投げ売り、リストラ、CEO交代、「ビットメイン」はどこへ向かうのか?

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仮想通貨マイニング最大手「比特大陸(ビットメイン)」の創業ストーリーは、創業者の呉忌寒(ジハン・ウー)氏と詹克団(マイクリー・チャン)氏の出会いに端を発する。2人は共同CEOとして、二人三脚で同社を業界最大手へと導いてきた。

目を見張る成長

ビットメインの滑り出しは決して順調ではなかった。

チャン氏が初代マイニング専用機を開発してから数カ月後、東京のビットコイン取引所「マウントゴックス」から85万ビットコインが消失、被害総額は4億5000万ドル(約504億円)に上った。これを受けて、ビットコインの安全性が疑問視されるようになった結果、2014年3月から2015年3月、1ビットコインの価格はピーク時の約1100ドル(約12万3000円)から200~300ドル(約2200~3300円)にまで暴落した。

「このときビットメインは破産寸前だった」と、後にウー氏は語っている。しかしこの後、計算効率を高め、消費電力を抑えた同社のマイニング専用IC「ASIC」が、急速にシェアを拡大していくことになる。

2017年にビットコイン価格は1万9650ドル(約220万円)にまで高騰。2018年に、ビットメインが目論見書の中で示したデータによると、同社のマイニング専用機「S9」だけでも、世界のビットコインマイニング市場で6割のシェアを獲得しているという。2017年の売上総利益率は48.2%で、調整前の純利益は10億ドル近くに上った。

ビットメインによると、今後は同社のハッシュレートによりビットコインキャッシュマイニングを支援していくという。一方で、2016年にAIチームを発足させ、2017年11月には、自社開発の第1世代AIチップをリリースしている。こうしてビットコインキャッシュとAIという2本柱の戦略が始まった。

損失、投げ売り、リストラ

2018年、ビットメインのAI転向の動きが明確化してきた。目論見書には、ディープラーニングを取り入れたAI開発に、ASICの開発で培った経験を活かすことができると書かれている。

外部の状況からも、転向の必要に迫られているのは明らかだ。2018年末、ビットコイン価格はピーク時の6分の1まで下落、ビットメインのマイニング機「Antminer」は大幅に値引きして投げ売りされた。経済誌「財経」の報道によると、同社は2018年の第2四半期、赤字に転落したという。

さらに2018年末、ビットメインが従業員の半数に及ぶの大量リストラを行い、マイニング工場や海外拠点を閉鎖するとの情報が伝えられた。その後、仮想通貨メディア「CoinDesk.com」は、2018年第3四半期の同社の損失額が5億ドル(約560億円)に上ると報じた。

2人の共同CEOに関しても、互いの方向性の違いが指摘されている。ウー氏がビットコインキャッシュやブロックチェーンの発展を目指しているのに対し、チャン氏はAI分野に関心を向けているというのだ。今年1月末には、両者ともCEOを退任し、製品技術責任者の王海超氏がCEOに就任するとの情報が流れた。

これに対しビットメインはこう答えている。「ネットでは2人の対立を演出したいのだろうが、ウーCEOは以前よりAIを推進していく考えだ。一方、チャンCEOはエンジニアとして当社のマイニングチップ開発を指揮してきた。その彼がブロックチェーンの発展を望まないわけがないだろう?」

「コア事業」に回帰

2019年2月、ビットメインは最新のマイニングチップ「BM1397」をリリース。この製品が2019年の同社の方向性を決定づけたと言える。

1月21日の同社のブログには、現在業務のスリム化と最適化を進めており、「コア事業」に回帰する必要がある、との考えが示されている。

ビットメインによれば、「コア事業に回帰する」とは、「チップ事業」に立ち返ることだという。「削減するのは周辺プロジェクトであり、AI開発だけを行うか、ブロックチェーンだけを行うかということではない。」

とはいえ、目論見書によると、2018年上半期、同社の売上高全体のうち、マイニング機の売上高が占める割合は94.3%だった。「コア事業に回帰する」との言葉が何を指すにしても、持株比率20.25%のウー氏が単独で決定できることではないだろう。
(翻訳・畠中裕子)

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