍航天(Jiangsu Deep Blue Aerospace Technology)」(以下、深藍航天)がこのほど、シリーズAで約2億元(約36億円)を調達したと明らかにした。出資には「真成投資(Zhencheng Capital)」のほか「徳同資本(DT Capital Partners)」などが参加した。

深藍航天は昨年10月、高度約100メートルへのロケット打ち上げ・回収実験に成功している。創業者の霍亮氏によると、今回調達した資金は液体燃料ロケット「星雲1」の開発、ロケットの回収・再利用技術の検証と打ち上げ準備のほか、優秀な人材の確保に充てる方針だという。

同社は、液体燃料を用いた再使用型ロケットの開発に加え、商業打ち上げも手掛ける。本社は江蘇省南通市で、北京市と陝西省西安市にそれぞれロケット技術と液体燃料エンジンの研究開発センターを設けている。また、陝西省銅川市にはエンジンシステムの試験センターがある。

再使用型ロケットに関しては、イーロン・マスク氏率いる米スペースXが昨年12月19日、「ファルコン」シリーズの100回目の回収に成功している。同社は今年1月6日、「ファルコン9」の打ち上げに成功し、スターリンク衛星49基を地球低軌道に乗せた。同月13日にもファルコン9の打ち上げが行われ、17カ国29団体(企業や政府など)の小型衛星105基が高度550キロの太陽同期軌道に投入された。

スペースXの再使用型ロケット技術は、その巨大な商業的価値を証明している。霍氏は、液体燃料を使用した回収型ロケットは、固体燃料ロケットよりも打ち上げコストを大幅に低減できる上、輸送能力も大きく高められると指摘した。

中国には現時点で、打ち上げに完全成功した再使用型ロケットはない。しかし、深藍航天は昨年の7月と10月に実施した実証実験で、それぞれ高度約1メートルと約100メートルでロケットを垂直離着陸させ、機体回収に成功した。技術の成熟度は比較的高い。

深藍航天はすでに、自社開発した液体酸素とケロシンを推進剤とするエンジン「雷霆-5」を搭載したロケット「星雲-M」の開発を完了している。雷霆-5は真空中推力50キロニュートン(kN)で、推力を50〜100%の幅で調整できる。

エンジン「雷霆-5」

霍氏は、LPGエンジンは液体酸素とメタンを推進剤とするエンジンよりも安全性や密度比推力に優れているため、地球低軌道に向けたロケットの商業打ち上げに適していると指摘。雷霆-5に採用したピントル式噴射装置は、構造設計や加工・製造の難易度は高いが、燃焼安定性に優れ燃焼振動が発生しにくく、スムーズな推力調整が可能だと説明した。

雷霆-5には3Dプリンター製部品が多用され、ロケットの部品点数を減らしてサプライヤーの負担を軽減しているという。雷霆-5は、3Dプリンター製部品の割合が総重量の85%を占めており、現在のところ中国では最も多くの3Dプリンター製部品を用いた液体燃料ロケットエンジンとなっている。

霍氏は、3Dプリンティングや付加製造(Additive Manufacturing)の技術は、ロケットエンジンの製造工程短縮とコスト低減を実現すると説明。付加製造に関連する産業が発達すれば、より優れた品質・性能を備えた部品が生産されるようになるとの見方を示した。

雷霆-5はすでに2回の回収実験と数十回の地上試験に成功している。しかし霍氏は、打ち上げを完全成功させるにはまだ多くの部品の技術検証試験が必要だとした上で、3Dプリンター製部品にもより高度な性能試験が課せられることになるとの見方を示した。

中国では、部品だけでなくエンジンや再使用型ロケットに関する事業の経験や試験データが不足している。霍氏は「目標はロケットの回収ではなく再使用だ。今のところ部品の強度基準やメンテナンスのルールなどに明確な根拠はないため、今後も継続的に検討していく必要がある」と述べた。

深藍航天は現在、高度約1000メートルでのロケットの垂直離着陸・回収実験および液体酸素とケロシンのエンジン「雷霆-20」の試験を準備中だ。同エンジンは打ち上げ時の推力が150トンを超えるなど、性能面でスペースXのファルコン1を指標としている。

(翻訳・田村広子)

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