1800万円の聖闘士星矢、即完売──中国ジュエリーブランドが仕掛ける「純金×グッズ」戦略

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1800万円の聖闘士星矢、即完売──中国ジュエリーブランドが仕掛ける「純金×グッズ」戦略

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中国の老舗宝飾品メーカー「老鳳祥 」は今年5月、日本の人気アニメ「聖闘士星矢」とコラボした商品を発売し、大きな注目を集めた。

発売開始からわずか2週間で、シリーズ商品の売上高は1億元(約20億円)に迫った。なかでも最も話題を呼んだのは、666グラムの金で作られた限定30体のフィギュアだ。この88万元(約1800万円)の純金製フィギュアは発売後すぐに完売し、転売価格は100万元(約2000万円)に跳ね上がっているという。

中国の若年層にとって、「純金」と「グッズ」はいずれも感情に刺さり、コレクション欲をそそるキーワードだ。この2つが組み合わさったことで、これまでにない新たな消費ブームが生まれた。

若者に響く「情緒的価値」、中国で盛り上がる「グッズ経済」の背景

老鳳祥のみならず、この数年で人気IPとのコラボを加速する宝飾品ブランドが増えている。例えば「周大福(Chow Tai Fook)」が日本の大人気漫画「ちいかわ」とコラボしたブレスレットやネックレス、ストラップなどは、発売当日に何種類もが品切れとなったほか、ディズニーシリーズの累計販売数は200万点を超えた。「潮宏基(CHJ Jewellery)」も、サンリオやドラえもん、クレヨンしんちゃんなどとのコラボを展開している。

徹夜で限定グッズを買い占め、日本の「ちいかわ」が中国で人気爆発の理由

若い消費者のあいだでは、好きなもののためにお金やエネルギーを惜しまないグッズ消費が盛んだ。あるデータによると、中国の「グッズ経済」市場規模は2024年に1689億元(約3兆4000億円)に達し、前年より40.63%拡大した。これまでは安定資産として購入されてきた純金だが、人気IPとのコラボでは感情の発露や推し文化に共鳴する人とのつながりが重視される。

中国、アニメ・ゲームのグッズショップが急増もすぐにバブル崩壊した理由とは

金の価格は上昇傾向が続いている。大手ブランドでは金価格が1グラム当たり900~1000元(約1万8000~2万円)前後で推移しており、下落することはないものの、業界全体でみると利益は決して大きくはない。中国では金の粗利率はわずか1.3%にとどまり、業界内で高水準を保っている周大福や周大生(Chow Tai Seng Jewellery)などでも6~10%程度にしかならない。

これに比べ、IPとのコラボ商品ではより高額なプレミア価格が期待できる。例えば、老鳳祥の「聖闘士星矢」コラボフィギュアの金価格は1グラム当たり1300元(約2万6000円)を超え、同時期の金価格より6割高い。周大福の「ちいかわ」コラボのチャームは、価格の40%が加工費だ。それでも若い消費者はためらうことなく購入する。例えば、周大福が「鬼滅の刃」とコラボした際に、発売当月にSNSへの画像投稿イベントを実施すると、オンラインでの反応や投稿は8倍以上増え、実店舗の来店客数は6倍になった。

中国SNS・小紅書(RED)の分析によると、こうした高額な純金フィギュアに関心を持つ消費者は、キャラクターの熱心なファン、高額商品のコレクター兼投資家、一般的な投資目的の層に大別できる。こうした人々は、金と人気IPが組み合わさっていっそう価値が増すと考えている。金の価格上昇でベースとなる価値が高まり、IP人気が高まればさらなるプレミアが付く。純金フィギュアは有望な投資対象と言えるかもしれない。

666グラムの純金フィギュアは話題を呼んだものの、こうした超高額商品はやはり少数派だ。多くのブランドは、小ぶりで手ごろな価格の商品を売り出し、Z世代のニーズを的確にとらえている。例えば、老鳳祥はソーシャルゲーム「Eggy Party(エギーパーティー)」とコラボし、1枚につき0.1グラムの金を使った純金カードを258元(約5000円)で発売した。潮宏基実業が「ドラえもん」とコラボしたスマホ用シールは、1枚につき金は0.2グラムしか使われていないが、価格は280元(約5600円)だ。

こうした商品に使用されている金の量は極めて少ないものの、好調な売れ行きを見せており、その原動力となっているのは感情的な価値や社会的つながりの価値だ。若者たちにとっては、金投資への入り口となるだけでなく、SNSで映えるコミュニケーション用のツールにもなっている。

作者:道総有理(WeChat公式ID:daotmt)

*1元=約20円で計算しています

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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