AI顔交換で中国発ショートドラマを海外向けにリメイク。制作コスト削減で世界展開を加速

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中国で2023年11月に配信されたショートドラマが、人工知能(AI)による顔交換技術の巧みさで大きな話題を呼んだ。

中国人俳優の顔が欧米人風の顔に入れ替わっているにもかかわらず、表情も動きも極めて自然だったのだ。このショートドラマを見た業界関係者たちからは、どよめきの声が上がった。中国で制作したショートドラマを海外向けに翻訳し、AI顔交換技術と組み合わせれば、低コストなリメイクが可能なうえ、視覚的なローカライズがさらに一歩進む可能性がある。

「Heygen」のAI顔交換技術を用いたショートドラマに驚きの声(「X」ユーザーの投稿)

話題のショートドラマは、AI動画制作ツールを提供する「Heygen」の技術を利用して制作された。同社のAI顔交換技術を使えば瞬く間に俳優の顔を入れ替えることができ、口元の動きも外国語のセリフに合わせられるという。

中国では数多くのショートドラマが制作されているが、業界大手でも海外向けのショートドラマを現地制作する能力は不十分で、1か月に4〜5本が限界とされる。しかし、AI顔交換技術を活用すれば、中国で制作したショートドラマを迅速に「輸出」できるようになる。一見すると完璧な解決策のようだが、AI顔交換技術を提供する複数の企業に取材した結果、やや厳しい現実が見えてきた。

まず、AI顔交換技術のコストは低くない。現在のところ、ショート動画の登場人物の顔をAI技術で交換する費用は5万〜10万元(約100万〜200万円)またはそれ以上となっている。口元の動きを翻訳済みの外国語に合わせるには追加費用が求められるため、全体では20万元(約400万円)ほどが必要になる。しかし、資金投入に見合う収入が得られるかは分からない。海外向けショート動画を提供する企業は、費用対効果の点で懸念を示す。

次に、俳優の顔を入れ替えても、海外の視聴者に受け入れられるとは限らない。ショートドラマでは、ビジュアル面で寄せる以上に、文化的背景や取り扱うテーマが重要になる。世界共通のテーマならば別だが、海外になじまないストーリーであれば、AI顔交換も解決策にはならない。将来的な収益化の点でも、費用対効果を検討する必要があるだろう。

中国で続出する芸能人の不祥事によるお蔵入り問題、AIで顔交換して別人が熱演

海外でショートドラマを撮影・制作するには多額の費用が必要になる。各社とも米国を避け、ルーマニアなど比較的経済規模の小さい欧州の国の映像制作会社に業務を委託し、コスト削減を図ってきた。

取材を進めるなかで、AI顔交換技術を利用し、費用対効果をより大きく引き上げる方法があることが分かった。海外向けの脚本をもとに中国人俳優が演じるショートドラマを中国で撮影し、オリジナルを国内向けに、俳優の顔を外国人風に入れ替えたバージョンを海外向けに配信するというものだ。AI顔交換技術のコストは、海外での制作費に比べれば安い。しかも、この方法ならば文化的背景やストーリーに対する違和感も払拭できる。

AI顔交換技術を提供する「円夢空間」によると、海外でショートドラマを制作する費用は15万〜25万ドル(約2200万〜3700万円)かかるが、国内で制作すれば制作費50万元(約1000万円)にAI顔交換の費用20万元を加えても70万元(約1400万円)で済み、大幅なコスト削減が可能になるという。

1話3分で楽しめるショートドラマが熱い。中国発の人気アプリは月間190万DL、日本発「BUMP」も勢い

*2024年1月21日のレート(1元=約21円、1ドル=約148円)で計算しています。

原文:白鲸出海(WeChat公式ID:baijingapp)

(翻訳・田村広子)

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