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中国の車載用バッテリーメーカー「蜂巣能源科技(SVOLT Energy Technology)」が、独BMWから電池容量換算で90GWh相当のバッテリー生産を受注したことがわかった。また、同じく中国の「CATL(寧徳時代新能源科技)」と「億緯鋰能(EVE Energy)」もBMWから合計70GWh相当のバッテリー生産を受注したという。1Whあたり0.6元(約12.3円)で試算すると、受注額は3社で合計960億元(約1兆9700億円)に達している。
CATLとEVE Energyに関しては、過去にもBMWと円筒形バッテリー生産で戦略的提携を結んでおり、今回の受注獲得は決して意外なものではない。ただし、今回の提携内容は円筒形バッテリーに限ったものではないようだ。
新たにサプライヤーとして選ばれたSVOLTに関しては、少々驚きを持って受け止められた。SVOLTは2018年に中国の自動車メーカー長城汽車(Great Wall Motor)の駆動用バッテリー事業部から独立し、この数年で成長してきた有望株だ。主な顧客は長城汽車や零跑汽車(Leap Motor)などで、理想汽車(Li Auto)のSUV「L7」や吉利汽車(Geely Automobile)系のNEVブランド吉利銀河(Geely Galaxy)、同じく吉利系の高級車ブランド領克(Lynk&Co)など一部のプラグインハイブリッド車に同社のバッテリーが採用され、業界内で一躍有名になった。
SVOLTは第1段階としてセルの生産ライン2本、さらにモジュール、パックの生産ラインをBMW用に提供する予定だ。BMWに供給するセルは同社の主力製品であるショートブレードセル(薄型セル)で、 CTP (セルトゥーパック)方式で設計され、BMWの次世代プラットフォームで開発するBEV(純電気自動車)に搭載されるという。
BMWは2022年、直径46ミリの大型円筒形バッテリーを供給できるバッテリサプライヤー3社を相次いで選定し、110GWh相当の生産能力を確保。テスラ以降で唯一、大型円筒バッテリーに注力する自動車メーカーとなった。あるバッテリメーカーの関係者は「BMWの以前からの目標はセル生産の標準化だ」と述べる。
自動車メーカーは自社が採用したバッテリーが技術的に遅れたものになるのを避けるため、複数の技術を同時に採用してリスクを分散する。しかしBMWは今回、異例の高額案件の大部分をSVOLTに発注した。これは、同社が手がける製品が角型セル生産の標準化にとって最適解と判断したことを示すものだろう。
ショートブレードセルとスタッキング(積層)技術は、バッテリー生産効率の向上において大きな力を発揮する。
バッテリー製造には電極やセパレーターをワインディング(巻回)する工法と、スタッキングする工法の2種類がある。ワインディングはこれまで十数年にわたって使われてきた成熟した技術で、多くは円筒形や角型セルに用いられる。スタッキングは2018年頃から徐々に駆動用バッテリー製造に用いられるようになり、主に角型やパウチ型セルに用いられる。SVOLTは一般的なスタッキング工法よりもさらに難易度の高い超高速スタッキング技術を用いており、8つを同時に処理できるため、1層あたり0.125秒相当の生産効率を実現している。
36Krは過去に江蘇省塩城市にあるSVOLTの工場を取材し、主に容量62Ahのショートブレードバッテリー「L400」を生産するラインで超高速スタッキング工程を見学した。
ここでL400の比較対象として韓国LG Chemがテスラに提供している21700(直径21mm、長さ70mm)型セルを取り上げる。LGの21700型セルの容量は5Ahで、L400の約12分の1に相当する。つまり、LGの21700型セルの1分あたりのセル生産個数(PPM)を300と仮定すると、L400はPPM25が達成できれば生産効率でLGと肩を並べる計算になる。SVOLT塩城工場の生産能力は現在24PPMであるため、生産効率はすでに円筒形バッテリーに近づいていると言える。
バッテリーメーカーがBMWから受注するということは、相応の出荷数が保証されること以上に、BMWが求める厳しい製造規範を受け入れることを意味する。CATLは設立当初、BMWから提供された800ページ以上ものドイツ語の技術文書を2年かけて読み解き、規範に沿った効率的な生産体系を作り上げたことで名を揚げた。今回の受注案件を順調にこなせれば、最も恩恵を受けるのは中堅メーカーのSVOLTとEVE Energyになりうる。BMWのお墨付きをもらったという実績は、多くの顧客を獲得するための重要なセールスポイントとなるからだ。
(翻訳・山下にか)
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