「安売り競争」に限界 中国EV、ついに値上げへ転換
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中国の電気自動車(EV)市場は最近、重要な転換の兆しを見せている。ここ数年続いていた「価格競争」が、コスト増と利益減少という二重の圧迫により沈静化し、主要メーカー各社は販売価格の引き上げや割引キャンペーンの縮小に乗り出している。
中国EV大手の比亜迪(BYD) は5月1日より、主力ブランドの「王朝(Dynasty)」シリーズと「海洋(Ocean)」シリーズ、高級オフロードブランド「方程豹(Fangchengbao)」シリーズの一部モデルに搭載される先進運転支援システム(ADAS)の「天神之眼B(God’s Eye)」(DiPilot 300)のオプション価格を、従来の9900元(約23万円)から1万2000元(約28万円)に引き上げた。同時に、店頭販売での割引幅が大幅に縮小しており、一部の新車では充電スタンドの無償提供も廃止された。
また、通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が自動車メーカー5社と共同運営するEVブランド連合「鴻蒙智行(HIMA)」でも、江淮汽車(JAC)と手がける次世代モデル「尊界(MAEXTRO)S800」や賽力斯(SERES)との「問界(AITO)M9」において、高スペックの896ラインLiDARが搭載されたため、旧モデルより1万~2万元(約23万~46万円)値上げされた。
この値上げの背景には、深刻なサプライチェーンの圧力が存在する。炭酸リチウムのスポット価格はすでに1トン当たり17万元(約390万円)を超え、2025年の平均価格から約125%上昇したことで、1台当たりの電池コストは数千元(数万円)増加している。さらに、AI大規模モデル業界との生産能力争奪により、車載用DRAMおよびNAND型メモリチップの価格が3桁の上昇に直面している。
EV大手・蔚来汽車(NIO)の李斌(William Li)CEOは、メモリチップだけで高級車の1台あたりのコストが3000~5000元(約7万~12万円)増加していると明らかにした。これに加え、銅やアルミニウム、プラスチック製品の価格の高止まりが、完成車メーカーの利益率をさらに圧迫している。
2025年の自動車業界の利益率は4.1%まで低下し、過去10年で最低の水準を記録した。2026年1~3月期の売上高利益率はさらに3.2%まで下落し、中国の工業企業平均を大きく下回った。BYDや長安汽車(Changan Automobile)などの大手企業でさえ純利益が大幅に減少している。自動車メーカーは「1台売るごとに赤字を出す」という苦境に直面し、利益を犠牲にして販売台数を追う戦略から、より慎重な価格設定へ転換せざるを得なくなっている。
業界内では、中国市場での単なる値下げによるシェア獲得の時代は終焉を迎え、今後の自動車市場の競争は、技術的価値とサプライチェーンの強靭さを巡る本格的な競争へと全面的に移行するとの見方が強まっている。
*1元=約23円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)