中国EVの重量増に限界か 「2トン時代」の次は軽量化競争へ
中国で、電気自動車(EV)やハイブリッド車(PHEV)など新エネルギー車の車両重量をめぐる議論が活発化している。
中国工業情報化部のデータによると、中国の乗用車の平均車両重量は2012年の1312kgから24年には1704kgへと増加した。現在では新エネルギー車の多くが2トンの大台に達しており、主要メーカー各社の平均車両重量は理想汽車(Li Auto)が2561kg、極氪(Zeekr)が2550kg、蔚来(NIO)が2453kgとなっている。比亜迪(BYD)の高級車ブランド・仰望の「U8L」など12車種では3トンを超えた。
もっとも、車両重量の増加自体が問題なのではなく、むしろ新エネルギー車産業の発展に伴う帰結ともいえる。
重量の増加を招いている最大の要因はバッテリーだ。エネルギー密度の向上には物理的な限界があるため、700km以上の航続距離を実現するには、現状ではバッテリー容量を増やすのが最も現実的な手段だ。中国乗用車協会(CPCA)によると、中国の純電気自動車(BEV)のバッテリー容量は、2020年時点で平均43kWhほどだったが、26年1~4月期には平均63kWhとなり、この6年間で46.5%も増加した。
別の要因として、車両のスマート化が挙げられる。LiDARや高性能チップ、エアサスペンション、ゼログラビティシートといった装備が次々に追加され、これが車両重量を押し上げている。さらに、大型SUVやMPVがファミリー層を中心に人気を集めているほか、安全基準の厳格化により車体構造の強化も進んでおり、業界では大型化に伴う重量増加は避けられないとの見方が一般的だ。
しかし、その弊害も無視できない。車両が重くなるほどエネルギー消費が増え、さらに大容量のバッテリーが必要になる。バッテリーの大型化でさらに車両が重くなるという「重量増の悪循環」から抜け出せなくなってしまう。また、重量が増えれば安全性も高まるわけではない。衝突安全性を左右するのは構造設計であり、重量そのものではないからだ。
NIO創業者の李斌氏は、車両重量が20%増えると路面へのダメージは約2倍になるとの試算を踏まえ、車両重量に関する国レベルの指針が必要であり、自動車メーカーの自主的な取り組みだけでは限界があると訴える。業界の実測データでも、100kg増えるごとに、走行距離100km当たりのエネルギー消費量は約7.5%増加することが示されている。大容量バッテリーや装備を詰め込み、車両を重くしながら航続距離やスペックを向上させるという手法では、もはや効果は次第に薄れている。
政策面での調整も始まっている。2026年1月に施行された強制国家標準「電気自動車エネルギー消費量規制値」では、車両の重量区分ごとに100km当たりのエネルギー消費量の上限を設定、2710kgを超える車種では100km当たり19.1kWhを上限とし、それ以上重量が増えても基準値を緩和しない仕組みを導入した。際限のない重量増加に一定の歯止めをかける狙いがある。
業界の競争軸も変わりつつある。従来は航続距離や装備の充実度が競われてきたが、現在は「同じ航続距離ならより軽く、同じ重量ならより遠くまで走れる」ことが差別化要因になりつつある。そのため800V高電圧プラットフォームやSiC半導体、CTB(Cell to Body)、ギガキャスト、軽量素材など、重量を増やさず性能と効率を高める技術への投資が加速している。
中国のEV産業はこれまで、充実したサプライチェーンや速い開発サイクルを武器に急成長を遂げてきた。しかし、バッテリー容量や装備を増やすだけの戦い方は限界を迎えている。今後の勝敗を分けるのは、限られた電力と車両重量で、いかに高い性能や航続距離を実現できるかだ。軽量化は単なるコスト削減やスペックダウンではなく、EVの性能とエネルギー効率を左右する新たな技術競争となっている。
(文・36Kr Japan編集部、翻訳・畠中裕子)