WeChatが動画への導線を強化 テンセントがショート動画で新戦略

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WeChatが動画への導線を強化 テンセントがミニ動画で新戦略

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11億人以上のユーザー数を誇るチャットアプリ「WeChat」の動画機能まわりは変化が激しい。

2020年2月、WeChatアプリに動画閲覧への導線ができた。メニュータブ「発見(発現)」をタップすると、動画への入口「動画アカウント(視頻号)」が2行目、「モーメンツ(朋友圏)」の下にある。

WeChatはユーザーの利便性を考慮して、「公式アカウントからの投稿リスト(訂閲号消息)」にある「よく購読する公式アカウント(常読)」欄にも「動画」への入口を追加したという。公式アカウントが投稿する動画は、フォロー済アカウントが一斉送信するものを、新着順に3つ表示する。

「動画」をタップすると、フォロー中のサブスクリプションアカウント(公式アカウントの一種)による動画リストが表示される。アカウント1つに付き表示される動画は3つまでだ。WeChatによれば「より多くの動画へ目に触れる機会を与えるため」だという。各アカウントがこれまでに投稿した動画の総数や新着動画数、再生回数や「この動画を閲覧済みの友だちの人数」も一覧表示される。友人とのつながりを特徴とするWeChatだけあって、コンテンツのレコメンドには「友だち」の力が大きく働くからだ。

動画の一つをクリックすると、同じアカウントが投稿した関連動画が下に表示される。また、中国のネット調査会社「暁程序観察」によると、動画には「コミュニティ(微信圏子)」へのリンクも埋め込みできるという。たとえば、グルメ動画を再生中にポップアップされるウインドウをタップすると、リンク先のグルメサークルに誘導される。また、動画のサマリーにはミニプログラムへのリンクを貼ることもできる。

WeChatならではの「友人レコメンド」重視

WeChatの動画アカウントは1月に内部テストを行い、2月にベータ版でテスト、その後にも若干改良された。例えば、「トピックの追加(添加話題)」と「現在地(地理位置)」を介して、関連動画を集めたページにジャンプできる。

ショート動画アプリは「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」が「トレンド」、「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」が「ゆるさ」のようにそれぞれに固有のカラーがある。一方、WeChatの動画アカウントは有名人、お笑い、歌、グルメ、インターネット、日常生活など多様なコンテンツを発信するが、一見したところ、統一されたスタイルや特定のカテゴリはない。レコメンドの仕組みも「友人関係」頼みであることが明白だ。各ユーザーにはフォロー中の動画アカウントが投稿した動画に加え、友人が「いいね!」をしたり、コメントをしたりした動画が届く

抖音は3秒再生でユーザーの注意を引き、上スワイプで別の動画へ切り替えられる。快手はホーム画面に動画を2列表示し、一度により多くの作品を露出させる。 これに対し、WeChatの動画アカウントのポイントは、自分がフォローしているアカウントの新規投稿や、友達が閲覧している動画だ。

狙いはミニ動画事業の補完

現在、WeChatの動画エコシステムには「動画アカウント」、「公式アカウントの動画」、「トップストーリー(看一看、友人によるレコメンドコンテンツが閲覧できる機能)」、「ストーリー(視頻動態、投稿後24時間で削除される動画機能)」などがある。トップストーリーにはおすすめ動画がいろいろ出てくるが、動画を開くと視聴したことを友達に知らせる機能が付いている。

WeChatで動画を発信するメリット・デメリットは明らかだ。メリットは、WeChatのアクセス数、人脈、仲間との連携だ。友達が見た、友達が「いいね!」をした、友達がコメントした、これらはすべて交友関係を基盤として生まれる機能だ。動画アカウントは公式アカウントにリンクを貼れること、閲覧動画からコミュニティへ誘導できることなどは、そうした連携の一例だ。

デメリットは、WeChatの動画コンテンツが独立したアプリではないので、UXを損ねることを考えると機能拡張には一定の制限がかかる。また、抖音、快手、ビリビリ動画(bilibili)などで動画を閲覧する習慣が根付いているユーザーに言わせれば、WeChatへ乗り換える理由がないことだ。

WeChat運営元のテンセントは組織の資源の半数を投入し、独立アプリ「微視(WeShow)」でもショート動画に参戦しているが、微視のDAU(デイリーアクセスユーザー数)は明らかに劣勢だ。微視は今年、目標DAUを5000万に設定しているのに対し、抖音は1月にDAU4億、快手は2月にDAU3億達成を発表している。これを受け、テンセントのショート動画サービスの重責はWeChat内に戻された。

WeChatの検索業務が全面的に力を発揮するには、コンテンツ体系の最適化が前提条件であり、動画も不可欠な一要素となる。今年2月、抖音を運営する「バイトダンス(字節跳動)」は検索アプリ「頭条捜索」のAndroid版をローンチした。下部にあるメニューバーには動画とミニ動画、動画への導線を2つも設け、その他にライブ配信、有料音声、無料書籍を配したのも、同様のロジックによる。

公式アカウント、ミニプログラム、ショート動画、ライブ配信、検索、モバイル決済、オフィスツール、電子商取引と、WeChatが機能を拡張する度に、WeChatの原動力である「時代に即した優れたツール」がブレていないのかどうかを再検討しなくてはならない。

写真:Visual China Group
(翻訳・永野倫子)

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