ソフトバンク&アリババ出資の印モバイル決済「Paytm」がソーシャルECに参入か 「Mystore」を試験的にリリース

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2月中旬、現地メディアによると、インドのモバイル決済プラットフォームPaytmが「Mystore」という新たなページを設けており、これがソーシャルEC事業参入の第一歩となる可能性があることが分かった。とはいえ、Mystoreは現在も数か月にわたるテスト段階にあり、正式なローンチはまだ先だ。

Mystoreでは、事業者向けアプリ「Paytm for Business」に登録しているショップが商品のアップロードと販売ができるほか、販売代理業務も行える。こうしたショップがWhatsAppやFacebookなどのSNSでMystore上の商品をシェアし、このリンクから商品が購入されると、シェアしたショップに相応のマージンが入るという仕組みだ。同時に購入者もSNSでショップとの価格交渉を行うことができ、ショップが購入者に代わってMyStoreで商品をオーダーすることも可能だ。

MyStoreの商品ジャンルは現時点で衣服、ジュエリー、調理器具および他の家庭用品など。MyStoreのポータルページは現在はPaytm for Business上にあるが、配送・返品手続きはPaytmのECプラットフォーム「Paytm Mall」によりサポートされている。

MyStoreは現時点でPaytm上の企業のみに向けたリリースとなっているが、今後は一般顧客による利用も全面的に解禁となる可能性が高い。このほか、ある関係筋はインドの現地メディア「Entrackr」に対し、MyStore上の取引規模が拡大すれば、Paytm Mallに吸収され、そのEC事業の一部分となる可能性も非常に高くなるとの見解を示した。

また別の匿名の情報筋もEntrackrに対し、「PaytmのソーシャルECは現時点でまだ大規模に展開されていないが、PaytmはソーシャルECを事業の重点とする可能性がある。なぜならソーシャルECはECの取引規模を引き上げる新たな方法と考えられているからだ」と述べた。

取引量拡大のための直接的な方法は利用シーンの拡充だ。決済プラットフォームにとって、ECが軽視できない利用シーンであることは間違いない。

Paytmは2017年からEC事業の模索を始め、ECプラットフォーム「Paytm Mall」を立ち上げた。同プラットフォームがリリースされると、アリババの主導する2億ドル(約220億円)の資金を調達したことで、Paytm Mallは一躍ユニコーンの仲間入りを果たした。その1年後には、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの主導する投資ラウンドで4億4500万ドル(約490億円)の資金も調達している。

Paytm Mallの設立当時、インド市場はすでにアマゾンおよび「フリップカート(Flipkart:当時はウォルマートによる買収前だった)」の独壇場となっていた。このため、Paytm Mallの事業開始は一時、アリババとアマゾンのインド市場での対決の始まりと考えられた。

しかし「Forrest Inc. 」が昨年公布したリポートによれば、アリババはPaytm Mallに対するさらなる投資を控え、投資の重点をPaytmのクラウドコンピューティングおよび決済プラットフォーム事業に移したという。同年7月、eBayはPaytm Mallに1億5000万ドル(約170億円)を出資したが、案の定アリババの姿は見られず、ソフトバンクも出資に加わらなかった。

これはPaytm Mallの事業への資金投入があまりに巨額だったためかもしれない。ある情報によれば、Paytm Mallは2018年9~10月、インド最大の祝日であるディワリ期間中にキャッシュバックとマーケティングに1億5000万~2億ドル(約170~220億円)を費やしたという。その上、ECプラットフォームの構築自体も、保管や物流といった面で巨額の資金投入を必要とする。

投資家からのプレッシャーのもと、Paytm Mallは昨年、インドのEC貨物輸送サービスやキャッシュバックキャンペーンの中止を含む救済措置を開始した。だがこれが案の定ユーザーの流出という結果につながった。Paytm Mallの1日あたり出荷数は2018年10月には15万件だったのが、2019年3月には3万5000件にまで減少したことが明らになった。

苦戦するPaytm Mallは、事業の重心をO2OからB2Bへと徐々に移行しているとの情報がある。だが、かつての輝きを失ったこのユニコーンが、決済シーンの拡大を目指すPaytmのニーズに応えることはもはや困難なのかもしれない。

ソーシャルECの顧客獲得コスト(CAC)は従来のEC企業と比べてさらに低い上に、アマゾンやフリップカートなどの大手企業との直接対決も避けられる。この低顧客獲得コストと対をなすのが膨大なユーザー基数だ。WhatsAppのみをとってもインドユーザーは4億人に上り、デイリーアクティブユーザー数は最低でもインドの各ECプラットフォームの5倍以上に達する。ソーシャルEC事業の開始は、Paytmが利用シーンを広げるための適切な方法のようにもみえる。

一方で、Paytmは昨年末の最新の資金調達ラウンドで10億ドル(約110億円)を調達した。同社の創業者兼CEOのビジェイ・シェカー・シャルマ氏は以前、この資金をより小規模な都市の一般消費者や出店者の獲得に充てるとの認識を示している。

上述のMyStoreは、Paytmの地方都市進出の手段の一つなのかもしれない。ソーシャルECという形式は本来、二~三級都市でより人気があるという側面をもつ。またMyStoreは三~四級都市の販売代理業者には一定の優遇措置も適用する。出資金なしで報酬を得る機会を提供するというものだ。また、MyStoreでは英語とヒンディー語の他に、タミール語、グジャラート語、パンジャーブ語、ベンガル語、オリヤ語などの複数の言語サービスを提供し、地方都市のユーザー獲得に向けた準備を整えている。

とはいえ、インド市場のソーシャルEC企業は決して少なくない上に、事業を徐々に拡大している企業も多い。現在最も注目されているのは「Meesho」だろう。現時点で2億ドル(約220億円)を調達し、インベスターにはNaspers、Facebook、セコイア・キャピタル・インディアおよび「順為資本(Shunwei Capital)」などが含まれる。Meeshoは、同社プラットフォームに出店済みの仲介販売業者がすでに100万件を超えると宣言している。他のソーシャルEC企業としては、「Shop101」「GlowRoad」「Dealshare」「WMall」などがある。

このほか、動画コマースというさらにニッチな分野でも「BulBul」「SimSim」「EkAnek」などが健闘している。興味深いことに、インドの現地メディア「Entrackr」の報道によれば、アリババも誕生からわずか9カ月の同社傘下のインドECプラットフォーム「Yoli」を通じ、動画コマースへの参入を試みているという。

ソーシャルEC市場が加熱する中、強力な後ろ盾を持つMyStoreは、中心部で大きく発展したPaytmが地方都市市場を攻略する上での一助となれるだろうか。その答えは市場に託されている。
(翻訳・神部明果)

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