顔認証最高峰のセンスタイム 創業者が語る「中国発AIとイノベーション」

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8月29日、「2019年世界人工知能大会(以下WAIC 2019)」が上海で開催された。

「センスタイム(商湯科技、SenseTime)」の創業者でもある香港中文大学の湯暁鴎教授が、「人工知能と中国の独創」と題する基調講演を行った。以下に抜粋する。

本日は、中国を源とする独創の話をしたい。

現在、「哪吒之魔童降世(英題:Ne Zha)」という中国のオリジナルアニメ映画が、奇跡とも言える興行成績を挙げている。

この奇跡は複数の要因によるものだが、根本的な要因は2つだと考えている。まず、私たちが映画のチケットを買うようになったことだ。海賊版がほぼなくなり、作者がその労作に見合う収益を上げることができるようになったため、奇跡を起こすだけの力が身についのだ。私たちの言うイノベーションに適した環境とは、オリジナルを尊重するという簡単なことだ。

「哪吒之魔童降世」の奇跡のもう一つの要因は、中国人がもともと独創性の遺伝子を持っていたということだ。

40年前の1979年、上海美術映画製作所が「哪吒鬧海(ナーザの大暴れ)」というアニメ映画を制作した。この製作所は優れた作品を多数生み出し、国内では48本のアニメが69の賞を受賞し、海外では45本のアニメが73の賞を受賞した。

こうした成功は、上海美術映画製作所の独創を重んじる精神の賜物だ。製作所の初代所長の口癖は、「真似をしたくない」だったという。こうした巨匠たちに敬意を払わなければならない。

また、当時はインターネットがなく、したがって海賊版もなかったことに感謝しなければならない。中国が独創性を発揮するのは簡単なことだ。少しでもチャンスを与えればいい。

次に、現在この大会を開催している、この場所の変化をみてみよう。

リモートセンシング画像をみると、1970年代末から90年代初頭まで、この場所には古い家屋や農地しかなかった。

この40年間の道路、建物、緑地、水源の変化をみてみよう。どの指標をみても、今までにないほど近代化されていることがわかる。

これらの情報は、商湯の「SenseEarth AIリモートセンシング画像解析」によって得られたものだ。

私は昨年もWAIC2018で講演し、「AIという業界は存在せず、AI+(AIと他分野を結合すること)しかありえない。AIは従来の産業と協力することで、効率の向上と生産性の強化を実現する」と話した。AIは、すべての産業を活性化させるものだ。

AI+リモートセンシングのほか、AIはすでに衣食住の様々なシーンに浸透してきている。

今日は、特にAI+「人」についてお話ししたい。人工知能の最初の文字は「人」だ。トップクラスの人材がいれば、トップクラスのAIが自ずとできあがる。

この写真をご覧いただきたい。ここに写っている若い女性の名前は戴娟。10数年前、香港中文大学の大学院を卒業し、米国の最高ランクの大学の全額給付奨学金を受給し博士課程に行くことも可能だった。しかし彼女はマイクロソフト社のプロジェクトマネージャーになることを選んだ。新しいものを作りたかったからだ。マイクロソフトチャイナで最高級エンジニアの一人になった彼女は、米国本部に異動となり、アップル社に引き抜かれSiriのプロジェクトマネージャーに就任した。その後中国に戻り商湯に入った。今は商湯で最高の開発者兼プロジェクトマネージャーの一人だ。

戴娟のような人材がいるからこそ、商湯の今がある。しかし、中国のAIを発展させるには、彼女たちだけでは足りない。より大量の人材が必要だ。

戴娟は現在、商湯の教育関連商品を担当し、仲間と「商湯教育」というブランドを打ち立て、AI人材の育成に注力している。昨年、商湯は上海で世界初の高校用AI教材とトレーニングプラットフォームをリリースし、AI実験の授業も多数提供している。

大学でも同様な展開をしている。昨年、上海でWAIC2018を開催したとき、マサチューセッツ工科大、清華大学、上海交通大学など、世界の15の大学と商湯科技が「世界大学人工知能学術連盟」を共同で設立した。今年、この学術連盟は上海西岸において、世界トップクラスのAIに関する学術交流と協力の場を作ることを目標としている。AIには、国際交流と協力が必要だ。

最後に、「独創」をいかにして「根源からのイノベーション」に変えるのかについてお話したい。「源」という文字のさんずい偏が示すように、3つの要点があると考えている。

まず、イノベーションに適した優れた環境だ。知的財産権を保護し、独創性を尊重すること。作品を生み出す人が十分な収入を得られるようにすることだ。

次に、人材を尊重し、人材育成を重視することだ。AI+教育により、長期的な視点で人材を育成することで、初めて独創性を持続させることができる。

最後に、学術の十分な交流だ。交流によって思考の火花が生まれる。AIは従来の産業間の障壁や、産学の障壁を超え、学問の国境を超えなければならない。AIには、みなさんの交流と協力が必要だ。

商湯科技は、中国の「スマートビジョン」AIオープン・イノベーションプラットフォームであり、WAICの戦略的パートナーでもある。8月31日午前、商湯科技は上海万博センターでAIをテーマとするフォーラムを開催する予定だ。内外の専門家やビジネスリーダーが、産学連携の角度から、商湯とAIの技術革新や今後の方向性や、AIがどのように産業を活性化させ、企業に原動力を付与するのかを議論していく。

(トップ画像は商湯科技の提供による)

(翻訳:小六)

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