中国で生食用卵がブレイク、発売開始から半年間で売上高5倍のヒット商品に成長

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生食用卵ブランド「黄天鵝(Yellow Swan)」がシリーズAで1億元(約15億円)強を調達した。リードインベスターは「CICCキャピタル」傘下の「中金匯融基金」で、既存株主の「璞瑞基金(Proterra Investment Partners)」も追加出資した。資金はブランド、チャネル、拠点の構築に充てられるとのこと。璞瑞基金は黄天鵝の創立当初にも数千万ドル(数十億円)を出資している。

中国の鶏卵市場規模は3000億元(約4兆6000億円)と世界最大規模であるが、市場は極度に分散しており、業界上位10社の市場シェアは2%に満たない。ブランド化の度合いも非常に低く、ブランド卵のシェアは5%未満だ。

黄天鵝は「貴州鳳集生態農業科技(Guizhou Fengji Ecological Agriculture Technology)」の高品質卵ブランドだ。同社は2019年8月に上場して以来、半年で売上高を5倍に成長させている。

黄天鵝(Yellow Swan)

創業者の馮斌氏は鶏卵業界に20年近く従事してきた。黄天鵝の設立前に、他の鶏卵企業で中国トップブランドを一から構築し、産業チェーンとブランドの確立に成功した経験を持つ。その過程で馮氏は、消費のアップグレードに伴い高品質の卵を求める家庭が増えてきているものの、高品質の卵の明確な定義がないことに消費者は戸惑いを覚えていることに気づいた。

馮氏は日本で初めて生卵を食べた後、「生食用卵」というブランドで消費者にアピールできるとひらめく。

生でも食べられる食品というのは、特定の工程の特定の技術で実現できるようなものではない。生産チェーン全体の品質管理、つまり、養鶏場の衛生管理から、家禽の健康管理、雑菌やサルモネラ菌制御など30項目以上のチェックポイントを厳格に管理する必要がある。卵の中でも生食用は最も厳しい基準を満たしている必要があり、高品質であることを消費者が客観的に判断できる規格だと言える。

馮氏は日本の「生食用卵の父」加藤宏光氏を訪ね、日本の生食用卵規格の中国導入へ協力を依頼した。加藤宏光氏は日本養鶏産業研究会(JPISTRA)の会長であり、日本政府の委託を受け、日本の生食用卵の規格基準の確立を促進した人物である。

1年近くに及ぶ日中共同研究の末、黄天鵝は中国で生食可能な卵の規格を確立、サルモネラ菌なし、生臭さなし、かつ栄養満点のおいしい生食用卵の開発に成功した。

黄天鵝の卵は「叮咚買菜(DingdongMaicai)」「盒馬鮮生(Hema Fresh)」「毎日優鮮(MissFresh)」「雲集微店(Yunji Weidian)」、天猫(Tmall)、京東集団(JD.com)などのECサイトで販売されており、ウォルマートや「永輝超市(Yonghui Superstores)」「華潤万家(China Resources Vanguard)」「カルフール(家楽福)」などの生鮮スーパーでも購入できる。

同社資料によると、新型コロナウイルス感染症が深刻だった今年第1四半に売上高は200%以上増加したという。「618セール」(6月18日前後に行われる中国ECサイトのスーパーセールイベント)では、黄天鵝は生食用卵部門でも、高級卵部門でも売上高トップだった。 2020年の目標は売上高を5億元(約76億円)台にのせることだ。

馮氏は、優れた卵ブランドであるためには、商品、ブランド、サプライチェーンの管理がカギだと考えている。

黄天鵝は企業向けと消費者向けという全く異なる2つの分野でブランディングを進めている。農産物の産業チェーンは非常に長く、厳格な防疫対策が要求されるため、優れた商品を作るには企業側に冷静さと孤高を保つ覚悟が求められる。優れたブランドであるためには、大都市に住む高品質を求める消費者の立場で考える必要もある。

黄天鵝は、サプライチェーンの管理を強化するため、中国国内の90%の従業者で産業チェーンを作り、育雛から飼料、育成、出荷、販売までの全プロセスを連結した。同時に、散在する中小規模の農家に育雛、飼料、流通などのサービスを提供し、サプライチェーンの効率を向上させた。

2019年、黄天鵝は日中両国の鶏卵専門家と共同で中国初の「生食用鶏卵研究院」設立を主導し、業界に技術と経験をアウトプットし、より多くの鶏卵企業と家族農場が規格化、高品質化、大規模化に向け発展できるように支援した。

今回出資した中金匯融基金の蔣興権総経理は、中国の鶏卵の生産と消費は世界一であり、鶏卵は中国人にとって最もコスパの良い動物性タンパク質でもあると述べた。中国の動物性たんぱく質業界では、豚肉や鶏肉を扱う市場価格100億〜1000億元(約1500億~1兆5000億円)の上場企業があるが、鶏卵業界のブランド化は遅く、小規模事業者が主流だった。しかし、産業や消費が成長していけば、鶏卵業界でも大きな販売規模と持続可能な収益性を備えたリーディングカンパニーが必ずや現れるものなのだ。
(翻訳・永野倫子)

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