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かつて世界のエコカー市場を席巻した覇者が失速している。中国のBYD(比亜迪)が手がける新エネルギー車(NEV)は過去6カ月にわたり、月販売台数が45%のペースで減少しているのだ。
7日、BYDは6月の生産・営業状況報告を発表した。同社製自動車の同月の販売台数は3万3700台で前年同期比12.93%減。うち、新エネルギー車の販売台数は1万3100台で、同49.46%減だった。なお、今年上半期の総販売台数は前年同期比30.45%減の15万8600台で、うち新エネルギー車は同58.34%減の6万700台だった。一方、ガソリン車は上半期を通して成長を続け、中でもSUVの販売台数は同187.35%増の7万5100台で、新エネルギー車を越えている。
ブランド力不足で首位陥落
BYDに不穏な影が現われたのはここ最近のことではない。全世界でエコカーの売り上げ台数トップの座を4年にわたって維持した後、2019年から減速に転じ始めている。
2019年、BYDの新エネルギー車の販売台数は前年比7.39%減の22万9500台で、前年比50%増の成長を達成した米テスラの36万7500台に敗北を喫した。世界のEVの販売台数を集計したランキング「EV Sales」によると、今年1~5月、グローバル販売台数で首位に立ったテスラは2位以下の3倍以上の数字を叩き出している。一方のBYDはBMW、フォルクスワーゲンに続く4位だった。
「新エネルギー車市場は新たなフェーズに入った」。中国のビジネススクール中欧国際工商学院(CEIBS)の研究員で自動車業界のシニアアナリスト銭文頴氏は、そう述べた。BYDの販売台数が落ち込んできた本当の理由は、購入の選択肢がほぼ存在しなかった初期の市場に比べ、現在では自由な選択肢が存在するからだという。BYDは自社製品の強みを早急に固めなければ、競合によってますます販売台数を削がれるだろうと同氏は予想する。
BMW 5シリーズのプラグインハイブリッド車(PHEV)は今年1~6月、中国市場で合計1万650台を納車した。BYDのPHEVは同期間に1万1188台を納車している。BMW車は動力性能、航続距離ともBYD車と大差ないが、価格は大幅に高い。それでも消費者に受けているのはブランドとしてのネームバリューが高いからだ。
自動車業界に詳しいあるシニアアナリストによると現在、自動車購入の主力層は1990年代生まれ。彼らはコストパフォーマンスよりもブランドや個性を重視する傾向がある。「もし同じ予算なら、彼らは中庸な製品よりも“イケてる”製品を選ぶ」という。
中国自動車工業協会(CAAM)と市場調査・分析企業の巨量算数(Ocean Insights)によるレポートでは、高級ブランドが発表した新エネルギー車の販売台数は2019年にほぼ倍増した。中でもテスラとポルシェが前年比220%増と大幅に伸びている。今年は新型コロナ禍の影響もあり状況は特殊だが、自動車市場においてはまず高級車が4月から上向き始め、前年以上の数字を出しているという。
BYD不振の理由の一つは、新型コロナ禍で今年上半期の新車発表を見送ったことだ。
中信証券(CITIC SECURITIES)および安信証券(ESSENCE SECURITIES)によると、BYDの6月の新エネルギー車販売台数は前年同期比50%減となったものの、前月比では23.23%増に転じた。今年下半期には新型「宋(Song)PLUS」の発表が控え、さらに「元(Yuan)」「e2」「e3」などのモデルチェンジを行う予定であることから、BYDは再び成長サイクルに入ると予想されている。
市場シェア奪還の望みは
BYDの新エネルギー車事業は今年上半期、ギリギリの及第点に甘んじたが、資本市場では依然として惹きの強い存在だ。
BYDの時価総額は今月8日の取引終了時点で2257億5400万元(約3兆4500億円)で、上海汽車集団(SAIC)の2240億8900万元(約3兆4200億円)を上回っており、複数の証券会社が「買い」としてAランクの格付けをつけている。背景にはBYDのハイブリッド車への期待がある。6月19日、BYDはプラグインハイブリッド技術プラットフォーム「DM」の第4世代戦略を発表し、動力性能に特化した「DM-p」および経済性に特化した「DM-i」の二つのプラットフォームを推進していくとした。
安信証券は、2021年にBYDがDM-p系およびDM-i系の対応車種を発売すれば、同社のハイブリッド車が恒常的に月3万台以上を売り上げるようになる可能性があるとしている。
さらにBYDは完成車事業以外に、半導体事業や動力電池事業でも成長の余地が生まれている。
華創証券(HUA CHUANG SECURITIES)のデータでは、BYDは昨年、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の出荷台数が19万個に上り、独インフィニオンに次ぐ市場シェア18%に達した。BYDの子会社「比亜迪半導体(BYD Semiconductor)」はわずか2カ月余りの間に2回の資金調達を行い、評価額は102億元(約1600億円)に上っている。投資銀行の中金国際金融(CICC)は、BYD半導体事業が子会社分離上場を実施すれば時価総額は300億元(約4600億円)に達すると予想する。また、BYDの動力電池の出荷数は、中国国内では「CATL(寧徳時代新能源科技)」に次ぐ2位につける。
「BYDは徐々にティア1(自動車の一次請け)へ移行していくだろう。将来的にはこの事業が利益率への貢献を強めていく」。前出のシニアアナリスト銭文頴氏はこう述べ、ティア1としてのBYDの強さを強調する。一部の証券会社も今後のBYDについて、「リチウムイオンバッテリー、IGBT、三位一体の駆動システム(電気モーター、電子制御システム、変速機)などを提供する新エネルギー車向けのワンストップソリューション」として投資価値が増してくるとみている。
(翻訳・愛玉)
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