安全性や効率性で勝負。中国スタートアップの「高性能ヒューズ」、EVや蓄電システムで活躍

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電気回路の過負荷や漏電による事故を防ぐヒューズを開発する中国企業「超熔科技(Chauron Technology)」がこのほど、シリーズBで仁発新能投資から数千万元(数億円超)を調達した。資金は市場開拓、生産能力の拡張、瞬間遮断器(Pyrofuse)などハイエンド製品の開発に充てられる。

超熔科技は2018年に設立され、電力システムに使用される高品質なヒューズの開発に注力しており、製品は電気自動車(EV)や充電スタンド、風力・太陽光発電用蓄電システム、電動船舶の分野で活用されている。展開する数十種類のシリーズには数百種類の仕様があり、新エネルギーの高・低圧電源や配電システム、制御システム、電力設備などに向けた回路保護ソリューションを提供している。

電力システムの安全性と安定性を保つ回路保護装置は、さまざまな電気・電子設備の中で重要な役割を担っている。ヒューズはその一種で、過負荷や短絡(ショート)により電流が異常に大きくなって閾値を超えると、速やかに回路を遮断し、設備の故障や火災などの事故を防ぐ。

EVなどの新エネルギー車の分野でも、ヒューズは電池パックやモーターコントローラー、車載充電器などの主要部品を保護する極めて重要な役割を担っている。過負荷や短絡が発生した場合に素早く電流を遮断し、車両電気システムの安全性を確保する。また蓄電システムでも、回路の故障によって蓄電池やインバータ、コンバイナーボックスなどが壊れることを防ぎ、システムの安定した稼働とエネルギー管理を支える。

新エネルギー技術の急速な進歩に伴い、ヒューズに求められる性能はますます高くなっており、迅速に反応するだけでなく、複雑な環境でも安定して作動することが求められている。

市場調査会社MarketsandMarketsによると、2020年の世界の高圧ヒューズ市場規模は16億ドル(約2500億円)だった。EVやスマートグリッド、太陽光発電などの分野で増大する需要によって、25年には22億ドル(約3500億円)と、年平均5.8%ずつ拡大する見込みだ。

世界の回路保護装置市場では米国のリテルヒューズ(Littelfuse)やイートン(Eaton)、スイス・シュルター(Schurter)、仏メルセン(Mersen)といったヒューズ大手が80%以上のシェアを握っている。

しかし、従来のヒューズにはいくつかの問題点がある。まず、反応時間が遅いため電流の急激な変化に対応し切れず、回路を効果的に守れない恐れがある。また、使用中に多くの熱を発するため、システムのエネルギー効率を低下させるだけでなく、設備の耐用年数にも影響を及ぼす。さらに電圧や電流が大きなシステムではヒューズに多くのコストがかかる。

超熔科技は、これらを改善する革新的な製品を開発した。戴超CEOは、先進技術を採用した同社の瞬間遮断器は、反応時間が従来のヒューズよりもはるかに優れており、電流が異常な大きさになった瞬間(1ミリ秒以内)に回路を遮断できるため、回路の安全性を大きく向上させると説明した。また、消費電力を抑える設計で使用時の発熱を減らし、システムのエネルギー効率向上と設備の耐用年数延伸にも寄与するという。

超熔科技の瞬間遮断器自動生産ライン

また、瞬間遮断器に独自の消弧方式と回路設計を、従来型のヒューズ製品に革新的な溶断ソリューションとモジュール化設計を採用したことで、材料コストの削減と生産効率の向上を実現した。

小型の電動工具から大規模な蓄電システムまでさまざまなニーズに対応するため、「SPF-1」から「SPF-6」まで複数のシリーズを展開している。互換性と汎用性を考慮しており、既存の回路保護システムにスムーズに導入できる。例えば、充電スタンドやEV、蓄電システム向けの製品は従来のヒューズとサイズや形が同じ設計になっているため、ヒューズの取り換えやアップグレードがしやすい。

超熔科技の瞬間遮断器シリーズ

同社は、瞬間遮断器や高性能な直流回路用ヒューズのほか、オーダーメイドにも対応している。例えばワイヤーハーネス式ヒューズは、電動バイクや電動工具など向けに設計された革新的な製品で、ユーザーに経済的で便利な回路保護ソリューションの選択肢を提供している。

顧客を見ると、新エネルギー車の分野では、車載電池メーカーの寧徳時代(CATL)や国軒高科(Gotion)と提携し、上海汽車(SAIC)や奇瑞(Chery)、吉利(Geely)などの自動車メーカーに製品を供給している。風力・太陽光発電用蓄電システムの分野では、陽光電源(Sungrow)や寧徳時代にコンバータやコンバイナーボックス、電池パック、高圧キャビネット、高圧カットアウト(PCS)などの回路保護ソリューションも提供している。また、星星充電(Star Charge)や許継集団(XJ Group)に代表される数十社の電力ソリューション企業と提携し、充電スタンドの安定した運営を支えている。

海外事業では欧州や中東、東南アジア市場に製品を輸出し、自動車部品の米ボルグワーナー(BorgWarner)やインド自動車メーカーのタタ・モーターズ(TATA)など複数の海外大手に製品を供給している。

*1元=約21円、1ドル=約157円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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