人工ダイヤ、中国・柘城県が最大級の生産拠点に 世界シェア63%の背景
中国河南省東部の柘城(しゃじょう)県が、人工ダイヤモンドの世界有数の生産拠点となっている。中国の人工ダイヤ原石の生産能力は世界の約63%を占め、河南省は中国全体の8割以上を占める。柘城県はその中心的な産地の一つで、宝飾向けから工業用まで幅広いダイヤモンド製品を生産している。
柘城県の年間生産量は現在、工業用を含む単結晶ダイヤが60億カラット、粉末状ダイヤが150億カラット、宝飾向け人工ダイヤが1200万カラットに上る。価格競争力と安定した品質を背景に、柘城産の人工ダイヤは東アジアをはじめ世界各地の宝飾市場に広がっている。
「ラボグロウンダイヤ」とも呼ばれる人工ダイヤは模造品ではなく、化学成分や物理的性質は天然ダイヤと同じで、違いは生成過程にある。河南省力量鉆石は2025年9月、156.47カラットの人工単結晶原石を発表。国際宝石学会(IGI)の認証を受け、世界最大の単結晶人工ダイヤの記録を更新した。
地元企業は、原石供給にとどまらず、海外市場の開拓やブランド化を進めている。力量鉆石は米国を主要市場とし、国際的なダイヤモンドブランドとも提携する。過去3年間の人工ダイヤ累計輸出額は10億元(約240億円)を超え、ブランド企業の協力パートナーへと転換を進めている。
惠豊鉆石は、2~10カラットのホワイトダイヤや、ピンク、ブルー、イエローなどのカラーダイヤを安定的に生産できる体制を整えている。海南自由貿易港の制度を活用し、欧米の宝飾ブランドや中東の小売業者、東南アジアの越境ECプラットフォームから直接注文を受けている。国内に5店舗を展開し、オンライン販売も進めており、今後は海外でのブランド発信も強化するという。
柘城のダイヤモンド産業は、観光にも広がっている。工場や直営店を訪れる産業観光が増え、柘城県文化観光局によると、年間の来訪者はすでに数十万人に達している。ダイヤモンド産出国ボツワナから訪れた観光客からも、工場の技術や製品の豊富さに驚きの声が上がったという。
消費者の関心も高まっている。天然ダイヤと同じ成分・性質を持ちながら、価格を抑えられることから、若い世代の間でも人工ダイヤを選ぶ動きが出ている。柘城県内の直営店を訪れた2000年代生まれの女性は「柘城の人工ダイヤは天然ダイヤと品質が変わらないと聞き、見に来た」と話した。
商品開発でも新たな動きが出ている。中国の伝統工芸「景泰藍(けいたいらん=七宝焼)」と組み合わせたアクセサリーや、ペットの毛、赤ちゃんの産毛などに含まれる炭素を原料の一部として使う記念ダイヤのサービスを手掛ける企業もある。人工ダイヤは、自分らしさや思い出を形にする商品としても、若い消費者の注目を集めている。【新華社鄭州】