日本メディアとして初の試乗!中国EV業界に衝撃が走った、シャオミ「SU7」リアルな乗り心地とサプライヤー大公開

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中国の自動車業界でいま大きな話題を呼んでいる、スマートフォン大手シャオミ(小米)初の電気自動車(EV)「SU7」に、日本メディアとして初めて試乗した。

SU7が3月28日に発売されてから、わずか4分間で受注台数が1万台に達し、27分後には5万台を超えた。その後も受注台数が右肩上がりに増加しており、4月30日時点の受注台数は8万を突破したという。シャオミの発表によると、6月からは工場を2交代制で稼働させ、生産能力を高める。24年の年間生産台数10万台を確保した上で、年間納車台数12万台を目指す。

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間もなく「北京小米」から「小米」にメーカーエンブレムも変更 

ここ数年、ファーウェイやバイドゥといった多くの中華IT企業が自動車業界への関わりを強めているが、2021年に自動車業界への参入を発表したシャオミはそれらよりも高水準で自動車の設計をおこなっている。2024年春に発売された「SU7」は、内外装のデザインからパワートレイン、シャシー、そして生産ラインまでを一貫して自社で設計したと主張する。ファーウェイも自社で車を販売しているが、車体の設計や製造は「セレス(賽力斯)」や「チェリー(奇瑞汽車)」、「北京汽車」といった完成車メーカーに一任しているため、シャオミほど関与度は高くない。

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SU7の製造は国営メーカー「北京汽車」のオフロード車部門「北汽越野」が担当していると届け出られているが、厳密には北京汽車が製造しているわけではなく、あくまで完成車の製造免許の兼ね合いで北京汽車と提携を結んでいる形になる。より規模を拡大すれば自社単独生産に切り替えられるし、事実、メーカーが「シャオミ」単独に間もなく切り替わることが中国政府(工信部)への届出情報で判明している。車体後部のメーカーエンブレムも「北京小米」から「小米」へと変更される予定だ。

7月中旬に中華人民共和国工業情報化部(通称:工信部)の公式サイトで公表された新情報では「北京小米」から「小米」になっている

ボディサイズは全長4997 mm x 全幅1963 mm x 全高1455 mm、ホイールベースが3000 mmとなる。ボディの形状はファストバック風スタイリングを取り入れた4ドアとなる。ベースグレード、「Pro」、そして「Max」の3グレードがあり、この名付け方もスマートフォン的でシャオミらしい。駆動モーターにはシャオミが自社設計した「HyperEngine」を搭載。

肝心のバッテリーに関して、「Max」は「寧徳時代(CATL)」が開発した最新の三元系リチウムイオン電池「麒麟」を採用、容量は101 kWhとなる。それ以外のグレードではBYDのグループ企業「フィンドリームズ(弗迪)」のリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載する。Maxは一充電で800km走行(CLTCモード)、0-100km/h加速は2.78秒という驚異的なスペックを誇る。

最上級グレードに北京で試乗:想像を超えたが、不十分に感じるポイントも

今回試乗したのは最上級グレードの「Max」だ。正直言って今まで車を作ったことのないシャオミが手がけたものなど、そのクオリティは容易に想像できると思い込んでいたが、その先入観は運転席に座り、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に覆された。

「あっ、意外と良い?」という率直な感想だ。昨今の中国新興メーカーが手がけるEVはどれも乗り心地が悪く、中には運転しながら酔うほどの車もある。SU7はボディ剛性もしっかりしており、尚且つ「Max」限定のエアサスペンションのおかげで非常に安定しているのだ。中国ではまだまだ多い未舗装路だけでなく高速道路でも快適な乗り心地でとても驚かされた。サスペンションの硬さや最低地上高も調整可能で、日常使いからスポーティなドライビングまで、その走りを幅広く支えてくれる。一方でエアサスなしの下位グレードは試乗していないのでどれほどの差があるのかは不明だ。

運転中の視界に常に入り込むコックピット周りのデザインも、良い具合にスポーティさを演出している。ハンドル奥の7.1インチディスプレイは電源を入れることで回転し、メーターディスプレイとして車両の状態を表示する。センターには16.1インチディスプレイを搭載するが、そのUIはシャオミのスマートフォンそっくりで、操作性もストレスなくサクサク動く。同時に、エアコンやメディア操作用の物理ボタンもオプションで装着可能で乗る人のことを考えた優秀な設計だと感じた。

スポーティな乗り味に関しては、先述の通りサスペンションがしっかりしており、タイトなコーナーでも路面に吸い付くように走る。また、シートはメルセデス「AMG」が採用する「ドライビングダイナミックシート」のようにバックレストのサイドが膨張し、コーナリング時におけるドライバーの姿勢変化をサポートしてくれる点は驚かされた。

一方でマイナスに感じるポイントもあり、そのひとつがブレーキ性能だ。時速120kmから強めにブレーキを踏むと、想定していたよりも効きが弱くて少々怖い思いをした。フロントのキャリパー(パッドを挟み込んで車輪の動きを止める部品)は高性能で有名なブレンボ製対向4-potを搭載しているとのことだが0-100km/h加速 2.78秒の電気自動車では不十分だ。ベンチマークとしているポルシェ「タイカン」はフロント10-pot、リア4-potという充実の性能を持ち合わせている。また、ブレーキローター(車輪とともに回転する部品)の外径やブレーキパッド(実際にローターに当たる部品)の面積も小さくて不十分だ。ブレーキの改良に関しては強く期待したい。

シャオミSU7のサプライヤー、大方が明らかに

自動車産業ポータル「マークラインズ」の調査によると、SU7のバッテリーや駆動モーター、車載充電器、高電圧ケーブルなどの電動パワートレイン、そして先進運転支援技術まわりの部品サプライヤーはほとんどが中国企業となる。一方で車の本質的部分であるステアリングやブレーキ、サスペンションは欧州企業の採用が目立つ。

ハブベアリングは独・シェフラー製を使用しており、ベアリング製造に要される技術の高さを感じさせる。インフォテインメント機能やADASを支えるチップセットはどちらもアメリカ企業だ。余談だが、SU7に試乗した際に前後バンパーが外装部品にしては柔らかくて不安だと感じたが、この資料を見ると担当したのは北京汽車のグループ会社とのことで、その低品質さに納得が行った。

SU7のメーカー希望小売価格は21.59万元〜29.99万元(約460〜約640万円)と、非常にお手頃だ。それゆえに中国国内での人気は凄まじく、部品サプライヤーには月産1万台の供給体制に適応するよう要請しただけでなく、シャオミ自身の生産能力も拡張が完了、2024年11月までに生産台数累計10万台を達成するとしている。2024年3月の発売以来、7月末までの生産台数は4万台に達すると予想され、今後も若い購買層を中心に販売台数を伸ばしていくことだろう。

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(文:中国車研究家 加藤ヒロト)

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