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コンピューターで生成された人間そっくりの架空の人物「バーチャルヒューマン」が注目されている。バーチャルヒューマンはすでに、配信者やミュージシャン、ブランドアンバサダー、そして芸能人のアバターとしてインターネットの世界で活躍している。巨大な仮想空間「メタバース」での活動にも期待が集まる。
そんな中、バーチャルヒューマンの開発を手掛ける「次世文化(Next Geneartion)」がこのほど、シリーズA3の資金調達を完了したと発表した(調達額未公開)。出資者はセコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)。同社は昨年、2回の資金調達を実施し、網易(ネットイース)や創世伙伴資本(CCV)、順為資本(Shunwei Capital)などから計1000万ドル(約11億5000万円)を調達している。
次世文化は2018年にバーチャルヒューマンの開発に取り組み始め、現在は主に芸能人のアバター、同社オリジナルのバーチャルヒューマンおよびブランドアンバサダーを手掛けている。
芸能人のアバターとしては、ウイグル族の人気女優ディルラバ・ディルムラット(廸麗熱巴)のアバター「廸麗冷巴」、男性アイドルZTAO(黄子韜)のアバター「韜斯曼」、チェロ奏者のNana(欧阳娜娜、オーヤン・ナナ)と共同開発したバーチャルバンド「NAND」などがある。
オリジナルのバーチャルヒューマンには、中国女性そのものの「Ling(翎)」と「南夢夏」のほか、男性モデルとして活躍する「ASK」などがある。
ブランドアンバサダーとしては、宝飾品ブランド「I Do」のアンバサダー「Beco」 、化粧品ブランド「花西子(Florasis)」のアンバサダー「花西子」、乳製品大手の伊利集団(Yili Group)が手掛ける牛乳ブランド「伊利金典」のアンバサダー「典典子」を開発した。このほか、中国初のバーチャルDJ「Purple」も次世文化の作品だ。
同社は昨年9月、人工知能(AI)企業「小冰(シャオアイス)」と共同で、世界初の人間観察AI「MERROR」を発表した。MERRORは、AIチャットボット「小冰(りんな)」のフレームワークを一部使用して生成され、現在も反復学習を続けている。MERRORは相手の発言を予測し、会話を継続・誘導することができる。
バーチャルヒューマンへの注目度は、昨年後半から急上昇している。人気ボーカロイドの「洛天依(ルォ・テンイ)」は北京冬季五輪の舞台に登場し、バーチャル配信者の「柳夜熙」はTikTokの中国版「抖音(Douyin)」でフォロワーを862万人に伸ばした。バーチャル女性アイドルグループの「A-Soul 」は、人気動画配信サイト「ビリビリ動画(Bilibili)」でケンタッキーフライドチキンやロレアルなど大手企業とのタイアップを果たしている。
企業データベース「天眼查(Tianyancha)」によると、中国のバーチャルヒューマン関連企業は28万8000社に上る。2021年は関連企業による資金調達が16件実施された。調達額は数百万元(数千万円)から数千万ドル(数十億円)と幅はあるが、出資者にはセコイア・キャピタル・チャイナやGGVキャピタル(紀源資本)、峰瑞資本(FREES FUND)など有名投資機関が並ぶ。
創業者の陳燕氏は「昨年末からバーチャルヒューマン市場は明らかに白熱している。新たなバーチャルヒューマンが毎週のように登場しているが、人気の浮き沈みも激しい。私たちはそれに巻き込まれるつもりはない」と述べた。
陳氏は、2022年の目標を二つ挙げた。一つ目は、より賢く、より多くの場面で活躍できるバーチャルヒューマンの開発。二つ目は、個人アバターの普及だという。
次世文化は現在、人間観察AI「MERROR」を活用し、AIと人間による対談番組の企画を進めているほか、AI企業「慧夜科技(Huiye Technology )」と協力してバーチャルDJ「Purple」の対話能力と表現力を高めようとしている。バーチャルヒューマン「ASK」には哲学書200冊とSF小説50冊を読み込ませ、AI哲学者に育てる計画だ。
個人アバターの普及は、プラットフォーム型の新事業につながる。次世文化は今年3月、個人アバター作成システムを打ち出す。同システムを利用すれば、一般ユーザーも自身の手で唯一のアバターを作成できる。将来的には、アバターが異なるプラットフォーム間を自由に行き来できるようにする計画だという。
(翻訳・田村広子)
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