ミニプログラム VS HTML5 ミニプログラム開発者たちの意見とは?

2017年11月某日の深夜23時27分。中国のEC業界では、大手モールがこぞって1年に1度の大規模なセールを行い、例年のように記録的な売り上げを見せる「独身の日(双十一=11月11日)」を迎える時期だ。ミニプログラムのEコマースツール「SEE小電舗」の創始者・万旭成(ワン・シューチョン)氏はチームのメンバーと共に会食の最中だった。

SEE小電舗では複数の企業アカウントが、1日あたりの売上で100万元を達成した。会食はそれを祝うために設けられた席だった。

その時、万氏のWe Chat(微信)がある情報を受信した。「ミニプログラム内でも今後はWeb Viewが解禁にになる。さらに、500の公式アカウントとバインドできるようになる」。その場にいたメンバーはこれを見て一気に沸き立ち、すぐさま会計を済ませて会社へ走り、深夜3~4時まで続く会議に入った。(※ミニプログラム:We Chatの“アプリ内アプリ”とも言えるもの。アプリを個別にダウンロードせずにWeChat内で起動できる)

ミニプログラムが拡張した2つの新機能

万旭成氏の当初の考えは、「仮にH5(HTML5)を組み入れることができるなら、ミニプログラムの創業者は将来、WEB世界全体のデータストリームに影響力を持つようになる」だった。では、前出のミニプログラムの新しい2つの機能は、何を意味するのだろうか?

1.ミニプログラムでは500の公式アカウントにバインドできる。
2.ミニプログラムからは外部サイトを閲覧することができ、さらに外部サイトからミニプログラムへ戻ることもできる。

より多くのクライアントに、より細かなサービスができる

以前、ひとつのミニプログラムでバインドできる公式アカウントの数量は50件だったが、これが500件まで拡張されたことは、SEE小電舗の業務に直接的に影響することとなった。同社は自社媒体でEC事業を行っており、出店クライアントに開店準備ツールと販売網を提供するサービスを行っていた。6月にはミニプログラムでの業務を開始し、10月までに3,000の企業アカウントを出店させた。「多くのクライアントにはWe Chat決済のインターフェースがなかったため、我々が替わって代金回収を行ってきた。今では、1つのミニプログラムでより多くの企業アカウント向けに、より細かなサービスの提供が可能になった。」

閉じられたミニプログラムの世界が、外界とつながる

開発者らがさらに注目したのは、ミニプログラムがWeb Viewの機能を備えていることだった。これは、We Chatがミニプログラムの閉鎖的な環境を打破しようとする試みを意味し、外界のデータストリームとの間に新しい流れを開通したことを意味する。つまり、ミニプログラムは正にブラウザのような存在になったということだ。名刺やアドレス帳を整理するミニプログラムをヒットさせた「群応用」の創業者・楊芳賢(ヤン・ファンシエン)氏を含めた多くの創業者が、「今回の変化はミニプログラム初の戦略転換」であると考えている。

閉じられたミニプログラムの世界が、外界とつながる

ミニプログラムを注視する人にとっては記憶に新しいかもしれないが、2017年1月にミニプログラムがローンチした際、We ChatはミニプログラムとH5を比較し、開発の難易度が低いことなどを例に挙げて、「ミニプログラムは、より使用感が優れている」とアピールした。市場はこれについて、We Chatがミニプログラム内でH5を駆逐する意志表明だと捉えていた。一時期、モーメンツ(LINEやフェイスブックのタイムラインに類似)でウイルスのごとく広まっていたH5は、We Chatの悩みの種だったからだ。

H5とミニプログラムは、相容れないものではない

2008年に草案が発表されてから、H5の技術進化は10年近く続き、相対的に成熟の期を迎えている。2015年の統計によると、同年にはアプリの80%がH5のアーキテクチャに基づいてWebページを作成している。ミニプログラム開発企業・飛燕(フェイイェン)の創業者、張翔(チャン・シャン)氏は、「現在のミニプログラムはH5に開放されている。かつて多くのメーカーがH5を用いてアプリを制作した当時と同じだ。結局のところ、互いに相容れることでより表現力持った製品になり、外部のプロダクトやトラフィックを取り入れていくことができるのだ」としている。

確かにミニプログラムは技術的に見ると、開発の敷居が大きく下がった。あるアプリの開発者は、H5の多くのアーキテクチャは直接ミニプログラムへ組み込むことができると考えている。ミニプログラムは一貫して小回りが利き、階層もシンプルであるため、以前はミニプログラムでの展開に制限を受けていた大規模なECアプリでも、今後はWeb Viewを使ってユーザーの使用感をよりスムーズなものにできるわけだ。「フロントエンドへの人員配置が少なくなるので、これからは集中してWEBアプリの開発に注力できる」。ITコンサル企業・小年糕(シャオニエンガオ)の創業者である茹海波(ルー・ハイボー)氏はそう語っている。

Web View解禁がEC、ゲーム、有料コンテンツなどにもたらすもの

万旭成氏が36Krの取材に応じ、EC業者を例にとってこう説明した。例えば、タオバオ(淘宝)系のECモールのユーザーは1回の注文につき、平均して5つの商品を見比べるという。つまり、複数のブランドのページの間を行ったり来たりして、どこにいくらのお金を支払うかを決めているのだ。「以前のミニプログラムは、外部に対して閉鎖的だった。ユーザーの流れが内部で完結し、外部との自由な行き来が断ち切られてしまうのだ。結果、ユーザーのミニプログラムでの滞在時間は短くなってしまっていた」。

ミニプログラムがWeb Viewを解禁したことで、EC以外の分野では、ゲーム・販売・有料コンテンツが最も利を得るのではないかと業界内では考えられている。

ゲーム内でのアイテム販売は目覚ましい収益を得るビジネスモデルだが、当初はまさにこの利潤分配に関してWe Chatとアップルが互いに相容れなかったがために、ミニプログラムのローンチ後しばらくは、ゲーム系アプリの配布は予定していなかった。We ChatがミニプログラムでWeb View解禁に踏み切ったのは、いわゆる「曲線救国(間接的な手段で国を救った)」だと言える。また、H5ゲームの開発メーカーはすでに一定のマーケットを有しているため、ミニプログラムがH5を解禁することで、H5のユーザーも自然にミニプログラムに流入してくることになるだろう。

ゲームと同様、有料コンテンツについても収益が見込める。従来のように前払いをしたり、QRコードをスキャンしたりしなくてもよくなったのだから。「現段階でWe Chat内の小説など読み物の閲覧に支払われる金額は1日当たり5億元に達しない程度。成長の余地があるビジネスだ」。

今回の変化はただのファーストステップに過ぎない

しかし、ミニプログラムに関する統計・解析に特化するアラジンのCEO・史文禄(シー・ウェンルー)氏は36Krの取材に応じ、このように語った。

ミニプログラムとWeb View解禁は初期段階であり、現段階では多くの制約を受けている。

We Chatの現時点の規定では、各ミニプログラムのアカウントには20のドメイン名を設定することができ、各ドメインには最多で20のミニプログラムのアカウントをバインドできる。外部サイトとの連結範囲はまだまだ限定的だ。

SNSアプリ・朋友印象の共同創始者・栗浩洋(デリク・リー)氏がこうした新機能を試用してみた結果、語ったところでは、「We ChatのWeb View解禁とはH5の情報を表示しているに過ぎず、外部サイトにジャンプしているわけではない。つまり、ミニプログラムのトラフィックを外部へ流したいという我々の希望はまだ実現していないということ。一部の特定の内容が表示できるに過ぎないのだ」。

ミニプログラムはその射程範囲を拡大し、外部サイトを引き込むことによって、成長にやや陰りを見せはじめているWe Chatを活性化し、ユーザー増を狙っている。これらはまだ始まりに過ぎないが、We Chatの2017年6月ごろの足並みから考えると、何らかの糸口はつかめたようであり、未来の全面開放もそう遠くはなさそうだ。

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