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自動車業界では自動運転が大きなトレンドとなっており、多くの企業が先を争って開発を進めている。成功をつかむための鍵となるのが、刻々と変化する交通状況への対応力だ。中国では、シニアカーや電動バイクなどさまざまな乗り物が路上にあふれ、予測できない動きも多く、道路環境は複雑さを極めている。このような状況をできる限り再現し、シミュレーションを繰り返すことが自動運転の実現には欠かせない。深層学習モデル「Transformer」の登場や生成AI技術の進歩により、複雑な交通状況を再現しシミュレーションできる可能性が高まった。
自動運転用シミュレーションソフトを開発する「昇啓科技(RisenLighten)」はこのほど、追加のエンジェルラウンドで華山資本(WestSummit Capital)から資金を調達した。2022年設立の昇啓科技は、AIアルゴリズムを取り入れたシミュレーションの開発に注力しており、顧客がAI活用スキルを高めて整ったデータチェーンを構築できるようサポートしている。
自動運転シミュレーションに関わる4つの主力サービス
自動運転のシミュレーションにおけるさまざまなニーズを満たせるよう、昇啓科技では自動運転シミュレーションプラットフォーム、地図編集プラットフォーム、シナリオライブラリ編集プラットフォーム、AI訓練プラットフォームの4つを展開する。
同社が最初に手がけた主力の自動運転シミュレーションプラットフォームはすでにサービスを開始しており、フルスタックのシミュレーション機能を提供し、自動運転走行テストのためのリアルで効率的な仮想環境の構築を可能とする。プラットフォームはマッピングや交通流、検知・決定・制御モデル、自動車運動力学、V2X(Vehicle to Everything)通信、二次開発インターフェース、性能評価などの機能を備え、自動運転技術の研究・開発をサポートする。
2024年1~3月期に完成した地図編集プラットフォームは、顧客が地図データを効率的に作成・修正するのを支援し、地図の編集プロセスを簡略化する。
シナリオライブラリ編集プラットフォームは2024年4~6月期のリリースを予定しており、データマイニングやシナリオ生成を通じて、自動運転走行テストのシナリオライブラリを充実させることを目的としている。ユーザー定義のシナリオ作成も可能で、自動運転システムのテストカバレッジや開発効率を効果的に高めることができる。
2024年10月までに稼働を開始する予定のAI訓練プラットフォームは、自動運転のエンドツーエンドモデルの訓練に重点を置き、脳型学習やAIモデルを活用して自動運転の高度化を支える。
昇啓科技の孫琪CEOによると、自動運転の実現には演算能力とデータ、アルゴリズムの3つを効率よく統合することが欠かせないという。
演算能力の向上については、CPUやGPUなどを購入することで簡単に解決できる。データに関しては、自動車メーカーが販売済みの車両から十分なデータを収集できるのに対し、スタートアップ企業にとってはデータの収集が大きな課題となる。アルゴリズムは、演算能力とデータを強化するのもアルゴリズムの質を高める最も重要な要素だが、従来型の自動車メーカーはこのアルゴリズムの分野が弱い。
昇啓科技はシミュレーションツールやAIを活用することで、自動車メーカーが整ったデータチェーンを確立できるようにしている。データチェーンには、データの収集やアップロード、処理、強化に加え、アルゴリズムの訓練、モデルの最適化などが含まれるが、同社はシミュレーション技術を使ったデータの強化とアルゴリズムの訓練に特化して、自動運転システム全体のブラッシュアップを支えている。
同社は、自動運転技術の開発企業にシミュレーション技術やデータ処理ツールなどを提供するティア2(車両メーカーの二次請け)もしくはティア1.5に位置付けられるため、ボッシュやファーウェイなど自動運転機能を手がけるティア1のサプライヤーと直接競合することはない。目下、自動車メーカーや政府、大型法人、科学教育機関などの提携先にサービスを提供している。
(翻訳・畠中裕子)
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