米規制に対抗〜国産化進むAIチップ、いま中国で注目の10社

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中国市場では9月に入って国産のAIチップに対する関心が再び高まっている。米当局が一部メーカーに対し、AIチップの対中輸出を停止するよう通知したとの報道があったからだ。

データセンターや自動運転などの業界が急成長するにつれ、高い演算力を有するAIチップはこれらの成長を支える重要な存在となった。 中国でも高性能AIチップを手がけるベンチャー企業が徐々に登場してきている。これらの企業はチップの国産化をより一層促してくれることだろう。

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以下に中国を代表する高性能AIのベンチャーをご紹介する(設立年順に紹介)。

01、地平線機器人(Horizon Robotics)

地平線機器人は2015年に設立され、自動車向けAIチップ量産を実現した国内唯一の企業だ。独自開発したAI専用のコンピューティングアーキテクチャー「BPU(Brain Processing Unit)」を通じて自動運転向けのチップ「征程(Journey)」、AI+IoT向けの「旭日(Sunrise)」の2つの製品シリーズを展開する。2021年7月に発表したオールシナリオ対応のインテリジェントCPU「征程5」の演算処理性能は、単独で128TOPSのパフォーマンスを発揮する。

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征程シリーズは昨年末時点で累計出荷数が100万個を突破。「長安汽車(Changan Automobile)」「奇瑞汽車(Chery Automobile)」「智己汽車(IM Motors)」「広汽埃安(AION)」「東風嵐図(VOYAH)」「江淮汽車(JAC)」などのメーカーやブランドの車両に搭載されている。

02、天数智芯半導体(Iluvatar CoreX )

天数智芯半導体は2015年に設立され、2018年に7nmプロセスの汎用型並列処理用クラウドコンピューティングのチップ設計を正式に開始。クラウドコンピューティング、AI、DX(デジタルトランスフォーメーション)に代表されるデータ駆動型技術市場向けに、GPGPU(画像処理装置による汎用コンピューティング)、ハイエンドチップとスーパーコンピューティングシステムを提供する。

2020年12月には中国初となるクラウド上でのAIトレーニング(訓練)用7nmプロセスGPGPU「天垓100」がウェハーの電気的検査をクリアした。翌年3月に正式リリースされ、今年3月末までに受注額が2億元(約40億円)となっている。同社2番めの製品はクラウド・エッジでのAIインファレンス(推論)用7nmプロセスチップ「智鎧100」で、今年5月にウェハーの電気的検査をクリアしている。

03、寒武紀科技(Cambricon Technologies)

寒武紀科技は2016年に設立され、主にクラウド-エッジ一体型、ハードウェア・ソフトウェア協調設計、トレーニング-インファレンス融合型の統一されたエコシステムをシリーズ化させたインテリジェントチップとプラットフォーム化されたOSを開発する。同社の製品はサーバー企業などに幅広く導入され、インターネット、金融、交通、エネルギー、電力、製造などの分野でAI導入の複雑なシナリオに用いられている。

同社はこれまでにエッジ端末向け(Cambricon-1A、Cambricon-1H、Cambricon-1M)、エッジコンピューティング向け(思元220)、クラウドコンピューティング向け(思元100、思元270、思元290、思元370)などのAIチップやアクセラレーターをリリースしてきた。2020年7月にはAIチップメーカーとして初めて上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板(スター・マーケット)」に上場している。

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04、黑芝麻智能科技(Black Sesame Technologies)

黑芝麻智能科技は2016年に設立され、自動運転用チップとプラットフォームを開発する。車載グレードの設計を経て学習型画像演算性能を有する低消費電力の精密センシングチップ、自動運転用コンピューティングプラットフォームをベースとした完全自動運転および路車協調のソリューションを提供する。

自社で開発した2つのIPコアを武器に、これまで「華山A500」「華山二号A1000」「華山二号A1000L」「華山二号A1000Pro」と自動運転用の4つのチップをリリースしてきた。華山二号A1000はすでに車載グレードの認証を受けており、今年4月に量産に入った。年内には量産車に搭載される予定だ。

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05、墨芯人工智能科技(MOFFET AI)

墨芯人工智能科技は2018年に設立され、クラウド向けおよび端末向けAIチップとアクセラレーションのソリューションを設計する。計算モデルの改善によって全面的にスパース化(希薄化)されたニューラルネットワークに対応。超高演算性能、超低消費電力の汎用AIコンピューティングプラットフォームを提供する。

同社初の製品「Antoum」は高性能な汎用型PLD(プログラマブルロジックデバイス)で、クラウド上でのAIインファレンスに用いられ、スパース化率は32倍にもなる。CNN、RNN、LSTM、Transformer、BERTなどのネットワークアーキテクチャーや浮動小数点、固定小数点の豊富なデータ型に幅広く対応する。

06、燧原科技(Enflame Technology)

燧原科技は2018年3月に設立され、主にAIのクラウド上の演算力に焦点を当て、独力でのイノベーションを目指してフルスタックを網羅。完全なIPを有する汎用型AIトレーニングおよびインファレンス製品を提供する。同社の製品はクラウドデータセンターやスーパーコンピューティングセンター、スマートシティなどAIを導入する多くのシナリオに幅広く用いられている。

これまでにクラウド用AIトレーニングアクセラレーター「雲燧(CLOUDBLAZER)i10」、クラウド用AIインファレンスアクセラレーター「雲燧i20」、クラウド用AIトレーニングアクセラレーター「雲燧T10」「雲燧T20」、コンピューティングおよびプログラミングプラットフォーム「馭算(TopsRider)」、インファレンス加速エンジン「鑑算(TopsInference)」などをリリースしてきた。

07、壁仞科技(Biren Technoogy)

壁仞科技は2019年に設立され、オリジナルの汎用コンピューティングシステムを開発し、ソフトウェアとハードウェアの高効率なプラットフォームを構築するとともに、インテリジェントコンピューティング分野に用いる一体型ソリューションを提供する。当初はクラウド上での汎用インテリジェントコンピューティングに専念していたが、徐々にAIトレーニングやインファレンス、画像レンダリングなど多くの分野で既存のものを超えるソリューションを打ち出してきた。国産の汎用インテリジェントコンピューティング用ハイエンドチップでは画期的な成果だ。

今年3月には中国製としては最大の演算力を有するGPGPUがウェハーの電気的検査をクリアした。8月には同社初のGPGPUとして「BR100」を発表した。16ビットの浮動小数点演算力は1000T以上、8ビットの固定小数点演算力は2000T以上で、チップ単体の演算力はピーク時でPFLOPSクラスに達する。

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08、沐曦集成電路(METAX)

沐曦集成電路は2020年9月に設立され、ヘテロジニアスコンピューティング向けに安全で信頼性の高い高性能GPUとソリューションを提供する。高性能GPUのIPと、GPUの主要エコシステム向けに相互運用性のあるソフトウェアスタック「MACAMACA」を独自開発している。

これまでにAIインファレンスに用いるMXNシリーズ(曦思)、サイエンティフィックコンピューティングとAIトレーニングに用いるMXCシリーズ(曦雲)、画像レンダリングに用いるMXGシリーズ(曦彩)などフルスタックの高性能GPUを構築してきた。AI、スマートシティ、データセンター、クラウドコンピューティング、自動運転、サイエンティフィックコンピューティング、デジタルツイン、メタバースなどの最先端分野で幅広く用いられている。

09、後摩智能科技(HOUMO.AI)

後摩智能科技は2020年末に設立され、PIM(インメモリーコンピューティング)技術に特化した高演算性能のAIチップを手がける国内初の企業だ。主にPIM技術とストレージ技術をベースに、AIチップの性能や消費電力のボトルネックに解決策をもたらしている。高演算性能・低消費電力でエネルギー効率比に優れた同社のチップやソリューションは、自動運転や汎用ロボットなどのエッジ端末やクラウド上でのAIインファレンスに用いられている。

今年5月には、同社が独自に開発した業界初のPIM高性能AIチップがウェハーの電気的検査をクリアし、自動運転用アルゴリズムモデルの実行に成功したと発表。このチップはSRAM(スタティックRAM)をPIMの媒体とし、ストレージユニットとコンピューティングユニットを深く結びつけることで高性能かつ低消費電力を実現した。サンプル製品の演算性能は20TOPS、最大200TOPSとなり、コンピューティングユニットのエネルギー効率比は最大20TOPS/ワットに達する。

10、億鋳智能科技(Yizhu Technology)

億鋳智能科技は2021年10月に営業を開始し、ReRAM(抵抗変化型メモリー)を用いたフルデジタルPIMの高演算性能AIチップを自社で設計・量産できる現段階では国内唯一の企業だ。ReRAMのPIM技術ではIPから製造技術までの全面国産化を実現している。

ReRAMを用いたPIM技術で設計した低消費電力・高演算性能チップは、高性能AIチップが抱える「メモリーの壁」「消費電力の壁」といった業界共通の問題を解決でき、高い演算性能、少ない消費電力、容易なデプロイ、レイテンシーの確定性など市場の要求を満たせる。同社は現在、コンパイラーやリソースの最適化、デプロイメントを含むハードウェア・ソフトウェア協調型のPIM半導体設計ツールおよびアプリケーション開発プラットフォームを業界で初めて開発している。第一世代チップは2023年に完成する予定だ。
(翻訳・山下にか)

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