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日本のイタリア料理店チェーンの「サイゼリヤ」が中国人消費者の胃袋をつかんでいる。広東省でも大規模な店舗拡大を計画し、新工場を建設するなど、意欲的な取り組みを見せる。広州薩莉亜餐飲(広州サイゼリヤ)の宮本徳明総経理に話を聞いた。
2003年に上海市に1号店をオープンし、20年余りで中国本土の店舗を500店以上に広げたサイゼリヤ。「中国法人はグループ全体の中でとても重要な法人になっており、サイゼリヤは中国市場の将来の発展に注目している」と宮本氏は語る。24年8月期の連結営業利益148億6300万円のうち、中国子会社の営業利益は合計83億5400万円で6割近くを占めた。
サイゼリヤは現在、中国本土で北京と上海、広州の3カ所に法人を構える。法人ごとにメニューが違い、宮本氏によると、広州サイゼリヤの特徴は「素材のもともとの味を生かしたあっさりした味」。メニューは年に3回改定しており、総数は100種を超える。食材の仕入れ先は約10カ国に及ぶ。
メニューの開発に当たっては「イタリアの食材をイタリア式に調理する方法、中国の食材をイタリア式に調理する方法、イタリアの食材を中国式に味付けする方法」の三つが原則。中でも、中国にたくさんある良い素材をイタリア式に調理し、中国人の口に合う料理として提供することを特に重視しているという。
11月から打ち出した新メニューにも、ハクサイの一種「サイシン」、黒竜江省の特産米「五常大米」、白身魚の「キグチ」など、中国人におなじみの食材を使った品々が並ぶ。調理にサラダ油でなく発酵バターを使うなどイタリア風の味付けで、訪れた客からは「ひと味違う」と評判を呼んでいる。
宮本氏によると、コストや品質の管理もサイゼリヤの成功につながった。世界1500店以上というスケールメリットを生かし、原料をより低価格で調達。店舗の内装や食材の仕込みを統一、店員のトレーニングもマニュアル化し、誰がどの店で作っても同じ品質を提供できるようにした。1人当たり平均消費額は41元(1元=約21円)と割安で、コストパフォーマンスの高さが人気となっている。
サイゼリヤは今後20年で中国本土に7000~1万店を出店するとの壮大な目標を打ち出す。宮本氏によると、広州サイゼリヤは、今後5年で広東省に400~500店舗のオープンを計画。広州や深圳などの大都市だけでなく、消費の潜在力が大きい地方市場への布石も進める。高まるニーズに応えるため、今年は広州市で40億円を投じ、敷地1万2000平方メートルの食品工場の建設を始めた。26年に稼働し、中国市場で用いるソースやピザ生地などを生産する。
中国市場は大きいが、飲食業の競争は非常に激しい。広東省飲食サービス業協会の程鋼秘書長は、中国飲食市場に乗り出した日本企業を含む外資企業は、市場における初期の「自然淘汰」をすでに乗り越え、衝突や融合を繰り返しながら、より現地に合った洗練されたグルメ体験で消費者を引き付けているとの認識を示した。
(新華社広州)
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