CO2を建材に封じ込める低炭素化の新技術 中国スタートアップに住友系VCが出資

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

日経スタートアップ注目記事

CO2を建材に封じ込める低炭素化の新技術 中国新興企業に住友系VCが出資

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

二酸化炭素(CO2)排出削減や有効利用につながる技術を開発する中国の「清捕零碳(Cleanco2)」が、エンジェル+ラウンドで1000万元(約2億円)を調達した。出資したのは元禾原点(ORIZA SEED)、Sumitomo Corporation Equity Asiaなど。清捕零碳は、排出されたCO2を回収し、コンクリートに注入して封じ込める技術を主に開発する。

創業者の趙超氏によると、住友商事は生コンクリートなどセメント関連製品の商品取扱高で日本最大規模の1社を子会社として有しており、清捕零碳は住友商事が中国やその他の国で展開するプロジェクトに積極的に協力していく方針だという。今回調達した資金は、炭素鉱物化生産ラインの建設や技術開発に充てる。

地球温暖化を受け、CO2を回収・貯留・再利用する「CCUS技術」が、最もダイレクトにCO2を吸収できる方法としてカーボンニュートラル達成への最終ステップとなっている。

CCUS技術は、CO2を注入して油田の増産を目指す石油増進回収法(EOR)に端を発する。CO2排出削減の効果が期待でき、従来型エネルギーのクリーンな活用も促進できることから、徐々に商業化の段階に入りつつある。

「中国CO2回収・利用および貯留技術発展のロードマップ(2019年版)」によると、CCUSの年間生産高は2023年には200億元(約3900億円)規模、50年には3300億元(約6兆5200億円)規模を超え、25〜50年の年平均成長率は11.9%になるとされている。

現在、建物の建設・維持の過程で排出されるエンボディド・カーボン(内包二酸化炭素)が世界全体のCO2排出量の11%を占めている。なかでも建材が最も大きな部分を占め、その比率は約60〜70%に上る。エンボディド・カーボンの削減は、建築業界全体にとって重要な課題となっている。そのため、コンクリート生産に用いる炭素鉱物化技術が、CCUS技術の応用方法の中でも建築・インフラ産業で徐々に広く活用されるようになってきている。

コンクリートは世界で最も多く用いられる建材であり、その主要材料であるセメントからのCO2排出量は世界の排出量全体の実に7%以上を占める。原因は、セメントの生産過程で生じる化学反応や高温焼成の工程だ。

趙氏によると、清捕零碳が開発した「炭素鉱物化利用」技術システムは、コンクリートレンガの材料としてセメントの代わりに産業副産物の石炭灰や高炉スラグを使い、従来の高温蒸気養生法の代わりに炭酸化養生法を用いることで、製品1000kgあたり108.12kgものCO2排出を削減できるという。

清捕零碳

このプロセスは生産技術を改良することでCO2排出を削減するだけでなく、産業副産物であるCO2を固定(練り混ぜて封じ込めること)することができる。CO2を固定するために清捕零碳は特製の注入機や特殊な混和剤を活用しており、製品1000kgあたり50.27kgのCO2を吸収・固定できる。

趙氏によると、この技術で生産した環境配慮型コンクリート材料は、コンクリートの強度などをある程度高めるだけでなく、養生にかかる時間もこれまでの半分以下にでき、大きく生産性を上げられるという。

しかし、CCUS技術の実用化にあたって最大の障壁となるのはコストだ。趙氏によると、同社は原材料・生産プロセス・生産設備に至るまで一連の調整を行い、現在は顧客の要求に見合うコストに抑えられたという。一定の条件下では既存の生産プロセスと同等のコストにまで下げられるという。この技術が大規模に活用されるようになれれば、さらに下がるだろう。

生産プロセス

清捕零碳にとって、2022年は徐々に商業化への道筋が整い始めた1年だった。

先日、不動産大手の恒隆地産(Hang Lung Properties)がCCUS技術に関して清捕零碳と2年間の業務提携を実施すると発表した。中でも杭州市の複合施設・杭州恒隆広場は、中国本土・香港で初めて環境配慮型コンクリートの技術を使った事業プロジェクトだ。趙氏によると、清捕零碳が生産する環境配慮型コンクリートレンガのカーボンフットプリントは製品1000kgあたりわずか22.61kgCO2eで、従来型の方法で生産したものと比べ、CO2排出量を約87%も削減できる。

清捕零碳が開発する技術のルーツは浙江大学クリーンエネルギー利用国家重点実験室(CEU)にある。清捕零碳とCEUは2020年、多くの国家プロジェクトや地方プロジェクトで協業を実施するとともに、共同開発プラットフォームも立ち上げている。同プラットフォームは炭素鉱物化を利用した大規模生産の検証が可能な中国初の実験基地だ。

(翻訳・山下にか)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録