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2025年に入り、AIを搭載したスマートグラス市場が活況を呈している。米メタの「Ray-Ban Display」が世界的な注目を集める中、中国でもアリババグループが「Quark AI Glasses」を発表したほか、Rokid(霊伴科技)をはじめとするスタートアップも相次いで新製品を投入。米アップルも年内に参入するとの観測が飛び交うなど、主導権争いが激化している。
このスマートグラス市場の行方を握る鍵が、本体コストの4割以上を占める光学モジュールだとみられる。解像度や明るさ、表示の均一性といった使い心地を左右する中核部品であり、スマートグラスが一部のマニア層から一般消費者へと普及するかどうかを決める重要なパーツでもある。
こうしたなか、光学モジュールを手がける「至格科技(Greatar)」が、回折光導波路技術と量産体制を武器に、デバイスメーカーを支える「隠れたチャンピオン」として存在感を強めている。
目下、スマートグラス向けの光学システムは、大画面表示に強いBirdbath方式から光導波路方式へと移行しつつある。光導波路技術はデバイスを薄型化・小型化できるため、一般消費者向け製品の普及につながる光学システムとして期待されている。
2019年に設立された至格科技は、中国で最も早く回折光導波路の全自動量産に成功した企業だ。今年は2度にわたって総額1億元(約20億円)余りを調達し、小米(シャオミ)やOPPO、中芯聚源(China Fortune-Tech Capital)といった大手企業が継続的に出資するなど、業界でも一目置かれる存在となっている。
AR(拡張現実)・VR(仮想現実)デバイスはここ数年にわたり進化を続けてきたが、性能や使い心地には限界があり、決定的な普及には至らなかった。至格科技を創業した孟祥峰氏は「AIのおかげで業界は救われた」と語る。スマートグラスにAIを搭載することで、その場で質問に答えたり、撮影したものを識別したりできるようになり、実用性が一気に高まったからだ。さらに、メタが人気サングラスブランドRay-BanとコラボしたRay-Ban Displayを発表してからは、「ファッション性を備えたアクセサリー」としての側面も加わり、一般消費者の注目が一気に高まった。
これに伴い、軽量・小型を強みとする光導波路方式を採用するスマートグラスが急増し、そのサプライチェーンにもスポットライトが当たるようになった。
至格科技は、回折光導波路技術が抱える「画面の色のにじみ」と「光漏れ」という二つの課題克服に注力。独自の特許技術で散乱光を目に入らない角度に導くことで色のちらつきを抑え、日常の95%のシーンでユーザーが気にならないレベルを実現した。レンズ全体の透過率は98%以上、回折格子以外の部分では99%以上と業界平均の約90%を大きく上回るため、普通のレンズとの違いがほとんど分からないほど自然な仕上がりになっている。さらに、独自の導波路構造を採用することで、光漏れの問題も効果的に改善した。
それ以上に注目すべきは、「スペック至上主義」のエンジニア思考を捨てて、ユーザー体験を最優先にした開発にかじを切ったことだ。「普通の眼鏡っぽい」スマートグラスにするため、重さわずか3グラム、厚さ0.5ミリという、一般的な眼鏡レンズよりも薄く軽い着け心地を追求している。
至格科技は設立当初から、設計から製造まで全工程を自社で手がけるIDM(垂直統合型)モデルを貫き、自社生産ラインの構築とサプライチェーン管理を進めてきた。これにより、良品率やコスト、改良スピードにおいて、同業他社を大きく上回る優位性を確立できている。
同社は現在、アリババをはじめとする国内のテック大手やAR分野のユニコーン企業などと提携を結んでいる。孟氏によれば、今年は大口顧客からの注文が多く、どの注文も軒並み10万セット以上と、業界史上かつてない規模になっているという。
Ray-Ban Displayがヒットしたことにより、世界のスマートグラス需要が増大している。調査会社IDCは、2025年の世界のスマートグラス出荷台数は1451万8000台に達し、29年には4000万台を突破すると予測している。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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