EC京東、「618セール」でメタバース売り場構築。リアルさで購入率向上促す

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メタバースを利用したマーケティング技術を手掛ける「宙予科技」がこのほど、数千万元(数億~十数億円)の戦略投資を受けたことがわかった。出資したのは「険峰長青(K2VC)」「凡創資本(Invention Capital)」「藍色光標(BlueFocus)」。

宙予科技は2019年設立。EC(電子商取引)プラットフォームやブランドのメタバース導入を技術的にサポートする。同社はメタバースをオンラインプラットフォームが空間化したものと捉え、そこに空間化を前提とするマーケティングの可能性が生まれると考えている。空間という壁が取り払われ、離れたところにいる親戚や友人などと一緒に、バーチャルショッピングモールでおしゃべりしながら買い物することができるようになるからだ。

宙予科技の創業者でもある朱峰CEOは「メタバースそのものが長い時間をかけて成長していく中で、バーチャル空間に最もふさわしいショッピング体験をいかにつくり出すか、というのも長期的に検討が必要な課題だ。ここでは人・場所・モノが三要素となり、当社はこの3つの方向からメタバースの技術サービスを展開する」と話した。

まずは「人」だが、宙予科技はAIを利用したバーチャルヒューマンによるライブ配信「宙予全天播」をリリース、24時間休みなしのライブコマースを実現した。現在、30を超えるブランドと40店舗以上がこのサービスを利用している。これまでに行ったライブコマースの配信総時間は数万時間にのぼり、店舗のGMV(流通取引総額)増加に貢献している。

バーチャル配信者によるライブコマース(提供:宙予科技)

次に「場所」だ。宙予科技は大規模ECセール「618セールイベント」でEC大手「京東集団(JDドットコム)」にサービスを提供、家電製品のメイン会場「潮電元空間」をメタバースで実現した。また家電ブランド「卡薩蒂(Casarte)」のセールイベントの企画もするなど、すでに2回、メタバースのポップアップストアを出店している。ユーザーは京東のアプリ内で、メタバース空間を自分が歩き回って買い物しているかのような体験ができる。目につく商品を直接タップしたり、画面をスワイプして空間内を移動、視点も好きなように変えられる。宙予科技はバーチャル空間内で商品紹介から決済まで、ECの全プロセスを実現した。

家電ブランド「卡薩蒂(Casarte)」のメタバースによる商品展示(提供:宙予科技)

最後は「モノ」だ。EC大手で扱う商品は数億SKU(商品の最小管理単位)にのぼるが、その表示方法は写真が主だ。宙予科技は商品を3Dモデルで展示し、オンラインでもよりリアルに見せて売り上げにつなげる。現在は3Cデジタル機器(パソコン、通信機器、家電製品)、かばん、靴、マタニティ・ベビーなどの業界でこうした取り組みを行っている。

3Dモデルで商品を展示(提供:宙予科技)

なぜECを選んだのか

朱CEOは次のように述べた。「中国市場ではECのコンバージョン率(購入率)は1~2%、ライブコマースでも約5%にすぎない。しかし実店舗では30~40%だ。ECの歴史はわずか20数年だが、実店舗での買い物という行為には1000年以上の歴史があり、そのビジネスモデルは確かなものだ。もしオンラインでも実店舗と同じような買い物が体験できれば、コンバージョン率は上昇するはずだ」

現在、多くの日用消費財ブランドが同社との提携を希望しているという。ECプラットフォーム、家電ブランドのほか不動産企業なども同社の潜在的な顧客だ。

今回の資金調達後、宙予科技は人材採用を進め、製品サービスやそのインフラなどの最適化を進めていく予定だ。新規の資金調達も間もなく開始するという。

(翻訳・山口幸子)

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