バーチャルヒューマンの進化が止まらない 2030年の中国市場は5兆円規模に

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

特集注目記事

バーチャルヒューマンの進化が止まらない 2030年の中国市場は5兆円規模に

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

「複雑系を超えて」(原題「OUT OF CONTROL」)の著者、ケヴィン・ケリー氏は2019年に開催された中国国際ビッグデータ博覧会で、「将来的には世界の全てがデジタル化され、その全てがデジタルな仮想空間にコピーされて現実世界の鏡のようになる」とした上で、「今後30年で人間と機械と自然との果てしない融合が進むだろう」との予測を示した。

インターネット上の仮想空間で動き回るバーチャルヒューマンにつながる最初の取り組みは、米国国立医学図書館(NLM)が1980年代後半に発表した「Visible Human Project」だろう。このプロジェクトがきっかけとなり、米国や日本、韓国、中国などでバーチャルヒューマンに関する研究ブームが巻き起こった。

「バーチャル・テレサ・テン」が2013年に人気歌手ジェイ・チョウ(周杰倫)とのデュエットを披露した情景は、今も記憶に新しい。再現された故テレサ・テン(鄧麗君)の姿と歌声に、多くのファンが感動の涙を流した。しかし、当時の映像や音声は技術的なハードルを1つ越えたにすぎず、バーチャルヒューマンの開発に成功したわけではなかった。

再現された故テレサ・テン(鄧麗君)の歌う姿

百度智能雲(バイドゥスマートクラウド)でインタラクティブエンターテインメント産業向けソリューションを担当する張彬ディレクターは、バーチャルヒューマンが発展してきた過程を3世代に分けて説明している。

1.0世代は、キャラクターの動画にボーカロイドの声を合成したものだった。初音ミクや洛天依(ルォ・テンイ)は一世を風靡した。

2.0世代は、2Dまたは3Dモデルにモーションキャプチャーで動きをつけ、声優が音声を追加するもので、バラエティ番組で活躍する「聆秋」や「沐汐」、メイクアップの達人「柳夜熙」が代表的だ。

バーチャルヒューマン「柳夜熙」

3.0世代は、より細やかな造形と動き、そして賢さを身につけた。表情が豊かになった上、文章を音声に変換する「Text To Speech(TTS)」方式で対話することもできる。人工知能(AI)と連携させ、自然言語処理(NLP)技術を利用し、対話能力を向上させることも可能になった。現在のバーチャルヒューマンはより人間に近づき、虹彩や指紋など固有の生体情報も持ち始めている。

バーチャルヒューマンを手掛ける企業はここ数年、人間そっくりなバーチャルヒューマンの開発に飽き足らず、さまざまな場面やニーズに対応するバーチャルヒューマンを生み出している。大手企業の従業員や有名大学の学生、宇宙飛行士などの肩書きを持つバーチャルヒューマンが、それぞれインフルエンサーとして活躍中だ。

天風証券(TF Securities)のアナリスト、文浩氏は今年4月にメディアの取材に応じ、「バーチャルヒューマン業界は依然として萌芽期にあり、株価の変動も大きい。明確なビジネスモデルも確立されていない」との見方を示した。

先端技術とAI関連の情報サービスプラットフォーム「量子位」は、2030年には中国のバーチャルヒューマン市場が2700億元(約5兆1000億円)規模になるとの予測を発表している。そのうち、インフルエンサーとしての役割を持つバーチャルヒューマンは1750億円(約3兆3000億円)を、接客の役割を果たすバーチャルヒューマンは950億円(約1兆8000億円)を占めるという。

3.0世代のバーチャルヒューマンがさらに発展すると、1個のチップが人間の脳に代わってバーチャルヒューマンに学習能力を与える。彼らには人間のような生理的限界はない。眠らずに動き続ける「デジタルな人間」が誕生し、10年後あるいは20年後の私たちを想像したこともない世界に連れて行ってくれるかもしれない。

日本発Vチューバー「Vox Akuma」、中国のライブ配信で投げ銭2000万円。運営会社は来月東証に上場

(翻訳・田村広子)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録