中国で続出する芸能人の不祥事によるお蔵入り問題、AIで顔交換して別人が熱演

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中国で続出する芸能人の不祥事によるお蔵入り問題、AIで顔交換して別人が熱演

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ディープフェイクなどAIによる顔交換技術が活用され、スキャンダルを起こした俳優の「顔だけ」が異なる人物と巧妙に入れ替わり、熱演する事例が中国で増加している。

最近では有名ないぶし銀の男性俳優・杜旭東氏が不祥事を起こし、出演していたドラマ「似火流年」の中で脇役を演じる氏の顔はAIを活用して別人に変えられ、氏は作品から消された。

昨今、中国ではミャンマーをはじめ東南アジア諸国を拠点とした中国人の特殊詐欺が問題視され話題になり、その風評被害で中国人の東南アジア旅行の足が鈍るほどになっている。中国人がナーバスになる原因となったミャンマーを拠点とする特殊詐欺グループのトップに杜旭東氏がお祝いのビデオメッセージを送っていたことが判明し、瞬く間にネットで炎上案件となり、出演した作品の顔を変更する事態へと発展した。

芸能人や有名人のスキャンダルにより、出演したバラエティ番組やドラマでその顔をAIによって別人に変えられることはこれが初めてではない。顔へのモザイク処理を含めればさらに前例は多い。

例えば2020年に放映された「三千鴉殺」というドラマでは、出演した若き女優・劉露氏が駅でトラブルを起こし拘束され、顔がAIにより別人にかわった。だが色合いやサイズがおかしく、ときに首長族かのように首が不自然に長く、その画像処理の酷さも話題になった。また2019年に公開された「光栄時代」では、演じる男優・趙立新氏は不適切な発言が原因で顔が別人になるも、入れ替えた顔と場面の光源がおかしかったり、歩いているシーンで首から上が全く動かず、その違和感がネットでシェアされツッコミの対象になった。

顔交換で不自然に首が長い演者(ネットより)

一方、個人が作成した顔変換の作品も中国の動画投稿サイトに多く出回っている。テクノロジーが好きな人が集うビリビリ動画には、たとえば2019年に登場した顔変換アプリ「ZAO」を使った実験動画などが多数アップされた。ZAOが話題になるや中国政府はこうした動画作成について中国民法典の編さんに動いた。

ディープフェイクアプリ「ZAO」の炎上が示す顔認証技術の利点と課題

昔からAIによる顔交換はあるが、冒頭で紹介した「似火流年」の場合、クオリティが高いのは明らかで、「明らかに見た目がおかしい」「アンバランスだ」「雑だ」といった意見はあまり見られなかった。つまり以前のスキャンダル対応よりもAIが進歩してより自然に近づいたといえる。一方で杜旭東氏は実績多数の名脇役とあって、どんなに顔を変えても「演者の動きは杜旭東氏そのものだ」という。今後どこまでAIが演技能力も含め画面上の人を替えられるかが焦点のひとつになっていくだろう。

ところで杜旭東氏はお祝いのビデオメッセージを犯罪組織に送ったことで炎上した。この手のビデオメッセージの類もAIで作成されるようになったことも問題視されている。淘宝(タオバオ)などのECサイトでは、芸能人や人気インフルエンサーをはじめ様々なタイプの有名人や美女によるお祝いメッセージ動画の作成サービスを販売するショップがあり、それも仕事として行っている著名人は少なくない(当然有名であれば相応の価格となる)。お祝い動画は安いものでは無名の人が演じる数十元(数百〜数千円)といったものから、有名人のものでは数万元(数十万円〜数百万円)や、それ以上の価格のものもある。

さらに業者の中にはAIを活用し、あたかも芸能人が本当に撮ったかのような動画を生成して販売する業者も出てきている。その中には非公認のものもあるが、芸能人本人公認の上で生成しているものもある。非公認にしろ公認にしろ、現在確認できるAI動画では音声と画像の間に微妙なずれがあったり、顔や口の形に違和感が残る。

有名人の「顔」70万円で販売。ディープフェイク技術で金儲け、中国で事例報告

AIの進歩で今後はさらに自然な動画が増えていく一方、本人非公認のAI作成映像のトラブルも増えそうだ。不祥事対応も含め芸能人とAIはより密接になっていくだろう。

AIがビデオ通話で「友達」になりすまし。会社社長が8500万円の振り込め詐欺被害:中国

(作者:山谷剛史)

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