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中国の新興コーヒーチェーン「瑞幸咖啡(Luckin Cofee)」が5月17日、米ナスダックに上場した。設立からわずか17カ月というスピード上場で、中国企業による米国上場の最速記録を更新したほか、新規株式公開(IPO)を世界最速で実現した企業となった。
IPOの目論見書によると、瑞幸咖啡は米国預託株式(ADS)を3300万株発行する予定としていた。1ADSはクラスA株8株に相当する。オーバーアロットメントによる売り出し分を含めて6億9500万ドル(約750億円)を調達する計画で、アジア企業としてはナスダックで今年最大規模のIPOだ。
瑞幸咖啡の設立は2018年3月。経営陣は主に「神州系」で固められている。董事長の陸正耀氏はかつて、レンタカーの「神州租車(CAR)」と配車サービスの「神州優車(UCAR)」の2社を創業し、上場を成功させている。また、創業者兼CEOの銭治亜氏は神州優車の董事とCOOを務めていた。
設立17カ月のベンチャー企業として、同社は半世紀近い歴史を持つスターバックスに挑み続けている。陸氏は先ごろ、同社はスターバックスを超えるだけでなく、時価総額1兆ドル企業のアマゾンを見習い、「フライホイール効果」(コストパフォーマンスと利便性の高さを体験してもらい、クーポンを提供することで、アクティブな消費者群を育成する)を実現していきたいとの考えを明らかにしている。
瑞幸咖啡がアマゾンに並ぶ規模になれるかどうかを論じるのは時期尚早だ。だが、成長のスピードからみて、同社が時価総額900億ドル(約9兆7200億円)のスターバックスを超えるのは夢物語ではないかもしれない。設立から1年後の2019年3月末時点で、同社は直営店2370店を構え、累計で顧客数1680万人、コーヒー7000万杯以上の販売実績を誇る。目論見書でも、同社がすでに中国第2位かつ成長スピードが最速のコーヒーショップブランドになったことに触れられていた。急速な拡大と驚くべき販売実績を受け、スターバックスの有力株主である米資産運用大手ブラックロックも同社に出資しており、業界では同社が投資市場の主流からも認められたと受け止められている。
同社の成長スピードは上場や出店数だけでなく、資金調達と支出の面にも反映されている。設立からわずか17カ月で、同社は計3回、総額5億5000万ドル(約594億円)に及ぶ資金調達を実施した。さらに、ファイナンス・リースや担保付融資により、総額64億元(約1020億円)を調達している。
一方、瑞幸咖啡のビジネスモデルは常に疑問視されてきた。設立直後から大量の広告を出して注意を引くと同時に、破格のクーポンを発行することで顧客を獲得してきた。だが、こうした戦略により、設立から17カ月間で積み重ねた赤字は累計22億元(約352億円)を超える。このため、破産が取り沙汰されているシェアサイクルの「ofo」を引き合いに出し、同社が第2のofoになるのではないかという意見にも注目が集まっている。なお、陸氏と銭氏はこれまでに、戦略的な収益悪化の見通しも計画の内との考えを公の場でたびたび示している。陸氏はさらに、銭氏から渡された最新の財務データによると、瑞幸咖啡の2018年度の赤字は予想を数億元(数十億円)下回っていると明かしている。
マーケティングを強化して新規顧客を獲得しながら、配送や賃料のコストを削減して既存顧客への対応を改善する。瑞幸咖啡は今、より合理的なビジネスモデルの構築に取り組んでいる。しかしこれは同社が多額の資金をひきつけ、高い評価を得ることができた理由の一つにすぎず、急成長の背後にはもっと大きな力が隠されている。ブラックロックがスターバックスと同社の両方に投資していることからもわかるように、投資家が好感を持っているのはコーヒーというブームに乗っている分野なのだ。ブラックロックが中国で瑞幸咖啡を選んだのは、中国で急速に発展するコーヒー市場に期待を寄せているということだろう。
(翻訳・池田晃子)
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