コンピュータビジョンでコストを大幅カット、利用シーンも広がる「筋斗雲」の無人宅配車

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生鮮品の配送およびフードデリバリーは、中国の生活に欠かせないサービスのひとつだ。

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、貨物配送は80%がドローンなどを含む自動運転機が担うようになると予測している。自動運転機は特に人件費が高い先進国で進んでいるが、人件費が安価な発展途上国では遅れている。

中国も発展途上国と言えるが、人口ボーナス期の終焉を目の前に、人件費上昇という問題に直面している。そこで、京東集団(JD.com)や菜鳥(CAINIAO)、美団点評(Meituan Dianping)はそろって、短距離輸送を担う無人宅配車に注目している。同時に、多くのスタートアップもチャンスをうかがっている。

無人宅配ロボットの開発および関連ソリューションを研究する「筋斗雲(Somersault Cloud)」は2018年3月に設立された。同年6月、シードラウンドでシリコンバレーのアクセラレーター「Plug and Play China」「金種子創投基金(Gold Seed Venture Capital Fund)」などから数百万元(数千万円)を調達。コンピュータビジョンを応用した短距離宅配ロボットが同社のコア技術だ。今年1月には第2世代の無人宅配車を発表し、すでに量産段階に入っているという。

同社の無人宅配車は自動充電に対応しており、1回のフル充電で10〜12時間稼働する。歩道での走行速度は時速5〜8キロメートルと、人が早歩きするスピードだ。信号、人、車などの障害物を識別できるだけでなく、50キログラムの荷物を積載できる。6つの車輪がついており、蹴上8センチメートル、傾斜60度ほどの階段ならば難なく登る。

また、360度防犯監視カメラが備え付けられており、無理やり抱きかかえられるなどのトラブルが発生した場合は警報音を鳴り響かせて、管理者にすぐに通知。継続して位置情報を共有するようになっているという。

筋斗雲CEOの林錇森氏は「この無人宅配車は輪郭追跡処理アルゴリズムを採用しており、光の強弱に関係なく正確に経路を識別できる。また、アンテナ装置でエレベーターのボタンを押すこともできる」と述べている。

とは言え、こうした無人宅配車は、性能はもちろん、価格も重要だ。物流や小売業界はコスト管理に敏感だからだ。

林氏は「多くの企業が採用している全方位レーザー『LiDAR』は使いやすく、そのアルゴリズムもシンプル。しかし、コストが高く、十分な市場がなければ量産できない」とする。

筋斗雲はデュアルレンズのコンピュータビジョン技術を採用しており、これにより、無人宅配車の生産コストを8000元(約13万円)以下に収めた。他社の無人宅配車には1台10万元(約160万円)以上するものもある。

また、同社の無人宅配車は未知の環境におけるナビゲーションで優れた性能を発揮する。現状、未知の場所で自動走行するためには、まずは実際の道路をスキャニングして高精度3Dマップを作成し、その後、人が各種調整しなければならない。この方法の欠点は、新しい環境ごとに高精度マップを作成しなければならず、マーキング、更新、メンテナンスなどの作業に数カ月間を要することだ。筋斗雲の無人宅配車は3D環境の位置データを視覚的に認識・収集し、それを既存の2Dマップに重ね合わせることで、数日間で走行可能な環境を構築できるという。

市場開拓の面では、同社はすでに中国の不動産業者などと提携し、高級マンションを中心に無人宅配車を投入している。林氏によると、現代の高級マンションはスマート化を提唱しており、無人宅配車の試験投入には理想的な環境だという。

筋斗雲のビジネスモデルはふたつ。一つはフードデリバリー/宅配だ。ユーザーの注文が入ると、まず無人宅配車は歩道を走行してレストランやスーパーに赴く。各店の従業員が荷物を積むと、無人宅配車は自動施錠して配送を始める。配送中、ユーザーはリアルタイムで配送状況および位置を確認できる。無人宅配車が到着したら、ユーザーはスマホでQRコードを読み取り、ロックを解除して荷物を取り出す。

もう一つが移動小売だ。通行量の多い場所、消費ニーズが高い場面、例えば観光地やショッピング街に無人宅配車を投入する。消費者はWeChatのミニプログラム経由で近くの無人宅配車を呼び出し、車体上のQRコードをスキャンすれば各種商品(飲料や傘など)を購入できる。商品補充は付近の業者が行う。林氏は「このビジネスモデルはモバイル決済の環境が整備されていることが大前提。現時点では米国など海外での導入は難しい」と述べている。

これら2つのサービスが同社の主な収益源だが、無人宅配車が人目につきやすいという特性を利用して、広告事業にも乗り出している。すでにコカ・コーラや農夫山泉などの大手飲料メーカーと契約しており、今後、無人宅配車には関連広告が掲載される予定だ。
(翻訳・飯塚竜二)

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