中国唯一のQCCD量子コンピュータ企業、国際大手に4〜5年遅れも「2030年に格差ゼロ」

量子コンピュータを開発する中国企業「合肥幺正量子科技(Unitary Quantum)」(以下、幺正量子)がこのほど、プレシリーズAで数億元(数十億円)を調達した。出資は、螞蟻集団(アントグループ)と吉利資本が主導し、混沌投資(Chaos Investment)、英飛尼迪(Infinity)、中博聚力(ZBJL Capital)、既存株主の順為資本(Shunwei Capital)も参加した。資金は主に、量子電荷結合素子(QCCD)アーキテクチャをベースにしたイオントラップ型量子コンピュータの技術開発に充てられる。

中国唯一のQCCDアーキテクチャ採用企業

2022年設立の正量子は、QCCDアーキテクチャを採用したイオントラップ型量子コンピュータを開発する中国で唯一の企業とされる。

同社は、郭光燦院士が設立した中国科学院量子情報重点実験室から生まれた。創業者の韓永建博士は中国科学技術大学の出身で、郭院士に師事。米ミシガン大学在籍時には、イオントラップの先駆者であり量子コンピュータ企業IonQを設立したクリストファー・モンロー氏の研究グループと交流を持った。

韓博士は、イオントラップ方式が2025年に技術、産業化、政策という3つの面で転換点を迎えたと見ている。

技術面では、量子ビットを基底状態まで冷却する必要のないマイクロ波制御の採用により、演算効率が10倍、操作精度が1〜2桁向上した。産業化の面では、米IonQが英Oxford Ionicsを買収してQCCDアーキテクチャに注力する方針に転換し、サプライチェーン整備を加速。量子コンピュータ分野全体での資金調達も拡大している。政策面でも、中国政府が量子技術を「未来産業」の筆頭に位置づけた。

QCCDが解く、二つの難題

幺正量子が選んだQCCDアーキテクチャは、量子ビットの操作精度と大規模化という、量子コンピュータ開発における二大課題を同時に解決できる技術だ。特に量子ビットの操作精度はすでに、既存の量子コンピュータの中で最高水準に達しているという。韓博士によると、IonQや米Quantinuum(クオンティニュアム)など、イオントラップ型を手がける世界の主要企業はいずれもQCCDを採用しているが、チップ設計・光学・低温技術・真空技術・ソフトウェアなど多分野の高度な技術が絡み合うため、参入障壁は極めて高い。

ベンチマークとなるクオンティニュアムを見ると、「HØ」から「Helios」まで3世代の量子コンピュータを開発するのに約6年を費やし、10億ドル(約1600億円)以上を投じてきた。幺正量子も同じように、基本演算ユニット、ユニット間の移動・相互接続、量子ビット規模の拡張といった課題を段階的に解決していく方針だ。

2028年に商用水準を目指す

同社は2024年に最初のイオントラップ型量子コンピュータ1台を納品した。中国で初めて4K(極低温)で動作するイオントラップチップと2量子ビットゲートを開発し、独自開発のイオントラップで12量子ビットの制御に成功。量子ビットの演算能力を示す指標「量子ボリューム(QV)32」を厳密に達成した中国初の量子コンピュータ企業でもある。チップ設計も10回以上改良を重ね、主要性能は国際トップ水準に近づきつつあるという。

現時点の主な収益源は、1台数千万元(数億円)規模の量子コンピュータの販売だ。韓博士は「量子コンピュータが実際の商業価値を発揮するには、量子ビット数を100に近づけながらエラー率を10のマイナス4乗以下に抑える必要がある。IonQやクオンティニュアムは昨年、いずれも売上高1億ドルを超えたが、これを実現するには演算能力が一定の水準に達することが前提だ」と語る。

同社は2028年頃までに演算能力を商用水準に引き上げ、クラウドサービスやデータセンターへの製品供給を目指す。現在は他社と共同でセキュリティ・材料設計・AI融合などの研究開発も検討中だ。国際大手との技術格差は現在4〜5年分と推計されるが、向こう3年で格差を3年分以内に縮め、2030年頃には「格差ゼロ」の実現を目指す。

*1元=約23円、1ドル=約158円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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