新製品ラッシュの裏側、中国の雑貨チェーンがなぜ「儲からない」のか

中国のショッピングモールによくある雑貨店には、買いたくなるものが散りばめられている。

代表的なチェーンとして、泡泡瑪特(POP MART)、名創優品(MINISO)のほかKKV、九木雑物社、The Green Partyなどが挙げられる。店頭にはブラインドボックス、オルゴール、模型、ぬいぐるみ、アクセサリー、文具、インテリア小物といった多様な新商品が並ぶ。低価格を売りとするMINISOを除けば、いずれの店舗も商品の価格帯が高めである。特に円安が進むこのご時世は、なおさらのこと高く感じるが、それでも中国旅行や、駐在、留学などの在住経験者であれば、雑貨店でのクリエイティブで素敵なデザインの商品に惹かれ、物欲が高まることはあったはず。

コスパが売りのMINISO

ところがキラキラした雑貨店は華やかな見た目とは裏腹に、ビジネスモデルとしては成功していないようだ。その多くが薄利で赤字の泥沼状態となっていて、店舗をリストラする動きが加速している。商品の入れ替わりが激しく、たまにいくと魅力的な新商品が並んでいるように見えても、経営の実態は非常に厳しい。

大手雑貨チェーン「九木雑物社」は2025年に約15億3700元(約370億円)の売上を上げながら、約8451万元(約20億円)の最終赤字を計上し、累計損失は1億7900万元(約43億)に達した。この苦境は、九木雑物社に限ったことではなく、業界全体が生き残りをかけた過酷な戦いに直面している。

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なぜこれほど新商品が出て、それでも赤字なのか

これほど高頻度で魅力的な雑貨やコレクショントイが登場するのはなぜか。そして、それにも関わらず、なぜ雑貨チェーン各社は赤字になるのか。

中国でECの普及は理由のひとつにすぎない。たしかに、店頭で見つけた商品をその場で買わず、主力ECプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」やJDドットコムなどで1元(約24円)でも安く探して購入する消費者は少なくない。ふらりと実店舗に立ち寄っては手に取って眺めるものの、そのまま何も買わずに立ち去るウィンドウショッピングの客ばかりである光景は、中国の雑貨店ではおなじみのものだ。

かつては消費者が衝動買いすればいいが、最近では高くてもエモければ買うという買い方から、冷静にコストパフォーマンスを重視する買い方に変化しているのが販売側やメーカーにとっては悩ましい。雑貨店側もそうした利用客の動きは織り込み済みの上で、頻繁に魅力的な新商品を販売している。つまり、ECへの流出や消費の冷え込みだけが決定的な赤字の理由ではない。

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低単価・高回転が生む構造的な脆さ

最大の理由は、雑貨業界全体の構造自体に問題がある。

中国の雑貨店は、無印良品のような高単価で大型商品を扱う路線とは異なり、文房具・アクセサリー、ブラインドボックスなどの小物や消耗品が中心である。商品の単価が低い分、利益を確保するには在庫回転率を極限まで高めることが不可欠だ。そのために常に新製品を投入し、消費者の「また来たい」という心理を刺激し続けなければならない。

この仕組みを支えているのが、中国の製造業の強みを活かしたODM(相手先ブランドによる設計製造)やOEM(相手先ブランドによる製造)の駆使だ。多くのブランドは自社工場を持たず、外部の製造パートナーと連携することで、トレンドの変化に即応した短納期で小ロットからの生産を実現している。さらに、雑貨店の店舗のPOSデータや会員情報を分析し、たとえば「どのIP(知的財産)がどの層に響くか」などといったことを細かく把握。そのフィードバックをメーカーに戻して次の商品開発に反映させる。こうした中国のものづくりの強さを十分に活用したデータ駆動型の連携が新製品の高速リリースを可能にしている。

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この好循環に見える仕組みの裏には、厳しいリスクも潜んでいる。新製品を出し続けなければ市場から忘れられ、販売チャネルから外されるという焦りから、メーカーは開発を急がざるを得ない。その結果生じる売れ残り在庫のリスクは、卸業者や小売店に押し付けられることが少なくない。実際、九木雑物社は、ターゲット層のミスマッチや競争力の低下により、8000万元以上の最終赤字を計上し、有料会員制度の廃止に追い込まれた。また、卸業者がメーカーのヒット予測を信じて大量発注した結果、在庫を抱え込み大きな損失を被るケースも後を絶たない。

LABUBUが人気のPOP MART

データに裏打ちされたとはいえ、消費者の嗜好はすぐに変わるもので、実際に蓋を開けてみなければ売れるか誰にもわからない。ハローキティなどのような不動の定番IPを除けば、中国産IPの多くは一過性のブームで終わることが多く、POP MARTのLABUBUシリーズですらその勢いに陰りが見える。メーカーはヒットを確信して金型代やライセンス料を投じるが、市場の反応が鈍ければ、あっという間に大量の在庫が倉庫を埋め尽くす。

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しかも厄介なのは、この在庫リスクの多くが、最終的に卸業者や実店舗の運営会社に転嫁される構造になっている点だ。メーカーは自らの帳簿上の売上を確保するために、小売店に対して「この新シリーズは絶対に売れる」と強くプッシュし、ある程度の強制買い取りを伴う発注を要請する。だが、現実に客足が伸び悩めば、小売店の棚は売れ残った新製品で埋まり、やがて値下げセールやアウトレット処分を余儀なくされる。

さらに悩ましいことに、大規模モールでは、MINISOやPOP MARTだけでなく、KKV、九木雑物社、The Green Partyなどの雑貨チェーンが同じフロアにひしめき合っていることが珍しくない。

KKV

MINISOはサプライチェーンが強く、POP MARTは自社IPが強いのでオリジナリティが出せるからいいものの、他の雑貨チェーンは同じような商品構成や陳列スタイルを採用していていて、要はどれも一緒に見えるのだ。KKVや九木雑物社のようなブランドは、特定雑貨チェーン限定IPコラボ製品を出しているが、LABUBUほどの爆発的なヒット作には恵まれず、限定品を出しても消費者に深く響かない。そのため、どうしても「薄利多売」「在庫回転頼み」でやりくりするしかない。

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中国の雑貨店で新製品が溢れているのは、決して「メーカーが儲かっているから」ではない。むしろ「激しい競争とチャネルの変化の中で、生き残りをかけて新製品を回し続けている(あるいは回さないと倒産する)」という過酷極まる中国のモノづくり生存競争の縮図によるものなのだ。

(文:山谷剛史)

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