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東南アジアに向けて多くの大手投資機関が多額の投資を行い、東南アジアは米IPOを目指す。東南アジア最大のスーパーアプリを運営する「Grab(グラブ)」も2021年中の上場を目指している。
Grabはライドシェアサービスとして起業した。2014年4月、シリーズAで1000万ドル(約10億円)調達してから現在までに100億ドル(約1兆円)以上を調達、評価額は160億ドル(約1兆6000億円)を超えている。中でも重要な役割を果たしているのがソフトバンクだ。
東南アジアのスーパーアプリ
1つのアプリでモビリティからファイナンス、フードデリバリーまで何でも利用できたら便利だ。ユーザーにはもちろん、企業や投資家にも魅力的だろう。 「スーパーアプリ」と言えば、テンセントの「WeChat」やアリババ傘下の決済サービス「アリペイ(支付宝)」、生活関連サービス「美団(Meituan)」など中国企業の専売特許だったが、これを実現する東南アジアの企業が登場した。
Grabは2018年3月にライドシェア大手Uberの東南アジア事業を合併した後、東南アジアのライドシェアサービスで絶対的な支配権を握った。IT市場調査会社「ABI Research」の調べでは、2019年上半期、ライドシェアにおけるGrabのシェアはインドネシアで63%、シンガポールで92%、ベトナムで72%、タイで90%だ。ライバル「Gojek」のシェアはそれぞれ35%、4%、10%、4.5%未満で、Grabには大差をつけられている。
Grabはデジタル決済にも注力している。 2019年、シンガポールでデジタル銀行免許を取得すると同時に、同社が株式を保有するインドネシアの決済プラットフォーム「OVO」を通じ、Gojekのモバイル決済サービス「GoPay」に対抗し始めた。
Grabはさらに2020年10月、インドネシアの国営企業が支援するeウォレット「LinkAja」がシリーズBで1億ドル(約100億円)を調達した際に、リードインベスターを務める。 2019年にインドネシアが発表したブランド別のeウォレット取引額に関する調査によると、OVOのシェアは37%で、GoPayの17%をはるかに上回っている。
Grabが東南アジアのライドシェア、フードデリバリー、モバイル決済で優勢を占めたことと、投資家たちが東南アジア市場を重視するようになったことの間には密接な関係がある。ソフトバンクは2014年12月の2億5000万ドル(約260億円)を手始めに、Grabへ4回出資した。2018年にGrabがUberを買収した際にソフトバンクが果たした役割は大きく、これをもってGrabとUberの消耗戦は終了した。
高評価でも上場の道のりは険しい
インターネット大手企業が拡大するにつれ評価額は上がっていくが、リスクも付きものだ。Grabにとって、米国での上場は新たな戦果だが、これに伴ういくつかの障害が今後の時価総額に影響する恐れがある。
1)大規模な拡張はコストが高く、短期での収益化が難しい
Gojekや海外企業と張り合う中で、多額の資金投入は必須だ。
Grabの共同創業者兼CEOのアンソニー・タン(陳炳耀)氏は昨年6月、コロナウイルス感染症の流行が続く中、社員に向け「従業員総数の5%に当たる360人をレイオフし、フードデリバリー、ライドシェア、モバイル決済に事業を集約する」と通達している。
2)Gojekとの激烈なシェア争奪戦
Grabがマイクロソフト、トヨタ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、タイのカシコン銀行や複合企業セントラル・グループ(Central Group)などを己の陣営に引き込んだ頃、Gojekはグーグル、フェイスブック、PayPal、Visa、三菱グループ、京東(JD.com)から支持を得た。
3)規制リスクに起因する不確実性
東南アジア市場は発展途上にあり、市場競争が激化するにつれ法規制が進み、Grabの成長が政策の制約を受けることも多くなるだろう。
例えば、2018年にUberの東南アジア事業を統合して以降、シンガポール政府から警戒されるようになっている。シンガポール競争・消費者委員会(CCCS)が、GrabとUberに罰金刑を科したことは記憶に新しい。両社が合併によりシェアを独占し、東南アジアのライドシェア市場における競争が大幅に鈍ったことに対する警告で、両社の統合を撤回させる可能性もある。
Grabが直面している市場競争、収益性や政策の問題は成長の妨げになり得るとはいえ、投資家は全力で支援を続ける。Grab自身の、というより東南アジアの巨大な潜在力が理由であれば、東南アジアのユーザー規模と安い労働力は投資家を引きつけ、今後も資金を呼び込み、スーパーユニコーンを育む沃野となるかもしれない。
(翻訳:永野倫子)
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