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グーグル・チャイナの元社長、著名なコンピューター科学者であり、中国のVC「創新工場(Sinovation Ventures)」の会長兼CEOでもある李開復(カイフ・リー)氏が、AI新会社設立を表明して3カ月余り後の7月3日、新企業の詳細を明らかにした。
李氏は今年3月19日、SNS上で自ら「Project AI 2.0」を立ち上げることを宣言。大規模言語モデルに象徴される「AI2.0」時代に焦点を当て、「新たなAI 2.0プラットフォームとAIで生産性を高めるアプリケーションを開発するグローバル企業」とすることを投稿していた。
この度はProject AI 2.0の事業内容やメンバーなどの一部が公開された。創新工場もProject AI 2.0として立ち上げた新会社の正式名称「零一万物(01.AI)」を公式発表し、公式サイトもお披露目した。
創新工場によると、零一万物は同社の「塔尖孵化」プロジェクトが生み出した7社目の企業だという。
「塔尖孵化」とは、弱点を抱えるアーリーステージの企業に出資する同社のインキュベーション(起業支援)戦略のこと。起業家と学術界の間に人材や技術面での緊密な連携を確立することが特徴で、技術トレンドを見定めたり、技術テーマを設定したり、技術人材を発掘したり、業界の最新動向を把握したりなどのプロセスを支援する。今年3月にプレシリーズAで1億元(約20億円)を調達した「瀾舟科技(Langboat)」も、この起業支援プロジェクトで誕生した企業だ。
零一万物は自社開発の大規模言語モデルを携えてAI業界へ参入する。そのため、零一万物ではモデルの学習(トレーニング)・調整(チューニング)・推論(インファレンス)専用の実験プラットフォームを構築し、膨大な演算処理をまかなうため数千のGPUクラスターをリソースプール化している。
「車輪の再発明(すでに存在するものをゼロから作り出すこと)」ではないかとの声に対しては、中国の大規模言語モデル分野が現在抱える2つの問題を挙げて答えている。問題の1つ目は、ChatGPTと同様の性能をうたうオープンソースのモデルのほとんどが単純な会話にとどまり、一般化されたタスクや複雑なタスクに対応できないこと。2つ目は、オープンソースのエコシステムへの依存が大規模言語モデル技術の基礎研究にとって妨げとなることだ。
モデルの性能を高めるため、零一万物では技術ロードマップを7つに分解して段階的に攻略していく戦略を採る。
1つ目はモデルの性能を決める事前学習(プレトレーニング)フレームワークの技術。2つ目はモデルの実装力を進歩させる事後学習(ポストトレーニング)技術で、3つ目はモデルの効率的な学習を支えるAIインフラ技術だ。4つ目はより多元的でマルチモーダルなモデル技術、5つ目はプラットフォームのミドルウェアやツールチェーンの技術、6つ目は推論を展開する技術、7つ目はサービスを展開する技術だ。
公式発表によると、零一万物ではこの分割した技術ロードマップに沿って、わずか3カ月以内にパラメーター数100億規模のモデルのクローズドベータテストを完了し、パラメーター数をさらに300億〜700億規模へと拡大しているところだ。将来的には大規模言語モデルをオープンソース化する可能性もあるという。
創新工場の紹介では、零一万物のコアメンバーは大規模言語モデルやアルゴリズム、自然言語処理、システムアーキテクチャー、データセキュリティ、プロダクト開発などの分野から数十人が集まっているという。
彼らのバックグラウンドからは、「最先端の大手企業」から「腕利き」が集まっていることが読み取れる。公式発表では、すでに入社した共同創業メンバーの中には中国IT超大手のアリババやバイドゥ(百度)のバイスプレジデント、中国配車アプリ最大手の滴滴出行(DiDi Chuxing)やバイドゥのアルゴリズム責任者、グーグル・チャイナの重役、マイクロソフト、SAP、シスコシステムズのバイスプレジデントなどを過去に務めた人物たちの名が並ぶ。また、アルゴリズムやプロダクトを手がける部署は国内外の大企業出身のメンバーで固められている。
零一万物は7分割した技術ロードマップのそれぞれのパートにトップクラスのエキスパートをあてがう考えだ。つまり、優秀な人材確保に現在も奔走している段階とも言える。会社設立を正式発表した際、零一万物は公式サイトを通じて履歴書送付を受け付けていると強くアピールしている。
(翻訳・山下にか)
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