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中国発アパレル電子商取引(EC)サイトの「SHEIN」は世界で最も注目されるユニコーン企業の1つに成長し、売り上げを伸ばすだけでなく、アパレル産業における地位も着実に向上させている。
SHEINが人気を博した理由はそのファッション性だけでなく、並外れて柔軟なサプライチェーンにもある。アップルやファーウェイ(華為技術)がIT業界のスタンダードをつくり出しているように、SHEINは技術革新によってアパレル業界のルールメーカーとなりつつあり、中国国内の産業チェーンの進化を後押ししている。
並外れて柔軟なサプライチェーン
広東省広州市および周辺の名高いアパレル産業ベルトは名実ともに越境ECの都だが、ここ数年はグローバルサプライチェーンにおける役割が変わり始めた。この地域はかつて世界の工場の中心地として知られていたが、そのビジネスは産業の収益性を示すスマイルカーブの底部に位置しており、研究開発やデザイン、ブランド運営、マーケティングといった戦略的な分野に関わることはなかった。
SHEINブランドの誕生はここに変化をもたらした。
SHEINのコア・コンピタンスと言えば「小ロット生産、短期納品」の柔軟なサプライチェーンが挙げられる。自社運営ブランドとしてオンデマンドで生産する機敏なサプライチェーンモデルは、実需を基に売り上げを予測すると同時に、生産量をコントロールして過剰生産を減らすことができる。このビジネスモデルではファッションの流行をリアルタイムで分析、フォローしながら、全てのSKU(最小管理単位)において100~200個という非常に小さなロットで発注を開始し、販売動向が良ければ即座に追加発注をする一方、販売量が想定に達しなければ生産を中止する。
この方式なら、従来のアパレル業界では30%に達する在庫率を1ケタにまで減らせるという。
SHEINはオンラインのデジタルツールで、各デザインの生産と品質の要件や基準をリアルタイムで把握し、製品の品質を管理する。業界関係者の多くはこれを革命的な変化だと見なす。フロントエンドの流行からデザイン、開発、生産、倉庫、物流などに至るチェーン全体をIT化、オンライン化することで、効率を向上させている。
かつて珠江デルタ地域にあったアパレル工場のほとんどは「手作り工房」の状態で、システム化やインテリジェント化は進んでおらず、作業の大部分を手作業に頼っていた。エクセルの手入力や手作業のメール送信などで生産を調整するのは、効率が低く競争力も劣る。しかし、SHEINが関与したことによって、このような工場も全体がデジタル化された新しいスタイルの工場に切り替わったという。
SHEINはこの柔軟なオンデマンド供給モデルによって無駄を省き、効率化することで販売価格を引き下げ、アパレル製品のファッション性とコストパフォーマンスを両立させたため、海外で多くの消費者に好まれるようになった。
現在、世界のオンラインアパレルプラットフォームの中でもSHEINはトップクラスのアクセス数を誇る。市場調査会社data.aiによると、SHEINは2023年1~9月のダウンロード数で世界トップとなっており、22年もダウンロード数が世界最多のショッピングアプリだった。
米アップルが電子機器の分野で常に業界標準を確立し、業界全体の進歩をリードしてきたように、SHEINは新たなアパレル産業のルールを構築している。市場調査のカンターが発表した2023年の ブランド評価ランキング「Kantar BrandZ Most Valuable Global Brands」ではアップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾンなどのトップブランドがハイレベルな争いを繰り広げ、アップルがトップを保持する中、SHEINもランクインした。
中国は13年連続で世界の工場という地位を維持し、海外進出する小売企業にとって強力なサプライチェーンを提供している。SHEINに代表される中国のアパレル企業は、中国の製造業を従来の単純な生産作業から研究開発、デザイン、マーケティング、サプライチェーン革新などの分野へと徐々に広げ、世界規模で新たな成長を模索している。
(翻訳・大谷晶洋)
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