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中国で2万5000店舗以上を展開する最大級のフライドチキンチェーン「正新鶏排(ジェンシンジーパイ)」が日本に上陸した。本国ではタピオカ店のようなテイクアウト専門店として、人の流れが多い駅前や学校近くなどに出店しているが、都内の高田馬場に5月にオープンした日本1号店もこのモデルを踏襲しているようだ。
1つの店舗に2つのチェーンが入居
正新鶏排は上海の食品グループが運営するブランドで、手ごろな価格とフランチャイズ戦略で急成長。店舗数は2021年時点でケンタッキーの3倍、マクドナルドの7倍に達しているという。
日本1号店は、高田馬場駅から早稲田通りを早稲田方面に5分ほど歩いたところにあるビルの1階にオープンした。中国で俳優や歌手などとして活躍する黄渤(ホアン・ボー)がイメージキャラクターを務めており、店の外を通りかかると簡体字の看板と彼の写真が目に飛び込んでくる。
看板メニューの鶏排は550円で麻辣味、五香味(八角、花椒などをミックスしたスパイシーな味)、梅味、クミン味の4種類から選ぶことができる。コンビニのフライドチキンを購入したときのような紙袋に入った鶏排は食べ歩きしやすい大きさにカットされている。クミン味を注文してみたが、サクサクとした衣にクミンのエスニックな香りがして揚げ物とよくあう味付けで美味しかった。
よく見ると店頭には正新鶏排だけでなく日本で麻辣燙(マーラータン)や滷味(アヒルなどの漢方煮)をチェーン展開する「周黑鴨大夫人」の看板もかかっている。1つの店の中に2つのブランドが入っている少し不思議なお店だ。
オーナーの陳さんは日本で周黑鴨大夫人を展開していたが、中国の正新鶏排がフランチャイズで中国国内だけでなく海外でも出店できるというのを知り、フランチャイズ出店で正新鶏排の運営に挑戦することにしたという。周黑鴨大夫人は高田馬場以外にも池袋や西川口、大久保や関内など中国人が多く暮らす場所に9店舗出店している。
お店のメニューを開くと麻辣燙や麻辣香鍋など周黑鴨大夫人のメニューと、鶏排や羊肉や鶏肉、野菜の串揚げなどの正新鶏排のメニューが併記されていた。筆者は池袋店に行ったことがあるが、麻辣燙や滷味、麻辣香鍋などの周黑鴨大夫人のメニューは高田馬場店と同じだった。
高田馬場の中国人留学生がターゲット
「正新鶏排を高田馬場に出店したのは、中国人の生活エリアだからです。特に大学や中国人向けの学習塾が多く、若い中国人が多いので鶏排(フライドチキン)は需要があると思いました。鶏排は日本人にも好まれそうです。ただ、高田馬場は家賃が高いので単価が安いフライドチキンだけだと経営は難しいと考えて周黑鴨大夫人も合わせ2つのブランドを1つの店で展開する形にしました」と陳さん。同店が入るビルの2~9階には中国人向けの学習塾「行知学園」が入居しており、通塾する中国人留学生の来店が期待できる。
中国の正新鶏排は人の流れが多い駅前や学校近くなどに出店することで店舗数を伸ばしてきたが日本でも似たような戦略になっているのだ。
同店の従業員によると、正新鶏排のメニューは中国と同じ。「5月18日にオープンしたばかりで、お客さんの90%以上は若い中国人の方です」という。筆者が店を訪れたのは週末の午後3時だったが、その時間でも店内は7割程度埋まっていて客のほとんどが中国人の若者だった。麻辣燙や麻辣香鍋のような主食以外に、鶏排や串焼きのような軽食メニューが多いのでお昼時以外の時間でも集客できているのかもしれない。中国版インスタグラムの小紅書(RED)でも鶏排は中国の正新鶏排と同じ味で美味しい!というような投稿も多く、開店から1ヶ月の評価はまずまずのようだ。
陳さんは「正新鶏排の1店舗目は日本での試験営業のようなかたちで、この店がうまくいけば今後は中国側の正新鶏排とも連携を深めて日本での展開を進めていく予定です。家賃が安い小さな店でテイクアウト専門店での展開も考えています」と話す。今後は他のガチ中華も多く出店する上野のアメ横や新大久保、池袋などでも正新鶏排の派手な看板を目にする機会が増えるかもしれない。
(作者:阿生)
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