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新エネルギー車(NEV)の普及拡大に伴い、中国自動車市場の競争が激しさを増している。2025年の販売(納車)台数について、多くの新興NEVメーカーが楽観的な予測を示す一方で、高級車ブランドのメルセデス・ベンツやBMW、アウディなどは販売予測の下方修正を迫られているという。
新興勢トップの理想汽車(Li Auto)は、2025年の販売台数が70万台前後になるとの見通しを明らかにした。24年1〜11月の累計販売台数は44万1900台となっており、年間販売台数は50万台を突破する可能性が高い。
蔚来汽車(NIO)の李斌CEOはこのほど、2025年に販売台数を倍増させると宣言した。NIOブランドと傘下の低価格帯ブランド「楽道(ONVO)」の24年1〜11月の累計販売台数は計20万台だった。販促キャンペーンの効果もあり、NIOの年間販売台数は22万台を上回る見込みだ。この販売実績から見積もると、NIOの25年の販売目標は44万台で、うちONVOブランドが約24万台を占めるとみられる。
注目を集めるスマートフォン大手・小米集団(シャオミ)傘下の小米汽車(Xiaomi Auto)は、2025年の販売台数が36万台になるとの予測を示した。24年3月に発売した初の純電気自動車(BEV)「SU7」は、月間販売台数を着実に伸ばしており、年間販売目標13万台の達成が確実視される。
このほかの新興NEVメーカーでは、小鵬汽車(Xpeng Motors)は2024年1〜11月の累計販売台数が15万台を超えており、25年の販売予測をひとまず24年の2倍近くの35万台に据えたという。零跑汽車(Leap Motor)の25年の販売予測は50万台で、実現すれば2年連続の倍増達成となる。中国通信機器大手ファーウェイが主導する自動車技術アライアンス「鴻蒙智行(HIMA)」は、主力ブランド「問界(AITO)」の販売が好調な上、25年は10車種以上の発売を予定しているため、年間販売台数で理想汽車に並ぶ可能性がある。
NEV最大手の比亜迪(BYD)は明確な目標を明らかにしていないが、市場予測では2025年の販売台数が550万台前後となり、中国NEV市場の3分の1近くを占めるとみられる。24年1〜11月の累計販売台数は約376万台で、年間販売台数は23年実績の302万台を120万台上回り、420万台を超える見込みだ。
海外高級車ブランドも新技術採用で失地回復狙う
楽観的な販売予測を示すNEVメーカーと対照的に、高級車ブランドのメルセデス・ベンツとBMWは2025年の販売予測を10〜15%下方修正するという。
中国の高級車市場は海外ブランドの寡占状態だったが、その構図が変わりつつある。メルセデス・ベンツとアウディの2024年1〜9月の中国販売台数は、いずれも前年比で10%以上減少した。キャデラックやレクサス、ボルボといった2番手クラスの高級車ブランドも振るわない。
そんな中、国産ブランドAITOの「M9」が、販売価格50万元(約1000万円)以上の高級車カテゴリーで販売台数トップに躍り出た。これが海外ブランドに大きなショックを与えたのは言うまでもない。高級車市場では、もはやブランド力だけで販売台数を確保することはできなくなった。高級車のユーザーも新たなテクノロジーを求めている。
この状況を受け、海外の高級車ブランドも積極的に方針転換を図っている。アウディは2025年に投入する新型車の「Q5L」と「A5L」にファーウェイと共同開発した自動運転機能を搭載する。メルセデス・ベンツは次世代「CLA」で、最新の車載システムのほか、中国の自動運転企業と共同開発した自動運転機能を打ち出す。
中国での現地生産も進む。BMWは2026年から、遼寧省の瀋陽工場で次世代シリーズの生産を始める。次世代シリーズには、新たなデザイン言語を用いた外観とコックピットシステムを搭載する。メルセデス・ベンツは26年、BEV用プラットフォームを採用した「Cクラス」「GLC」「Eクラス」を打ち出すほか、大型SUV(多目的スポーツ車)「GLE」の中国生産も開始するという。
2025年の中国自動車市場はどうなる
中国政府が2024年4月末に打ち出したNEVへの買い替え補助金政策の効果で、1〜10月のNEV販売台数は前年同期比33%増の977万台に急拡大した。しかし、乗用車については1.5%増と明らかな伸び悩みを示した。25年は買い替え補助金が半減される可能性もあり、NEV購入ブームはいったん落ち着くとみられる。
国際情勢の不確実性も、中国自動車市場に影響を及ぼすだろう。トランプ次期大統領の就任後、米国は中国に対して関税引き上げや産業規制を進めるとみられるため、中国経済の不確実性が増す可能性もある。欧州連合(EU)は、中国製BEVが中国政府から不当な補助金を受けているとして、相殺関税の導入を検討している。
海外の高級車ブランドは、成長速度では中国のNEVメーカーに負けているかもしれないが、これまでに蓄積してきた自動車製造技術やブランド力は極めて高い。しかも、中国の新興NEVメーカーのほとんどは赤字経営に陥っている。一方、メルセデス・ベンツの2024年7〜9月期決算によると、フリーキャッシュフロー(純現金収支)は23億9000万ユーロ(約3900億円)、純運転資本は287億3000万ユーロ(約4兆7000億円)に上る。海外高級車ブランドの潤沢な資産やリスク管理能力も無視できない。
2025年は、中国自動車市場をめぐる競争がさらに激化するだろう。完成車メーカーは新型車と技術力で競い合い、価格戦争はサプライチェーンにも波及していくと予想される。
*1元=約21円、1ユーロ=約163円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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