中国EV「小鵬汽車」、独自AIチップを4‐6月期に量産か NVIDIA依存脱却へ

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中国の電気自動車(EV)メーカー「小鵬汽車(Xpeng Motors)」は、自社開発した自動運転向けAIチップ「図霊(TURING)」を2025年4-6月期に量産開始し、新型車に初めて搭載する見通しであることがわかった。また、25年下半期には自動運転レベル3(L3)の商用化を予定しており、国産チップによる開発内製化で差別化を図る構えだ。

図霊チップは2020年に開発がスタートし、24年8月にテープアウト(設計完了)した。AI処理とエンドツーエンド(E2E)モデルに特化したチップで、演算能力は700TOPSに迫り、米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の最新の高性能車載チップ「Thor」に匹敵する水準とされる。関係者によると、このチップは小鵬汽車が自社開発した2つのNPU(ニューラルネットワークプロセッサ)を統合し、ニューラルネットワークに特化したアーキテクチャを採用しているという。高い演算能力を持つ汎用型車載チップに比べ演算能力の活用率が20%向上し、最高で300億パラメーターのAIモデルを実行することができる。

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小鵬汽車は将来的に、このチップを自動車だけでなく、AIロボットや空飛ぶクルマにも搭載することを計画している。

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自動運転技術が急速に進化するのに伴い、高い演算能力を持つAIチップへの需要が拡大している。NVIDIAのThorに大きな期待が寄せられていたが、量産には課題が残り、現在市場に供給されているのは基本的に750TOPSのものだ。関係者によると、さらにハードとソフトにも欠陥があるという。これまでに小鵬汽車やBYD(比亜迪)、極氪(ZEEKR)、理想汽車(Li Auto)がThorの採用を公表しているが、こうした動きにも何らかの影響があるだろう。

激しい競争が繰り広げられている現在の自動車市場において、チップが予定通り供給されずに新車のリリースを延期するなら、メーカーにとってシェアを獲得する重要なタイミングを逸してしまうことになる。

こうした中で、蔚来汽車(NIO)と理想汽車も積極的にチップの自社開発を進めている。NIOの5㎚(ナノメートル)プロセスの自動運転用チップ「神璣NX9031」は現在、定価78万8000元(約1600万円)の高級車「ET9」の納車に合わせてすでに量産体制に入っている。理想汽車が開発するチップも同様にテープアウトに近づいている。

25年後半、自動運転レベル3を実現へ

小鵬汽車は2024年5月、E2E自動運転モデルをリリースした。しかし同社の自動運転部責任者である李力耘氏は、25年4月14日に開催されたAI技術交流会で、車両側の演算能力に頼るだけでは、モデルの大きさやデータ処理能力に限界があることを認めた。小鵬汽車はクラウド上で超大型の基盤モデルを訓練し、そこから知識蒸留により小型モデルを作成して、モデルの自動運転能力を車両側に搭載することにした。

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同時に「小鵬世界基盤モデル」の構想を明らかにした。社内では現在720億パラメーターの超大型の自動運転モデルの開発が進められているという。このモデルは思考連鎖(CoT)能力を備え、現実世界を十分に理解したうえで人間と同じように複雑な常識推論を実行し、その結果を行動信号に変換して現実世界とコミュニケーションをとる仕組みだ。

同社は、自動運転分野ではスケーリング則が依然として有効だと考え、「パラメーターが大きくなればなるほどモデルの能力は高くなり、サイズが同じモデルなら訓練データが多いほど性能が向上する」と指摘した。

小鵬汽車は、2025年後半に自動運転レベル3の商用化にこぎ着け、26年に自動運転レベル4の実現に向けた取り組みも強化していくとしている。

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*1元=約20円で計算しています

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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