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2026年1月9日から11日まで開催された「東京オートサロン2026」にて、新たな中国電気自動車(EV)の日本参入が発表された。
今回名乗りを上げたのは、中国国営自動車大手の「東風汽車(DONGFENG)」。注目すべきは、その戦略がBYDなどとひと味異なり、「スポーツ性」を全面に打ち出した点である。日本のレース界のレジェンド、モンスター田嶋(田嶋伸博)氏率いる「タジマモーターコーポレーション」(以下、TAJIMA)がパートナーとして開発・輸入を担う。この異色のタッグは、中国EVが日本市場で存在感を高めるための新たな試金石となりそうだ。
東京オートサロンは1983年に始まり、現在では国産メーカーのみならず、海外の自動車メーカーも日本のクルマ好きへアピールする格好のチャンスとして捉えており、毎年大きな賑わいを見せている。2026年は389社が出展し、展示車両は856台。3日間の来場者は27万2383人に達した。
近年は、中国メーカーの存在感も高まっている。2023年に日本で乗用車の販売を開始したBYDは、今回の会場で今年から順次投入していく新たなPHEV(プラグインハイブリッド車)を2車種発表した。また、ファブレス形式で中国製商用EVを取り扱う日本企業の出展も目立っており、会場は多様化の一途をたどっている。
そんな中ひときわ注目を集めたのが、TAJIMAが日本初公開した「MONSTER SPORT 007」だ。
TAJIMAとは──モータースポーツの名門
TAJIMAの名前に馴染みのない方は多いだろうが、新車の販売からモータースポーツ用競技車両の製作、さらには新エネルギー事業としてEVの輸入販売など、幅広く手がけている企業だ。
その前身は1978年設立の「モンスターインターナショナル」。1980年代にはスズキのモータースポーツ活動を支えるチューニング会社として名を馳せた。特に「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」での功績は今でも多くのクルマ好きに印象深く刻まれている。
このレースはアメリカ・コロラド州にある標高4301 mの「パイクスピーク」を舞台に、標高差1439 mの峠道をどれほど速く駆け上がるかを競うもの。1995年の開催にはツインエンジン仕様のスズキ・エスクードでモンスター田嶋氏が参戦し、日本人初の総合優勝を実現した。「モンスター」の名は現在でも同社のチューニングカー事業で使用されており、近年取扱を始めたEV事業とともに、同社の多様性を象徴する重要な柱のひとつとなる。

そんなTAJIMAが今回発表した「MONSTER SPORT 007」は、東風汽車が2024年から中国で販売する「eπ 007」をベースとするスポーツBEVだ。TAJIMAの関連会社「ZEV&NEVインターナショナル」が輸入代理店として「DONGFENG JAPAN(ドンフェン ジャパン)」を展開し、TAJIMAではカスタムモデルを扱う形になる。

販売戦略はカスタムモデル中心
現時点では、展開の手法に関してはまだ明らかになっていない部分が多いものの、TAJIMAではあくまでカスタムモデルのみを取り扱うとしているので、今後の販路拡大によってはeπ 007の通常モデルや、他の東風車種のラインナップも考えられるだろう。

ボディサイズは全長4880 × 1895 × 1465 mm、ホイールベース2915 mmと、基本的には中国で販売されているeπ 007と同じだ。一方、中国では出力214 hp/268 hpの後輪駆動(RWD)と536 hpの四輪駆動(AWD)を用意、さらにはBEV以外に1.5ℓ発電用エンジンを搭載するEREV(エンジエクステンダー付きEV)も展開されているものの、日本向けのスペック表にはBEVのAWDのみが記載されている。バッテリーは容量73.48 kWhのサンオーダ(欣旺達)製リン酸鉄リチウムイオン電池を搭載、CLTC測定値で540 kmの航続距離を誇るとしている。
TAJIMAによれば、MONSTER SPORT 007は同社を立ち上げたモータースポーツ界のレジェンド、モンスター田嶋氏がアドバイザーとして開発に参画したという。足回りやモーターのチューニングといった内部の変更点は現時点で明らかにされていないものの、外装ではフロントリップやフロントグリル、リアバンパー、リアウィングなどがオリジナルだ。



フロントグリルは中国仕様のナンバープレートホルダーを覆う形状となっており、これはフロントバンパー丸ごとを日本仕様へ改修するコストを鑑みての判断と推測される。一方で仕上がりは違和感なく、部品自体もカーボン製となっているため、スポーティ感の演出にひと役買っていると感じた。また、細かい点だと日本の道路事情に合わせて右ハンドルモデルを販売、急速充電は日本で普及しているCHAdeMO規格を採用する。

ちなみに、eπ 007は2025年4月に日産の中国専売BEV「N7」のベースとなった車種とよく言われているが、現時点でそれを裏付ける証拠はない。ネット上では日産が東風汽車と合弁を組んでいることや、デザインの類似性、ホイールベースやバッテリー容量の一致などが挙げられているが、eπ 007は後輪駆動ベースなのに対してN7は前輪駆動ベースという違いもあり、また、製造・販売を担当する「東風日産」もeπ 007との関係性を公式に否定している。このこともあってeπ 007が日本で販売されることを日産 N7と関連づけてあれこれ推測する声も見受けられるが、これも事実無根と言える。

東京オートサロン2026の場で、モンスター田嶋氏は「実際に東風汽車のeπ 007を試乗して、まさに我々の求めるスポーツBEVであると感じた」という。東風汽車のレース活動自体は国内シリーズの「CTCC」ぐらいしか目立ったものがないため、eπ 007の性能もたかが知れているだろうと筆者は思っている。一方でモータースポーツ界のレジェンドをそこまで言わせたのも事実なので、いつの日か実現するであろう試乗の機会が楽しみだ。
BYDとは異なる、日本市場での立ち位置
BYDや吉利グループ傘下の高級EVブランド「ZEEKR」に続いて、東風汽車が日本へ参入することを脅威と感じる声が日本のネット上で見受けられるが、筆者個人としてはBYDほどのインパクトは無いと見ている。これはモンスター田嶋氏へのインタビューからも感じた点で、BYDのような広く一般にEVの普及を目指すスタイルではなく、スポーツセダンというある程度の趣味性を求める層へのアピールをしていくからだ。
TAJIMAによれば、現在は日本が定める各種基準への適合を進めている段階で、準備が出来次第、価格といった詳細を発表して2026年4月ごろに発売するとしている。
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(文:中国車研究家 加藤ヒロト)
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