香港上場を控える京東物流 目論見書からみる最大の強みは「サプライチェーンのスマート化」

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中国EC大手「京東集団(JD.com)」、同傘下のヘルスケア企業「京東健康 (JD Health)」の上場に続き、同物流会社「京東物流(JD Logistics)」も上場を予定している。

先月京東物流が香港証券取引所に目論見書を提出し、事業構成や売上高が初めて全面的に明らかになった。

この536ページにわたる目論見書の中で最も重要なキーワードは「サプライチェーン」で、572回も登場する。そのうち「サプライチェーンの一体化」は126回、「サプライチェーンのソリューション」は117回だ。

京東物流のベースはサプライチェーンではあるが、本気で目指すのは「物流テック+サプライチェーン」の一体化ソリューションのプロバイダーだ。

スピードから品質へ

京東物流は2007年から事業を開始。当時物流業界のインフラは脆弱で、京東集団CEOの劉強東氏はそこに新たな商機を見出した。また、創生期のB2Cは物流会社にアウトソーシングすることが多く、サービスや資金の安全が保証されにくかった。

このため、劉氏は自社の物流サービスとして京東物流の立ち上げを推進したが、大きな議論を呼んだ。自前の物流体制の構築には巨大な資金投入が必要だったからだ。当時まだ若く、収益力のない京東に巨額の投資ができるのか、このモデルでやっていけるのか、すべてが未知数だった。

京東物流の最初の倉庫を北京に置いたのは正しかったと事実が証明している。京東物流の体系には倉庫、輸送、配送、重量物輸送、コールドチェーンおよび越境輸送を含む高度に連携する六大ネットワークがある。六大ネットワークが相互に補完し合うことで、スピーディーな配送を実現している。

画像:京東物流の目論見書

2012年、京東集団のSKU数が急激に増加。自前の物流体系により、京東物流は集団の棚卸資産回転日数を安定して40日以下に抑えた。目論見書によると、2020年、京東集団が京東物流のネットワークを通して処理したオンライン販売の注文のうち、約90%は発注当日あるいは翌日に配達した。

2017年4月、京東物流は独立運営を発表し、外部の顧客にもソリューションとサービスの提供を始めた。これは、京東物流が物流のソリューションおよびサービス会社に向けて実際に歩み始めたことを示している。

目論見書によると、京東物流が単独運営を開始後、外部顧客からの売り上げが占める割合は2018年の29.9%、2019年の38.4%から2020年1~9月には43.4%に上昇した。

データ:京東物流の目論見書

2018年12月31日~2020年9月30日、京東物流の一体化サプライチェーンの顧客数は32465社から42%増加して46083社になった。

2019年、京東物流は全国の都市の物流効率、都市内部および都市間の流通スピードを上げ、物流を地域間の調和のとれた発展を推し進める重要な力にした。さらに、「どこでも24時間配送」計画を打ち出した。

京東物流はスピードと質の両立、そして内から外への飛躍を実現したと言える。

最大の強み:サプライチェーンのスマート化

中国国家郵政局が発表した『2019年第2四半期宅配サービス満足度調査および配達時間についてのテスト結果の通告』によると、消費者の満足度が80点以上の宅配企業は京東物流と順豊速運(S.F.エクスプレス)の2社のみだった。

ただ、京東物流は伝統的な物流企業でも宅配企業でもない。その目論見書には、将来のビジョンは「世界で最も信頼できるサプライチェーンのインフラサービス会社になること」とある。「中国をリードする技術駆動型のサプライチェーンソリューションおよび物流サービスの企業」という位置付けだ。

早期に布石を進め、14年間の積み上げのある京東物流は業界内で高い優位性を保っている。

京東物流のもう一つの大きな特徴は、サプライチェーンのスマート化だ。

5G、AI 、ビッグデータ、クラウドコンピューティングおよびIoTなどの技術を基に自動化、デジタル化、スマート化の能力を高め、自動運搬ロボット、仕分けロボット、スマート配達車などを活用して倉庫、輸送、仕分け、配送の効率を大幅に引き上げた。それだけではなく、倉庫保管、輸送、受注管理システムなどを自主開発して顧客のサプライチェーンの全面的なデジタル化を進めている。また、販売予測、商品の配送計画およびサプライチェーンネットワークの最適化では、「スマートブレイン」による意思決定が行われている。

2020年9月30日時点において同社は28ヵ所のスマート物流倉庫「アジア1号(亜洲一号)」を運営し、中には世界初の全工程無人倉庫や業界初の5Gを取り入れたスマート物流パークもある。

京東物流は技術を成長戦略の柱の一つと捉え、投資を増大させてきた。目論見書によると、2018年~2020年第3四半期の11四半期で累計46億元(約768億円)を投じ、右肩上がりで増加している。この11四半期において、技術への投資は総売上高の平均3.4%を占め、業界トップだ。

2020年末までに、京東物流が保有あるいは申請中の技術特許とコンピュータソフトウェアの著作権は4400件以上になり、そのうち自動化と無人技術関連で2500件を超えた。

画像:京東物流の目論見書

同社は、全サプライチェーンの技術導入と並行して中国および世界の各業界パートナーと共にオープン型のサプライチェーンソリューションのプラットフォームを構築。複合一貫輸送、ラストワンマイル配送、倉庫保管、越境輸送およびコールドチェーンサービスにおいて能力の相互補完を進め、顧客の需要に対応している。

京東物流は高度な一体化を実現し、ソリューションはインターネットやその他の従来型の業界界にも応用できる。これらすべてが京東物流の価値を一層高めている。

作者:節点財経(Wechat ID:jiedian2018)

(翻訳・二胡).

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