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訪日観光客が増加し、日本では民泊産業が台頭した。経済産業省によると、訪日外国人消費指数(TCI)は基準年である2010年を100とすると、2017年は392.9に増加。訪日観光客数は2018年に延べ3119万人に達し、6年連続で記録を更新したほか、増加率も過去最高を記録している。
2015年、日本で働いていた譚雪婷氏は訪日観光客が増えていることに気づいた。だが日本の宿泊施設の料金は部屋単位ではなく人数単位で設定され、客室が狭く価格が高い。このため、友人と一緒に大阪で150万元(約2250万円)の民家を1軒購入し、副業として民泊を始めた。
譚氏が友人と共同で創業した「悠悠美宿(YUYU JAPAN)」は現在、管理受託、物件借り上げ、クラウドファンディングによる物件購入などにより、大阪で45カ所の民泊施設を運営する。今でも少人数経営を貫き、日本で日常業務を担うスタッフはわずか3人だ。他に上海に拠点を置き、5人のスタッフで技術開発と販路開拓を行っている。
コストを最大限削減するため、悠悠美宿はマンパワーの代替となるシステムを開発している。
同社の宿泊施設を予約すると、WeChat(微信)経由でほとんどのニーズを満たすことができる。同社のシステムは10社近くのOTA(オンライン・トラベル・エージェント)と予約情報を共有しており、ユーザーはOTA経由で予約をすると自動的に同社のWeChat公式アカウントをフォローするようになっている。予約後はその公式アカウント経由で、宿泊施設周辺の交通案内や設備の説明を受けたり、電気錠の暗証番号を受け取ってセルフチェックインしたりすることが可能だ。また、運営面では予約業務と清掃業務をオンライン上でシフト調整しているほか、空室状況の管理を自動化し、経理システム(毎月の収支、物件オーナー向け月次決算)などもオンライン化、スマート化を実現している。
さらに、同社のプラットフォームにはビッグデータ分析機能が搭載されており、既存の宿泊施設の収益状況やレビューをさまざまな角度から総合的に判断することができる。今後、立地選定やリフォームを検討する際に参考となるデータを提供することで、マンパワーへの依存度を減らし、意思決定上の間違いと新規開拓の難易度を引き下げることが可能だとみている。
同社が運営する宿泊施設は市中心部に近く、交通の利便性が高い場所にあり、コストパフォーマンスも比較的高い。稼働率は70%前後、宿泊料金は一人当たり300元(約4500円)ほど、月の売上高は約40万元(約600万円)となっている。宿泊施設1カ所のリフォームに10~20万元(約150~300万円)投じるとすると、回収期間は平均18~20カ月となる計算だ。
集客面ではOTAのほか、旅行会社や個人旅行などオフラインでの販路拡大に取り組んでいる。また、リピート客による新規顧客の紹介、WeChat公式アカウントによる集客、KOL(キーオピニオンリーダー)と呼ばれる人気インフルエンサーを起用したプロモーションなども予約の約2割に寄与しているという。
同社はプレシリーズAでの資金調達を目指しているところだ。調達資金は京都、東京への進出のほか、民泊サービスの延長線上にある飲食、レジャー関連サービス事業進出に充てる。なお、同社はWeChat公式アカウントやミニプログラムを通じて現地オプショナルツアーを打ち出している。日本の業者数十社と提携を結び、海外からの決済に対応できるようにしたほか、個人旅行者向け業務にも乗り出した。
自分で民泊を予約する旅行者の多くは旅先での予定を決めていない。悠悠美宿は今後、カスタマーサービスに人工知能(AI)を導入し、日本到着後の配車サービスを始めとした個人旅行のモデルプランを紹介することを計画している。利用者が支払う料金からサービス料を徴収するとともに、事業者からも手数料を徴収する考えだ。
このビジネスモデルは集客コストをほとんどかけずに付加価値を生み出すことができる。だが限界も見え隠れする。中国で長年にわたる実績のある個人向け旅行業者がAIとPOI(ポイント・オブ・インタレスト。興味のある地点)のデータを駆使しても、高いコンバージョン率を叩き出すことは難しいようだ。ある個人旅行者向けOTAのデータによれば、AIを導入したことで、個人旅行のコンバージョン率(相談後の成約率)は1%から10%に向上したという。悠悠美宿の年間利用者数は延べ1万人前後にとどまる。モデルプランを推奨することで顧客を獲得するには、コンバージョン率が大きな課題になるだろう。
(翻訳・池田晃子)
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